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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
307/499

時影、近代魔術を語る 183 時代の新秩序

作者が風の精霊を読んで、木漏れ日のハープを演奏させました。

ベートーベンの『月光』です。


「この曲…やっぱり、ハープが一番好きだわ。」

作者は目を閉じてそういいました。

「乙女ですね。でも、やはり私は、ピアノがそそりますね。

三十路のベートーベンが、14歳の少女を思って夜な夜な悶絶しながら作曲したと思うと、

おっさんが、必死に幼女に媚びようと頑張るトコロを想像して、ゾクゾクします。」

メフィストが、恍惚(こうこつ)の表情を浮かべて言いました。

「いやぁぁぁ(>_<。)」

作者は、メフィストの台詞に耳を押さえました。


この曲は、1801年作曲されたと言われています。

14歳の教え子の公爵令嬢ジュリエッタを好きになったベートーベンが、彼女の為に贈ったと言われています。

「19世紀のエピソードを今の価値観で考えては行けませんよ。」

私が作者にそう言った。

「そうですか?古今東西、『坊主』とか『先生』なんて職業の人間は、スケベエだって、言い伝えられてますから。」

メフィストが、嬉しそうに話す。

「やめてよぅ…言い伝えとか(>_<。)怒られちゃうでしょ。

でもっ、いろんな不祥事が、最近、ありすぎて否定も出来ない自分もいるわっ(T-T)

女性の未成年に対するワイセツ行為のニュースとかをネットで目にすると、『24の瞳』とかに感動した昔の自分に戻れないわ…」

作者は深くため息をつく。

「まあ、昔は先生と言えば、『聖職者』と呼ばれていましたからね、少しでも、汚点があれば、大きく取り上げられますし、

現在は、『仰げば尊し』を卒業式に歌わない学校も増えてるんだそうですよ。」

私が作者をなだめる。


「まあ…そうよね(-_-;)

ベートーベンだって、『月光』なんて題を勝手につけられて怒っていたらしいし。」

作者は気持ちを切り替えるように明るく話す。


そう、元々は『幻想曲風ソナタ』と言うらしいです。

「人間なんて、みんな、そんなものでしょ?

ベートーベンだって、勝手に作り上げたイメージをナポレオンに押し付けて、『エロイカ』なんて曲つくって、ナポレオンが皇帝になると、ガチギレして題名変えたらしいじゃないですか。

この私、メフィスト・フェレスも、シェイクスピアや、加藤和恵に弄ばれ、手塚治虫には、受肉されたんですからね。」

と、シクシクと泣き出す。

「じゅ…受肉って…なに(・_・;」

「バ美肉ですっ」

メフィストが、泣くのをやめて作者を見る。


「ばびにく………。」

作者は怪訝な顔をした。

それを見ながら、メフィストは嘘泣きをやめて、ヤレヤレと説明を始めました。

「知らないんですか?もう、古いですね。

バーチャル美少女受肉…私の場合は、男ですから、小さくまとめて、

バ美肉おじさん。と、呼ばれてますね。」

メフィストは、なんだか嬉しそうに笑いました。

「バ美肉…おじさん?手塚治虫先生が、そんな怪しげな話を…書いていたかしら(-"-;)」

作者は疑惑の目をメフィストに向ける。

「ありますよ〜しかも、未完の遺作『ネオ・ファウスト』ですっ。」

メフィストは、深くため息をつく。


『ネオ・ファウスト』は、1987年から連載された手塚治虫の青年漫画です。

ゲーテのファウストをベースに、高度成長期の日本を舞台に物語が進みます。

確かに、この作品のメフィスト・フェレスは、女性でした。

しかし、バ美肉とは、主にネットなどの仮想世界で少女のアバターで話すVチューバーの事を示します。

ネットのなかった昭和の巨匠、手塚先生には濡れ衣の話です。


「やめてよぅ、あれは、女性の悪魔、アンタのバ美肉なんかじゃ無いんだからっ、絶筆された遺作を汚さないでよぅ。」

作者がメフィストに叫びました。

メフィストは、それを静かに聞いていました。

ふざける事なく、少し、悲しそうにうつむきながら、唇に皮肉げな笑いを浮かべ、


「だから、人間なんて、そんなものなんですよ。」

と、呟いた。


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