モナリザ
日曜の昼下がり…我々は美術館の廊下を歩いていました。
空想で作られたこの場所は、世界中の名画を見学することが可能なのです。
建物は、近代モダンな作りで、剥き出しのコンクリートの壁と、大きなガラス窓の無駄のないシンプルな雰囲気を醸しています。
私達は中庭の美しい芝生の中庭を見つめながら、2メートルはありそうな観音開きの開けっぱなしの展示場へと入って行きました。
生成りの桧の壁に飾られているのは、『モナ・リザ』レオナルド・ダヴィンチの代表作です。
「なんか、和風な雰囲気にも合うのね…モナ・リザ。確か、本家のルーブルでは赤い部屋に展示されてたと記憶してたけど。」
作者はモナ・リザに向かい合うように見つめながら、言いました。
「そうですね。モナ・リザは全体的に質素で無駄のない絵ですから、日本の雰囲気にも調和するのでしょうね。」
私はそう言って中央の竹のベンチに座った。
「そうね…この絵は、『聖アンナ』『聖ヨハネ』と共にダヴィンチが最期まで手元に置いていた作品なんですって。
今からおよそ500年前、1519年5月、ダヴィンチが亡くなり、そして、その一ヶ月前にフェレンツェに一人の女児が生まれるわ。
カトリーヌ・ド・メディチ。
この辺りから話を始めましょうか。」
作者は私のとなりに座ってそう言った。
私は静かに作者と微笑むモナリザを見つめていました。
このエリアで設定を始めるのは、マルチン・ルター。一見、関係無さそうに見えますが、カトリーヌ・ド・メディチ。
1572年のバーソロミューの虐殺でプロテスタントの人達を殺したとされている。
ノストラダムスもまた、カトリーヌと関係がありますから、出だしには良いかもしれません。
「そうですね。ノストラダムスは1520年、ペストの為に学業が思うように出来なくなるようですし、
ルターは、1520年に数々の論戦のはてに、翌年1521年に破門になりますからね。」
私は昔の記憶を思い出しながらそう言った。