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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 166 ベルリンソナタ

暮れて行くムニェルニークの街並みを窓から見つめ、我々は部屋でディナーを楽しむことにしました。

今日でチェコともお別れです。

エルベ川を北上し、ドレスデンへ向かう予定なのです。


テーブルには赤ワイン。

そして、茹でパンのクネドリーキと牛肉のグラーシュ。今日はこれでシンプルに二人で過ごす予定でした。


「いやぁ、懐かしいですな、グラーシュ。私、色々な時代、国を渡り歩きましたが、チェコでこのビーフシチュウを口にすると、ホッとするのです。」

呼びもしないのについてきたメフィストが、作者の機嫌をとりながら、話すのと食べるので忙しくしています。


「メフィスト、あなたの出番は終わりましたよ?それを食べ終わったらお帰りなさい。」

私は少しきつめにメフィストに言う。

長く伝説や名作に登場したキャラは自己主張が強くていけません。

しかし、メフィストは、私の事など気にもしない様子で私の作者に話しかける。

「明日はドイツですね、列車ではなく、船の旅とはなかなか優雅ですね。

MASTER、貴女とエルベ渓谷を見ることが出来るとは、今からとても楽しみです。」

メフィストは悠々と作者に微笑んだ。作者は私を気にするように一瞬、私を見て話をする。

「楽しそうね。でも、あなたの出番は今日までよ。」

作者の言葉にメフィストは大袈裟にショックを受けたジェスチャーをする。

「そんな、ゲーテも鴎外も…私を愛してくれたと言うのに…その二人が私を産み出した彼の地に私が連れていって貰えないなんて…こんな悲しいことがありましょうか。」

メフィストはそう叫んでしくしく泣き始めます。

勿論、うそ泣きです。

「メフィスト…ベルリンまではまだ、道中ありますし、また、登場する機会はありますから、今回は諦めてお帰りなさい。」

私は少し強くメフィストに言った。こうなると、強制退去も考えるべきでしょうか?

私と作者の困惑を楽しむようにメフィストは笑った。

「悲しいですね時影さん。、確かに、私の方が人気も知名度もキャリアもありますが、嫉妬はいけません。

それに、私は『帰らない』ではなく、『帰れない』のですよ。

一応、これでも名の通った魔族ですからね。」

メフィストは急に真面目な顔になる。

「あなた方こそ、ゲーテと森鴎外に失礼ではありませんか?

『ウエルテル』も『舞姫』も語らずに私を舞台から下ろすなんて。」

メフィストの言葉に作者は右のこめかみを人差し指で押さえた。


「だから、それはここで語ってもらう予定なのよ〜と、言うか、文豪って、皆、ふられてばかりなんだわ。もうっ。

悪いけど、そんな話、『なろう』受けはしないんだからっ(-_-#) 」

作者はグラーシュを口に入れて、諸々の感情ごと飲み込んだ。


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