時影、近代魔術を語る番外 18
『とび蛙』は、ポーの短編小説です。
お恥ずかしい話ですが、我々はこの話を…知らないか、忘れてしまっていました。
怪奇小説好きの作者は、勿論、ポーの小説集を読んではいます、が、探偵小説の先駆けと言われる『モルグ街の殺人事件』やら、『黒猫』などの名作の前にあやふやな記憶に沈んで行きました。
忍び寄る宵闇から、アコーディオンの音と共にメフィストが現れました。
黒襟の深紅のタキシードに胸を白バラを差し、優雅に我々にお辞儀をしました。
「皆さん、こんばんは。今宵、わたくしが話しまするは、亜米利加の怪奇小説家の珠玉の一作。
麗しき少女トリペッタと醜い道化のとび蛙。
意地悪で残虐な王の元に連れてこられた、哀れな2人の物語。」
メフィストは、派手に両手を広げ、それを合図に窓辺に飾られたアザレアの花たちが演奏を始めました。
『美しき天然』
この題名では、ピンと来ないかもしれませんが、聴くと、ああ!と、懐かしく感じる方がたくさんいると思います。
この曲は、昭和のサーカスやチンドン屋が良くBGMとして使った曲だからです。
もとは、1902年、田中穂積さんが作曲した唱歌でした。
明るくも、どことなく物悲しい音色と共に、エドガー・アラン・ポーの『とび蛙』の物語が壁の影絵で始まりました。