時影、近代魔術を語る 170 かくれんぼ
映画『インディージョーンズ』のテーマが流れて行きます。
欲だの、金だのと騒いでいたわりに、メフィストは繊細なジャズアレンジの演奏をしてきます。
「確かに、お経なみの破壊力があるわね(-_-;)
なんかさぁ…侵略者がマシンガン持ってやって来るって感じで、お化けの方に同情しそう。」
作者が紅茶を一口飲んでため息をついた。
「侵略者!ですからね。
20世紀はじめの冒険野郎なんて、みんなロクデナシですよ。」
演奏を終えて、メフィストは笑いながらそう言った。
「もうっ…インディ先生は、大学教授の設定だったわ。」
作者は不機嫌そうに口を尖らせた。
「それはともかく、話がそれてますよ。今回の話題はかくれんぼ…です。」
私は、呆れながらメフィストに紅茶を差し出し、作者の茶碗におかわりをミルクなしでそそいだ。
「まあ、時代的には、こちらの方がカテゴリーにちかいんですがね。」
と、メフィストは紅茶を嬉しそうに一口すすり立ち上がる。
「時は1936年、アメリカの考古学者のインディは、依頼を受けて聖書に記されたアーク…聖櫃を探しに行くのです。
しかし、それを狙っているのは、ナチスドイツ。
と、まあ、こんな感じでね。」
メフィストは、私達の注目を集めて嬉しそうに会釈をした。
「まあ、そうだけど、長くなったし、一人かくれんぼの話をしよう。さらりとさぁ。
あれ、私みたいな古い人間には、不完全な感じで怖いのよ。」
作者は眉を寄せる。
「細かい儀式については説明しませんが、基本、家を結界として使い、ぬいぐるみを鬼に見立てて、自分を探しに越させる…この段階で、何かがおこる、と、いうわけでしたね。」
私は、一人かくれんぼについて軽く説明した。
「まあ、ポップカルチャーですからね。
関西で流行って、2ちゃんねるのネタで儀式のやり方が広まると、それに応じて怪現象が頻発したんでしたか。」
メフィストは椅子に座り、少し小バカにしたように目を細めてそう言った。
「ポップカルチャーって、まあ、若者の軽さ、は、見えるわね。
丑三つ時は怖いから、1時間遅らせて3時に、
人形は怖いから、100Yenショップのぬいぐるみ。
傷をつけるのは嫌だから、爪切りで爪を用意。
血の代わりに赤い糸。ですもの。」
作者は眉を寄せて嫌そうな顔をしています。
「確かに、怖いのは嫌ですからね。
依り代は、聖霊の力を集めるものですから、知性を持つ人の形は、何かあったときに厄介ですし。
市松人形とか、見た目から怖いですからね。」
私は、小さい頃、お母様の市松人形をバラバラにして叱られ、夜中に目覚めて、のバラバラの市松人形に恐れおののいた小さな作者を思い出して笑った。
「確かに、イチマツdollもゾクゾクしますが、ビスクdollもなかなか、胸を高ならせてくれるものですよ。」
メフィストは恋でも語るように嬉しそうに作者に笑いかけ、作者を不思議な顔にした。
「それ…私だって怖いわよ。でも、ぬいぐるみって…動物でしょ?生け贄にはしても、依り代にはあまりしないのよ…だって、話が通じないから、暴走したら怖いじゃない。」
作者は不機嫌そうに眉を寄せてため息をついた。