時影、近代魔術を語る番外 17
乱歩作『一寸法師』は、1926年の新聞連載小説です。
我々の『桜花爛漫』では、取り上げる予定はありませんでした。
「そうよね…もう、ネット大賞もあったし、混乱したんだわ。
で、綱渡りみたいに話を作ってたもの。
本来は…止まってる連載のキャラを使いたかったのよ。
キュウリの話は、スミレを動かすために作ったけど……メガバース設定に会わない事にギリギリで気がついたの(T-T)」
「そうでしたね。」
私は、軽く相槌を打ちながら、レモンティーをくちにする。
「うん。で、仕方ないから、乱歩作品から、名前をもらうことにしたわ。」
「それは、間違いではありませんよ。とにかく、キャラクターは増えませんから。」
私は、レモンティーの甘い渋みのような思い出に苦笑する。
深夜に絶叫しながら、なんとかまとめる所は、小学時代の夏休みから進化してないのです。
「うん。オープニングで、昔の探偵をアバターにするって設定したから、乱歩キャラにしておけば、後から変えることも可能だもん。
でも…適当に選んだ『一寸法師』が、まさか、あんな話だったなんて、ビックリしたわよ。
しかも、ポーの作品をインスパイヤーしたなんて!
なかなか、興味深かったわ。」
作者は、嬉しそうに目を細める。
こんなときの、少し控えめな作者の笑顔が、私は一番好きです。
「そうですね、新しいジャンル『エログロ大衆ミステリー』の先駆者ですからね。」
「うん。私、このネット小説の世界にも、乱歩の世界をみる事があるわ。
毎日連載とか、読者を意識しながら、一話一話の連載の反応で、物語を動かす…オンラインな感じとか。
実際、乱歩の新聞連載の作品は、プロットとか、ぶっ飛んでる時あるもん。
アドバルーンで逃げてみたり、船から銃撃戦が始まったり…。
でも、勢いで読ませちゃうのよ。
なんか、だまくらかされた感じなんだけど、笑って許せるような…。」
作者は、苦笑する。
「そうですね。」
と、相づちは打ちましたが、作者は、しつこく考えてしまうタイプで、テレビ版の人間花火には、随分悩まされていましたが。
「凄いと思ったわ。もう、大変な時なのに、『一寸法師』読みながら感心したわよ。
確かに、文体は古くて読みづらいけど、なろう作家をしながら読むと、連載のストックはどれくらいだろう?とか、読者の声とか、影響してないか?とか、
ポーの作品のパクりと呼ばれるのか、否かとか、ね。
で、ポーの作品まで読むことになったわ…」
「『とび蛙』ですね。」
乱歩好きなレビュアーが、読み比べを勧めていました。
あなたはどちらの作品が好きか…と。