時影、近代魔術を語る番外 11
「ほら、私とシンデレラ・コンプレックスに陥りたくなってきたでしょ?」
メフィストは、ワンコーラスが終わるタイミングで私の作者の腕を引いて自分の胸の中に抱き締めました。
全く……
私は、一気にメフィストをネズミに変えて、作者を救出しました。
「大丈夫ですか?」
私の問いに、作者は、複雑な顔で頷きながら私から離れる。
「うん。アイツにはいつも驚かされるけど…確かに、郷ひろみさんの曲は、素敵だったわ…。
あの頃、なんだか、それが悪いことみたいに感じたけど…時代や状況が変われば、また、見方も印象も変わるわよね。」
作者は、ボンヤリとそう呟いた。
「そうですよ。多様性の時代、皆でチャーミング王子を狙う必要はありません。」
メフィストが、ドロンと煙と共に出現し、作者に耳打ちします。
しかも、作者を盾に巧みに私を威嚇しながら、あの貴女に耳打ちするのです。
「貴女には、私、メフィストとアスモデウス殿下が憑いています。
いっそ…炎上を狙ってみてはどうです?」
メフィストが作者を誘惑します。
「炎上商法……(-_-;)無理じゃないかな?私レベルでは、火力が足りない。」 作者は、自虐ぎみに苦笑する。
「わかりませんよ?何しろ、最近、ネットでノストラダムスが人気のようですから。」
メフィストに言われて作者が渋い顔をする。
「やめよう…もう…あれ、洒落にならないんだよぅ。
まあ、1月にファティマの予言について調べていた頃から、なんか、ヤバめだったけど……現、ロシア大統領の頭角を現す月がね……もう、泣けちゃうわ。」
作者は、深いため息をつく。
「ふふ。だから良いのではありませんか!私と契約を交わしましょう。
そうすれば、地獄の業火も怖くなくなります。」
メフィストは……私の作者を後ろから抱き締めるように耳元で囁きます。
リアルな作者とイケメン、メフィストでは、絡んでいても滑稽なだけですが、作者が少し、嬉しそうに頬を赤く染めるのはいただけません!
我慢の限界です。
私は、今まで造り上げた世界を解除し、船室に戻しました。
勿論、メフィストも時の彼方に置いて来ました。
全く、油断できません。
静かな船室で呆けている作者に私は、こえをかけました。
「アールグレイはいかがですか?」と。