時影、近代魔術を語る 142 ベルリンソナタ
静かな夕方。我々はホテルの窓からプラハの街を見つめていました。
疲れはてた作者の為に私はワイン入りの紅茶を入れました。
「紅茶…ありがとうね。はぁ…わははは…はぁ、
いやぁ、金儲けの道は遠いよね(T-T)」
作者はそう言って紅茶を口にした。
4月に入り、我々は意気揚々と他サイトに投稿しに行ったのでした。
「そうですね。」
私は最近の作者を思い出して少し暗い気持ちになる。
「そんな顔しないでよ…泣きたいのは私よ(T-T)
やはり、金になる文章は違うわよね。
まずは、あらすじで判断されるとか、考えもしなかったわよ(>_<。)
ついでに、新型コロナがNGワードとか。
赤字で新型コロナがダメだって警告出たときは血の気が引いたわよ…。
だって、私の2020年、コロナまるけだったし、ここから物語を繋ぐ予定だったんだもん。『ノストラダムスを知ってるかい』もそれでなおし始めたのに…
コロナが話題だとダメって……厳しいわよね(T-T)
つまり、夢の世界にコロナの話題なんて連れてくるなって事でしょ?
ネット大賞は、エントリーは出来そうだけど、この時点で一時審査も落選確定な気持ちになったもん(T-T)
『ラジオ大賞』だって、半年かけてここまで来たのに…完結はしてないけどさ、もう、呪われてるって考えたわよ……。」
作者は渋い顔を紅茶の水鏡に映す。
「そうですね。『ノストラダムスを知ってるかい?』は、何だかんだとケチがつきますね。」
「うん。もうさ…2025年に向けて書き続けなきゃいけないのに止まったまま、4月も半月が流れちゃったわよ(T-T)
ホント、嫌よね。
でも、今回は持ち直しも早くて良かったわ。
とにかく、向こうは、あらすじを送信して、企画を通さないと書けないみたいだから、先にそれを通してから構成しないといけないのね(´ヘ`;)
学習したわ…
よく、1話1円なんて失礼とか…ネットで素人小説のそんな評価の話を聞くけど…1円でも、金になる文章を書くと言うことは、制約を受けるって事なのよ。
なろうは金にはならないけど、その分、自由なのね、色々あったけど、自由の価値を知れたのは良かったわ。」
作者はそう言って疲れたように私に笑いかける。
「まあ、でも、まだ、こちらもネット大賞は終わってませんし、夢がきえた分けではありませんよ。」
私は励ましたくて明るく言う。
実際、こんな状態で間に合うとは思えない。
けれど、1年、10万字の無駄文をよみ、なおブックマークをしてくれているこちらの読者を思えば、やめるわけにもゆきません。
作者は複雑な私の気持ちを見透かすような、乾いた笑いを漏らした。
「ふふふっ…わたしはね、この年で、小二の夏休みの事を思い出しているわ… 自由研究について、思い付かなくてね…
結局、発表当日までなんか、ごまかすネタを考えて、黒板の前に向かったんだわ(T-T)
あの時の、なんとも言えない敗北感と義務感…。
他の人は、昆虫の標本とか、歴史を調べてノートを提出したり、バックを作ったりしたのにさ、
私、何したんだっけ…
『出来ませんでした。』とは、言わなかったと思うのよ?
歌でも歌ったのかな(-"-;)
それとも、自由研究が出来なかった言い訳をしたのか……。
何にしても、苦い思い出だったわ…
まさか、あの気持ちをまた、この年で味わうことになろうとは(T-T)」
作者は顔を自分の両手でこねまくりながらため息をつく。
「それは…どういう事でしょうか?」
嫌な予感がする。
「そんなん……改変途中で投稿するのよ(>_<。)
ぎり、30日まで頑張って、
一応、文字数制限も未完も問題ないんだから、改変途中だって良いわけでしょ?
とにかく、今年は投稿わ(>_<。)
私、頑張ったもん。
小説家としては最低でも、
なろう底辺作家としては、頑張ってるもん…。
とにかく、今ださなきゃ、一次選考までの夢すら見れないもん。
落選確実だって、少なくとも、5月にはふりまじんの皆に、公募にエントリーしたって言えるんだから、
嘘…と、言うか、一次選考に残ることも不可能だけど、もしかして受賞したらのホラ話を一次選考発表まで、みんなにメールできるもん…。
やるわよ…(T-T)」
作者は気持ちを吐き出すようにわめき、そして、何かの痛みに耐えるように目を閉じる。
私は、どう返事を変えそうか考えながら、紅茶のおかわりをつぎ、
そして、バイオリンを取り出すと、窓辺に立ち、赤く染まるプラハの街をバックに一曲弾いた。
ベートーベンの『情熱』です。