番外ダ・ヴィンチの偽コード 10
シナモン。独特のかおりを持つ香辛料。
体を暖める効果があります。
少し、多目の砂糖入りのミルクティーは、混乱する作者の気持ちを慰めてくれるに違いありません。
「良い香りね。」と、作者は一口、ミルクティーを含んで話を続けた。
「シナモンやニッキは、子供の頃は、あまり、好きでなかったわ。でも、なんでかな?最近は、シナモンティーが飲みたくなるの。」
作者は、嬉しそうにカップを両手で包んだ。
「今は…風邪もひけませんから、無意識に体が欲するのかもしれませんね。
シナモンの仲間は、中国では漢方薬に使われていますし。」
私は、作者の隣でミルクティーを飲む。
「シナモン…これも、芥子と一緒で、原産は地中海辺りらしいわ。」
作者は、再び、『アマポーラ』を再生する。
「古代エジプトでは、ミイラ作りに使われたみたいですね。」
「うん、随分、古くから使われていた薬草らしいわ。ギリシアに伝わると、アポロン神に捧げていた地域もあるらしいわ。
もし、それが本当なら、ノストラダムスも飲んだかもしれないわね。」
作者は、楽しそうに私を見る。
私は、肩をすくめて、ウインナーコーヒーを作る。
仕上がりにシナモンステックをさして。
「これも…ギリ、アウトですが、ノストラダムスなら、紅茶より、コーヒーかもしれませんよ。時代的に。」
そう、ヨーロッパにコーヒーが広がるのは、ウイーンにトルコ軍が攻めてきてからです。
「何でもいいわ。そこまで言うと、ワインが本命な気がするもの。」
「アルコールはダメですよ。」
私は、作者に釘をさした。
酔っぱらっている場合ではありません。
「いらないわよ〜。私が、欲しいのは、アルコールじゃなくて、小説の先行きよ(>_<。)
もうっ、何だろうね…『パラサイト』、あれ、登場人物が増える度に、新しい説を持ってくるんだよ(T-T)
もうさ、西条八十の初めの話でまとまって欲しいわよ(T-T)」
作者は、ウインナーコーヒーを手にすると、やけコーヒーをするように、一気に飲みはじめる。
そう、私たちの連載中の『パラサイト』
この物語は、初めはパンデミックの予感が漂う、一万字の物語の予定だった。
が、本当のパンデミックに遭遇し、西条八十の都市伝説をふざけて使ってるようになるのが嫌で改編。
八十の新しい解釈を手に、改編するも、ネット大賞二次選考落選となりました。
そこから、2ヶ月、ある程度、まとめて、10回の大賞にエントリーしたと言うのに、ここに来て、また、この作者は、新しい説を持ち込んでくるのです。
「だったら、惑わされずに、初心貫徹したらよろしいでしょうに…変な欲を出すから、面倒に巻き込まれるのですよ?」
私は呆れる。
「うるさいわね(>_<。)
仕方ないでしょ?雅苗の話は……彼女の話で繋げて行くと、止まっている『通り魔』の先ができてくるんだもん(T-T)
『通り魔』が決まると、『祓魔師』の世界も決まってくるんだもん。
大体………。」
と、作者は一度、絶句して、天井を仰ぎ見る。
「大体…こちらの話もかかってきていたんだわ。
少し前、『インディージョーンズ』と聖杯の話なんてしていたからよ。
この物語の背景には、ナチスの聖杯探索のエピソードがモデルとして使われているわ。
オットー・ラーン
後に、ナチスの聖杯探索の為に、プロバンスを調査する彼は、1920年前後、一体、どうしていたのかしらね?
多分、学生だった彼もまた、カタリ派の謎について、吉江達と、何かを、見聞きした…可能性もあるかもしれない……。
なんて、考えちゃったら、もうさ、色々と話がくっついてくるんだもん(T-T)」
作者は、私に苦笑いを向ける。
私は、肩をすくめて、それに答えた。




