時影、近代魔術を語る 155 ジャンニ・スキッキ
穏やかな昼下がり…船の旅はゆっくりと進んで行きます。
西洋の大河は、それ事態が交通機関の役割があり、小さなヨットでヨーロッパを周りながら生活する方々もいるようです。
物や人を運ぶ他に、パン屋やレストランなど。西洋の生活を垣間見るのは楽しいものです。
我々は、濃いめのコーヒーにアイスを浮かべ、古いレコードに耳を傾けました。
マリア カラスの『私のお父さん』です。
「もうっ、わかってるわよ…間違いました。
ああ、間違いましたよ?マリア カラスはまだ生まれていませんね(///∇///) いいですよ〜もう、これは私の味なんだもん。
ひっそり間違いを見つけて、いつ私が気がつくか、こっそり楽しんでくださいよ。
嗚呼!!いっそ、完結したら、誤字機能解除しようかしら?
解説で埋まったら、笑えるわね(>_<。)」
「大丈夫ですよ。我々のために、そんな時間を無駄にする人なんていませんから。
それより、続きをはじめてくださいよ。
『ジャンニ スキッキ』を見に行った二人をハッピーエンドにしないと、また、脇役が増えますからね?」
私は呆れながら作者を急かした。
その夜、青年は従兄弟から借りた上等のスーツで彼女を迎えに行く。
彼女の父は不機嫌に上機嫌な娘のキスを受け、母親はドアで緊張する青年の姿にある予感を確信に変える。
メトロポリタン歌劇場では新たな時代と平和を喜ぶ人達の浮かれた姿がある。
クリスマスの為のドレスを彼女は前倒して袖を通す。
信心深い母親と姉が夜更けまで手伝って仕上げたドレス。
クリスマスの前に着てしまう事をマリア様もきっと多目に見てくれるに違いない。
彼は、最前線に行くことなく戻ってきたのだ。
約束の言葉と花束を手に。
出し物は『ジャンニ・スキッキ』
彼女は歌劇好きの友人から教えてもらった事を心の中でおさらいする。
ジャコモ・プッチーニはイタリアの作曲家で、『西武の娘』や『蝶々夫人』などを作り上げた人だ。
彼の作品は、異国情緒があり、耳障りのよいアリアが魅力だと。
『ジャンニ・スキッキ』は、ダンテの『神曲』の登場人物の物語らしかった。
細かい事は、プッチーニの創作なのでわからないけれど、新聞社に父親が勤めている友人は、予言者のように彼女に言う。
「この話は、『ラブコメ』らしいわ。
ジャンニ・スキッキには娘がいるの。
『恋をする年頃の娘』がね。彼女の名前はラウレッタ。
恋人はリヌッチョ。
二人は結婚したいと思っているけど、でも、困ったことになるの。
大富豪のブオーゾが亡くなって、でも、遺産を受け取れないリヌッチョは、ラウレッタと結婚は出来ないのよ。
悲しむラウレッタ。
父親に知恵を借りるのよ。
父親のジャンニ・スキッキは、悪知恵を働かせるわ……。」
友人の話に彼女は不満そうにこう言う。
「財産なんて無くても私だったら平気だわ。
愛があれば。好きだって…永遠の愛を…膝まづいて誓ってくれたなら。
私だったら、迷わず彼の胸に飛び込むわ。」
少し興奮ぎみに叫ぶ彼女の尖った鼻を友人は軽く摘まんで困った顔をする。
「あら?お金は大切よ。そして、安く自分を売ってはダメよ。焦らして、相手がお願いするように仕向けなければ!
男の人は、手に入れたらすぐに飽きてしまうもの、らしいから。」
友人の言葉に彼女は怒ったように早口になる。
「デビーは…彼は、そんな浮わついた人じゃないわ。
子供の頃からずっと…私だけを好きだっていってくれたもの。」
この台詞には友人も絶句してため息をつく。
「そうね、恋する娘には叶わないわ。まあ、楽しんでいらっしゃい。」
友人は、そう言ってフランス製の美しい絹のリボンを少し早いクリスマスプレゼントに渡した。