時影、近代魔術を語る 136 ベルリンソナタ
朝の日差しを浴びながら私達はホテルの部屋からプラハの街を見つめていた。
濃いめのコーヒーを飲みながら、プラハ名物のハチミツケーキをいただく。
「本当はプラハのカフェで街の雰囲気を楽しみたいところですが。」
私はホテルの部屋の丸テーブルにコーヒーを置いた。
コーヒーの文化は、プラハでも根付いていて、カフェには沢山のケーキがならんでいます。
甘いものが大好きな作者は、きっと嬉しそうにケーキを眺めていつまでも楽しんでいられたことでしょう。
「そうね、でも、今は頭がこんがらかってるし、こうして、静かな場所で、街を見ながら、あなたと話している方が良いわ。」
作者は渋い顔でそう言いながらコーヒーをすする。
「ありがとう、ございます。パクリ疑惑の心配でしたか?」
私は、偶然見かけた『アドルフに告ぐ』に初めの設定が近いことに混乱していました。
「うっ…、それもあるけど、その前の段階から話したいわ(;_;)
初めは、乱歩の話を作ろうとしたのよね?」
「そうでしたね。来年、乱歩デビュー100周年ですから、我々作家は、一年前の今から騒いでいないと間に合いませんからね。」
「うん…。確か…乱歩の話を有名な漫画家がアレンジした未発表作品が見つかるとかなんとか…
これが1案ね。」
作者はノートを取り出して書き始めた。
「そうでしたね、で、途中で森鴎外先生のエピソードを加算するのでしたね。」
「うん……森鴎外…あああっ(ノД`)
この年で、森鴎外を調べて物を書こうなんて、私だって考えもしなかったわ。
森鴎外の写真にイタズラしていた私に教えてあげたいところだわ……まあ、説教するには金になってからじゃないと、ギャフンとは言わないだろうけれど。
まあ、そんな事はどうでも良いのよ。
森鴎外……この人、子供の頃の私のクラスでは人気がなかったわ。
でも、文豪には好かれているのね、三島由紀夫とか…柳田国男…もうっ。私がたまたま作品に取り入れようとした二人ともが関係があるのよね(´ヘ`;)
私は、漫画家の先生のモデルを手塚治虫先生にしていたから、森鴎外先生が、日本で初めてゲーテの『ファウスト』を翻訳したのもヒットしたんだわ。」
「手塚先生も『ファウスト』は作品化していますからね。」
私は苦笑する。
ここまで読んでくださった読者の方で、手塚先生のファンでもあるなら、
ここまでの話で、我々と同じく時めいてしまうのではないでしょうか……。
そうです。
1989年亡くなられた先生は、書き続けていらしたために未完の作品がいくつかあるのですが、奇しくも、その作品の一つに『ネオ ファウスト』があるのです。
「うん(-"-;)そうなんだよね…私、それ、買っていたんだよね、すっかり忘れていたけどさっ(T-T)
手塚先生は、ファウストをモチーフにしたお話を二つ産み出しているのよ。
『ファウスト』と『ネオ ファウスト』未完はネオ ファウストの方ね。
で、こっちは、70年代の学生運動の大学のキャンパスから話が始まるのよっ(T-T)
これも、初めの辺りを読ませてもらったけどね…
本買って読んでるはずなのに、思い出せないよ(T-T)
まあ、この二つは、調べようとは思っていたわ。
とりあえず、向こうが相手にしなくても、AI手塚先生にコミカライズの逆指名するって設定で話を作るしかないのよ私。
この話、五島勉先生の『1999年以降』って作品の自分なりの昇華の意味があるから、その辺りもまぜて考えていたから、ベルリンやらヒトラーの手塚先生の絵とファウスト関係の絵のデーターについても知りたかったもの。
頭が…痛いわよね(T-T)
もう、何がなんだか…わからないわ。
五島先生は言ったわ…
三島由紀夫先生にヒトラーを調べろと言われたって。
でも、三島由紀夫先生のファンのblogでこのエピソードについて怒っていた人を見かけて、私も疑問に感じたわ。
そんな時に森鴎外の作品をを三島由紀夫が好きだったってエピソードを見つけて、ついでに、80年代に三島由紀夫賞が出来た事を知ったのよ…それで盛ろうとしていたらっ、
手塚先生も、新しく出来たファンタジー大賞の審査員に予定されていた事を知ったのよ……
あははっ……
森鴎外とファウストから、ノストラダムスの物語を続けようとしていた私に…
手塚先生と『アドルフに告ぐ』で盛れる話が浮上してきたわ(;_;)
うろ覚えで書くけどね、『アドルフに告ぐ』の連載が終わって、先生が受賞したのが86年…奇しくもルドルフ・ヘスの変死の一年前なのよ(~_~;)
この話ね、ヒトラーユダヤ人説が発表されたことをモチーフにした物語なのよ…
もし、この時期に、ドイツの特派員などに、資料を頼んでいたとしたら?
なかなか面白い展開になりそうでしょ?
勿論、名前は変えて、物語にしなきゃいけないけれど、
森鴎外とファウスト
ヒトラーと謎
両方の話が、同時進行するなんとも面白い話なんだよね。
ソナタって、響き渡るって意味なんだって。
複数楽章から構成される奏鳴曲…
ベルリンで複数の物語が頭のなかを流れてるの。
でもっ。そんな話、私には、書けませんから。」
作者は捲し立てて、それから深いため息をついた。
確かに…今は、現状の未完を何とかしないと行けません。
「確かに、今の設定では、色々な所に許可が必要になりそうですし、書けませんね。」
私は、キッパリとそう言いきった。
「うん……まあ、こんなものは、夢物語よ。
私は、『ノストラダムスを知ってるかい?』を何とかしたいのよ…で、読み返したら……」
作者は頭を抱えて、一度黙り混む。
「作中作品『プロバンスの赤いしずく』がっ…
私、こっちを何とかしなきゃいけなかったのっ。
このままじゃ、3月終わっちゃうわ(;_;)」
作者は、一度ためてから叫んだ。
私は、プロバンスの赤いしずくを思いだし、つい、笑ってしまう。
まだまだ、我々の混乱は続きそうです。