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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 167 ベルリンソナタ

ぎこちない雰囲気のまま、チェコの最終日が流れて行きます。


私は、努めて落ち着いて赤ワインを口に運びました。

嫉妬…登場人物(メフィスト)に!?


そんな事、あるわけはありません。

私は、作者の半身…影なのです。

そこいら辺のモブに嫉妬する理由もありません。


「Master。よければスマートフォンを貸してもらえませんか?」

メフィストが作者に甘えたように聞く。

作者は少し嫌そうな顔をしてから、渋々渡す。

「それ、使ったら、早く話を始めてくれる?こっちの予定もあるんだよね。」

作者もメフィストの暴走に少し疲れているようだ。

「そのような、つれない言い方をしなくても…『物語をさがして』が再開したら、私も、そちらに帰りますよ。」

メフィストは、少し、困ったように甘く眉を寄せる。

「ごめんよぅ……(;_;)だって…終わらないんだもん。『パラサイト』終わらないから、もう、予定がぁ…(T-T)」

作者が頭を抱える。

「メフィスト。あなたが語るのは、私の作者の苦悩ではなく、ウェルテルの苦悩ではありませんか?」

私は混乱する作者の背中に手をおいた。


やはり、強制退去させましょうか?


私は、内ポケットに仕込んだグリモアールを服の上から軽く触れる。

この世界では、我々はほぼ万能。生意気なキャラには格の違いを見せつけるべきなのかもしれません。


「泣かないで、MY Master。しかし、ここはムニェルニーク。

オスカル2世の統治の地。彼を語らないわけにはいかないのですっ。」

メフィストは、借りたスマホから『薔薇は美しく散る』を再生します。

「オスカルさまΣ( ̄□ ̄)!」

作者がパブロフの犬のような乙女モードに顔をあげました。

「そうですっ。自然美しい穀倉地帯、バラのように芳しきボヘミア王妃のワインの聖地。

ここは、ムニェルニーク!!」

と、メフィストは、早着替えでフランス近衛兵のコスプレをします。

とうもろこしの様な金の巻き毛のカツラまでかぶり。


「ええっ……ムニェルニークって、聞いたことなかったけれど、ボヘミア王にいたんだ!オスカルさま( 〃▽〃)ああっ。素敵。」

作者は一気にテンションをあげてきます。


もう。


私は、この二人に呆れながら、曲の終わりを見計らってメフィストのコスプレを解きました。


「オタカル殿下です。

1251年からオーストリア、ボヘミア王として在位しました。」

私の台詞に作者は落胆のため息をついた。


「オタカルかぁ……惜しい(-_-;)」

「全然、惜しくなんてありませんよ。時代も違いますしね。それに、アントワネットの先祖、ハプスブルグ家のルドルフ一世とは敵対関係にありました。オタカル2世はっ。」

私は、作者を見て苦笑する。

「そうなの?嫌ね〜もう。」

作者はガッカリしたようにメフィストを見る。

メフィストは作者を見つめ返して微笑む。


「しかし…彼を語らずにベルリンを…ドイツを語ることなど出来ないのですよ。

何しろ、このオタカル2世がドイツ騎士団の北欧進出を支援し、北欧の開拓とドイツ王の選帝について定めて行くのですからね。

そして、東欧では、聖アンドレを信仰する人達が多いのです。

彼が、黒海から遠くボルガ川…ロシアまでキリスト教を広めたのだそうですよ。

聖アンドレと共に、川と歴史は流れ行くのですからね。」

メフィストはそう言って、作者に近づくと小さなバラの花を差し出して、こう言った。

「チェコの最後の夜を…私と踊ってはくれませんか?」と。


それは、あまりにも舞台のような非現実感を醸しながら作者を頷かせた。


そうして、ホテルの家具たちに音楽を奏でさせる。

映画『犬神家の一族』テーマソング

『愛のバラード』


それは、やけにシュールで、それでいて、上品で切ないそんな曲に聴こえた。


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