時影、近代魔術を語る 129 ベルリンソナタ
静かな夜。私たちは暖かな部屋のソファーで並んで座りました。
楽しいひとときを彩るのは、佐藤隆さんのアルバム『甘い生活』です。
今年は、乱歩が小説家を目指してニート生活をした日から100年目。
普通なら、小説家を志して、と、書くところですが、ニートやら無職の主人公が活躍するweb小説の世界の話なので、わずか3ヶ月の共感できる期間を特筆したくなるのは、人情と言うものでしょう。
私の作者は、なろうライフも4年目に突入し、1円も稼げていませんが、
江戸川乱歩、さすが一流、3ヶ月くらいでニート生活ともお別れのようです。
やはり、才能がある人は違うのです。
が、生まれがどうあろうと、どんな人物だろうと、時が過ぎ、版権の切れた作品を遺産として受け継ぐことが出来るのです。
江戸川乱歩の作品も、そんなありがたい我々の遺産の一つであります。
そして、そんな作品の100周年に遭遇し、作品を新たに発表できる機会をいただける我々は、とても運が良いのだと思います。
「『ベルリン ソナタ』の閲覧回数が少し増えていたわ( ̄ー+ ̄)フッ
5200。私とは関係ないと思うけど、なんか、嬉しくて、創作意欲がわくわ。」
作者は、意味不明のどや顔で私を見ました。
「それは良かったですね。」
私は、少し呆れながらそう言った。
最近では、動画サイトの収益も、100万回数とかを数えなければもらえないようですし、
100アクセスくらいなら、自然に閲覧されたものでしょう。
でも、まあ、勘違いでも投稿習慣が戻るのは悪いことではありません。
「うん。でも、本当は、『ベルリン ソナタ』で、ホームズの二次小説を書きたかったのよね(-"-;)」
作者は難しい顔を作りますが、口角が楽しそうに歪んでします。
「シャーロック ホームズ関連は、最近、プロの方が頑張っていらっしゃいますし、最近は、アニメの影響で、大正ロマンが流行っているそうですから、乱歩、悪くないと思いますよ。」
私は、軽く作者のやる気をおす。
「そうね…、でも、乱歩じゃ、ベルリン関係ないし(-"-;)」
なにを今さら
私は、考えなしに新しい枠を作った作者を恨めしく見る。
「そんな事…今更ですよ。」
私があからさまにため息をつくと、作者はそれを見て笑う。
「あははっ。まあね。でも、乱歩と『ベルリンソナタ』今年やりたかったんだもん( ̄ー ̄)フッ
もう、四年目…
色々、後でやろうと我慢していたら、時だけが過ぎるし、他が進まないから、書きなぐるよ…
ボクサーのスパークリングみたいなもんよ…(T-T)
ものを書くのも、スポーツみたいに動かさないと、いざと言う時に、思うように動けないのよ…
と、言うことで、これは思いついた時に、思い付いたことを書くわ。」
と、作者は私をみる。
「今回の乱歩の二次作は、なろうファンタジーの練習にもなると思うの。
中身スカスカのテンプレ文で、面白くする…
なにしろ、乱歩をトレースするんだもん。面白くならないわけはないと思う。」
作者はそう言って楽しそうに笑う。
「なにも…そこまでして中身スカスカの文を作らなくても。
それを嫌う読者も多くいますし、あなたの読者層とは違うと思うのですよ。」私は、心配になりながらそう言った。
なにか、私の作者は『なろう系』のファンタジーを勘違いしている気がするのです。
そんな私に作者は、にやりと笑ってこう言った。
「でも、ここでの読みやすい文に挑戦してみるチャンスよ。
動画や掲示板では、『なろう系』の文章を良くは言わないけれど、これが読みやすいと感じる人が多いのは間違いないのよ。
中身スカスカで、内容が伝わる文章にするには、ちゃんとした文章をどう削ぎ落とすか?
このセンスが必要になるわけよ。
イメージとしては、大好きな絵師さんのイラスト作品が欲しい…みたいな感じで考えてみようと思うんだ。」
作者は楽しそうに笑った。
「絵師さんのイラスト作品…ですか。」
「うん。今、コミケも減って、絵師さんも仕事が大変だと思うわ。
二次作は、作者としての書籍化は望めないけど、
絵師さんのイラスト集として映える文章を作ることは出来ると思うんだ。
江戸川乱歩のファンは、沢山いるし、挿し絵を欲しがる人は結構いると思うのよ?
出来るだけ気にならない文章で、挿し絵にしたい部分を上手くセールス出来る文章。
まあ、私は、絵師さんとか知らないから、仮定だけど、そんなイメージで作ってみるつもり。」
作者は、そう言って笑った。
「なんでもいいですが、他もちゃんと進めてくださいよ?」
私は、少し呆れながら作者をみた。
これから、人気の異世界ファンタジーのカテゴリーに挑戦するので、やはり、少しばかり緊張しているのでしょうか?
「うん。出来ればネット大賞にも応募したいから、頑張るわ…(T-T)
と、言うか、定期的に吐き出さないと、話がなにも出てこなくなるんだもの。
今年は、結果を出したいわね…。」
作者は、泣きそうな笑い顔で怯えるように私を見ながらそう言った。