時影、近代魔術を語る 148 ベルリンソナタ
穏やかな日差しを浴びて、我々は旧市街をのんびりと歩いていました。
今日はプラハ大学を見学に行くのです。
プラハ…カレル大学の歴史は長く…って、また、作者が寄り道を始めました。
「ダメですよ。なんです?拷問博物館って。」
私は立ち止まる作者に声をかけました。
「なんだろうね…拷問博物館。気になるね。」
作者は看板を見つめたまま、嬉しそうに呟きました。
「気になりません。さあ、今日はプラハ大学の話を…いいえ!テスラのお話をするのでしょ?」
私は作者の背後から、彼女の肩に手をかける。
「テスラ……。」
少し名残惜しそうに、拷問博物館の看板に別れを告げながら作者は歩き出した。
「そうです。ニコラ・テスラの話をするのですからね、地震平気や半重力にテスラコイル…ある意味、拷問よりもスリリングでエキサイティングな話ですよ。」
……しらんけど。
私は無責任に作者をあおる。なにしろ、最近、更新していませんでしたから、少しは頑張って貰わないといけません。
「そうよね(-"-;)テスラって、19世紀の人なのよね。
森鴎外が留学をした辺りって、物凄い勢いで世界が変わり始めた時代なんだわ。」
作者は気を取り直して歩き始めた。プラハ大学はもうすぐです。
プラハ大学は、創立1348年カール4世によって創設されました。
歴史が長いので、それに比例して色々な問題がおこったり、覇権あらそいもあり現在に至ります。
神聖ローマ帝国からの創設ですから、ドイツ、ドイツ人との関わりも古くからあり、森鴎外も、そんなプラハ大学ゆかりの人物と話したり、もしかしたら行ったこともあるのかもしれません。
「テスラねぇ…まさか、プラハ大学に在籍していた事があるなんて、知らなかったわ。」
作者は大学の門扉を見上げながらボヤいた。
「テスラさんはセルビアの方のようですから、中欧でも屈指のプラハ大学とゆかりがあるのは、不自然ではないと思いますよ。」
「そうよね…。プラハ大学かぁ…。確かに、考えればそうだけど、なんか、アメリカのイメージ強いんだもの。」
作者はため息をつく。
「そうですね。テスラと言えば、エジソンですからね。」
私は相槌をうった。
テスラはセルビア人の夫婦の元に生まれ、家は裕福ではありませんでした。
それでも、天賦の才能と努力、周りの協力を得てグラーツの工業大学へ入学するも、父親の死もあり、学費の関係で中退。
のちにプラハ大学の大学に一年留学しています。
そこから、色々あってエジソンの会社に就職しますが折り合いが合わずに退職。
1887年、テスラは独立を果たすのでした。
「そうね、良く分からないけど、直流と交流で対立していたんだっけ?
森鴎外もベルリンで、このセルビア人の青年とアメリカ人の発明王が繰り出す戦いに興味を持ったのではないかしら?
時代は、確実にガス灯から電気へと変わろうとしていたのよね?」
作者はそう言って苦笑する。
「1888年、この年にテスラは交流式の電流実験に成功し、資本家をものにしたようですからね。」
テスラの特許を使い、ナイヤガラの滝に発電所が出来たのは有名な話です。
「うん。森鴎外も、帰りの船で、そんな情報も集めて返ったかもしれないわね。とにかく、いろんな事が1888年におこったのね。」
作者は大きく延びをした。「我々の物語には、どんな影響が加わるのでしょうね?」
私もプラハの抜けるような春の空を見上げて言った。
本当に…まとめる気があるのでしょうか。
「どうかしらね?
昔、テスラなんて知らなかったわ。
学校じゃ、エジソン一拓だったもの。
GHQの陰謀かΣ( ̄□ ̄)!
なんて一瞬思ったけど、どうも、教育上の問題なのかもしれないわね。
エジソンは
99%の努力を大切にし、
テスラは、
エジソンは、もう少し、数式や思考に時間を使い、無駄な努力を省けば良いのにって、思ったらしいわ…。
努力推しの日本の教育にはあわなかったのかもね。」
作者はそう言って歩き出した。
「で、貴女はどちらが好きなのでしょう?」
私はからかい半分で聞いてみた。
作者は少し考えてから、
「顔はテスラ、でも、私も話し出したら喧嘩するかも。」
「喧嘩?」
私はおうむ返しにきいた。すると、作者は皮肉な笑いを私に向けてこう言った。
「一万字の物語を作るのに、こんな無駄文作り続けてるんだもん。
テスラにしてみれば、私なんて非効率な人間にしか見えないでしょ?
まあ…エジソンだって、私を仲間にはしたくないだろうけどね(~_~;)」