時影、近代魔術を語る 169 かくれんぼ
「ひとりかくれんぼ…ですか、都市伝説ですね。」
メフィストは、左手の小指を立てて、すましながら紅茶を口にした。
「うん…(-"-;)私、その手の話、あまり得意じゃないんだけど、儀式が決まってると、話の構成を考えなくてラクチンなんだよね。まあ、失敗してるけど。」
作者が苦笑する。
「いやぁ、残念です。さぞや不気味な話になったでしょうに。」
メフィストは真実、残念がって、作者を不機嫌にする。
「いえ、冷蔵庫でよかったと思いますよ。
色々、調べて、不気味だって、背中に鳥肌立ててましたでしょ?」
私はネットを調べる作者を思い出す。
物語とはモノを語る。とも申しますが、この場合のモノには、妖怪や人外の怪異などの意味もあると言われています。
話をはじめて行くうちに、異界の何かを呼び行ける…なんて事も無いとは限りません。
「うん…私、書いてるうちに、色々想像して、夢とかで見たりするから嫌なんだよね(-"-;)
とくに、100物語とか、儀式系列は…。」
作者は眉を寄せてため息をつく。
「でも、悪魔召喚とか好きじゃないですか。
語りましょうよ♪
大丈夫ですよ。気にしなくても、夜に怖くなったら、私を呼んでくだされば、小わっぱ妖怪など、蹴散らしますから。」
メフィストがそう言って、作者の右手を取って微笑んだ。
「アンタを呼ぶって…夢を操作できるスキルは無いし、どちらにしても怖いから嫌だわ。」
作者はため息をついて手を引っ込めた。
「そうです。メフィスト。異世界なら、一人で帰ってください。」と、私はメフィストに分かるように胸元を軽く触り、内ポケットにグリモアールがあることを示して威嚇した。
メフィストは、左目を軽くすぼめて悔しそうな顔をしてから、余裕の笑みを浮かべる。
「嫌ですよ。折角、出番が回ってきたんですからね。それに、ここのテーマは『近代魔術』じゃないですか?19世紀のヨーロッパと言えば、降霊術が流行りましたからね。
ひとりかくれんぼもまた、より代を使った降霊術ですよね?」
メフィストは、少し挑戦的に私を見る。
「そうですね。確かに、ネクロマンシーに近いでしょうかね?
チョークで線を引く代わりに家を結界にし、依り代に霊を下ろすのですからね。」
「やめようよぅ…なんか、空気が変わってきた気がするよ。
なんか、あれ、私みたいな古い人間には、不完全な感じで不気味なんだよ。」
作者が本当に嫌そうに私を見ました。
「すいません。」
怖がりの作者を忘れていたことを私は謝る。
「そうですよ。全く。」と、メフィストは文句を言って私を不機嫌にする。
が、次の瞬間には、テーブルに鍵盤を取り付けて、作者に恭しく挨拶をした。
「それでは、私が一気に空気を浄化しましょう!
悪霊を追い払うには、音楽と、金銀財宝、探求心。
欲と色気とアドベンチャーですっ!!」
と、叫んで弾き始めたのは、映画『インディージョーンズ』のテーマ。
これは、1930年代を舞台に、考古学者インディージョーンズの冒険のお話です。