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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 165 ベルリンソナタ

「やっとベルリンへと繋げたわ。」

作者はそう言って笑った。

「本当に…よくやりますよね。」

私は呆れながらも作者を誉める。

「まあ…でも、本当はね、ネフィルティティの物語は、カールとトトメスの物語ではなくて、

デートリッヒと語るはずだったのよ。」

作者は疲れたように深いため息をつきながら肩を落とす。


そう、ここでの物語は、『ベルリンソナタ』と共にあり、20世紀と言う激動の時代のなかで翻弄されるベルリンと、それに関わる人達の話が中心になる。


デートリッヒとネフィルティティ。

紀元前後のこの二人の美女は、ヒトラーに気に入られたと言う共通点がある。

デートリッヒは、アメリカで声を貰い、銀幕のスターとして活躍する。

そして、ヒトラーの要請に逆らってドイツには帰らなかった。


ネフィルティティは、その存在を知られると、エジプト政府から、再三の返却要請をドイツは受けることになる。

一時、政治の為にドイツの政策が軟化へと動きそうな時もあったらしいが、ヒトラーはネフィルティティの胸像を返すのを拒んだらしい。


戦争が激しくなる中でも、彼女は場所を変えて大切にされた。

終戦後、アメリカ政府は……やはり、ネフィルティティをエジプトに返す判断は下さず、現在でもネフィルティティの胸像は、ベルリンで静かにその美しい姿を人々に見せているのだ。

「そうでしたね、ヒトラーから逃れたデートリッヒ、そして、ドイツで大切に保管されたネフィルティティ…。対照的な美人として、話をする予定でしたね。」

「うん。でも…こうして書いてみると、デートリッヒもネフィルティティも故郷に帰れなかったのは同じな気がするわ。」

作者は渋い顔で、メフィストの甘い口上を聞き流している。


「でも…デートリッヒは戦後、ドイツの地を踏んでいますよ。」

「そうね、でも…冷戦に巻き込まれて、ベルリンは西と東に分断されてしまったじゃないの。」

作者は目を閉じて肩をすくめた。

「確かに、けれど、1989年、ベルリンの壁の崩壊のニュースをどこかで見ていたはずですよ。」

「そうね…そして、わずか3年後の1992年、変わり行くベルリンを見る事なく亡くなってしまうんだわ。

なんかね、1970年の大阪万博にもいらしていた見たいよ。」

作者がそう呟いて舞台に視線を戻すと、お調子者のメフィストは、リリー・マルレーンを演奏させていた。

そして、それにあわせて、トトメスの切ない気持ちを口づさむのです。


今でも…君はそこで私を待っていてくれるのか…と。


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