時影、近代魔術を語る 127 ベルリンソナタ
ここはプラハの小さなカフェ。
私と作者は午後のお茶を楽しみながら、物語の続きを考えているのです。
が、さっきから作者が難しい顔で考え込んだまま黙ってしまいました。
しばらく、新聞を片手に様子を見ていましたが、そろそろ限界です。
「コーヒーのお代わりを頼みましょうか?」
私は穏やかに声をかけた。 さっきから、空のカップの取っ手に触れていた右手に気がついて作者が私に照れ笑いをする。
「そうね(///∇///)いただくわ。」
作者はそう言って、深いため息をつく。
「どうしました?困りごとなら相談にのりますよ。」
私がそう言うと、作者は困ったように笑い、そして、話始めた。
「話が…出てこないのよっ。もうっ。ちょっと、頭の中で詰まっちゃって…
と、言うわけで、話させてもらうわ。
今年、2021年。私、二次作を始めようと思ってるのっ!!」
作者は、そう言ってしまうとスッキリしたように笑う。
「何の二次作をでしょうか?」
私は、彼女の書きたがっている二次作について考える。
『小説家になろう』では、原則、二次作を禁止していますが、版権の切れた作品や、特定の曲をイメージした物語。
歴史や童話、民話の類いは、二次作の設定をすることで投稿が可能になります。
私の作者も、色々とやりたい作品が頭にたまっているようです。
去年の春から、音声機能が上手く朗読ができる物語を書こうとしていました。
柳田国男先生の『日本の伝説』を考えていたのですが、音声機能、なかなか一筋縄では行かずに、頭の中で停止中ですが、
童話を書いて、またやりたくなったのかもしれませんし、
ルパンやホームズの版権、明智小五郎も二次小説が可能になりました。
気持ちが浮わついているのは知っていましたが、まずは、『魔法の呪文』を何とかしてもらいたいものです。
「乱歩……だって、来年は乱歩デビュー100周年なんだもん(>_<)(ダウト!1923年)
今から100年前、仕事やめて、実家のタバコ屋さんに転がり込んで、ニート生活をしながら作家になったらしいんだもん〜
プロフィールに親近感を感じるわ。
江戸川 乱歩って、なろう作家の先輩みたいじゃないの。」
「……。そんな事いってると、感想欄で乱歩ファンにしかられますからね。
大体、コメント返すの、苦手なんですから、無駄に読者に喧嘩を売るような話をしないでください。」
私が呆れて言うと、作者は口を尖らせて反論をする。
「あら、本物の乱歩ファンは、そんな無粋なことはしないわよ。
実際、私の子供の頃だって、大衆文学は、純文学の下に見られていたわ。
三文小説とか言われてね。
それに、うろ覚えだけど、新聞の連載などで小説を書いていた、乱歩先生は、大衆を楽しませる事に心を尽くしていらしたわよ。
世界恐慌で不景気になり、暗くなる社会情勢の中で、憂さ晴らしになるような、そんなお話を目指していたのがよくわかるもの。
乱歩と言えば、エロ・グロなんて言われるほどに、ね。
変な笛の音を聞いて裸になって倒れる令嬢とか、
裸で氷に閉じ込められる美女
パノラマ島のエロスの宴…
アドバルーンで逃走する怪人。
今読み返すと、なんだかおかしな設定もあるけど、それを踏み倒すような、勢いと、サービス精神が満載なんだもの。
読者だって、江戸川乱歩を目指して我々が話を作りたいと考えたって、何も考えないわよ。特に、私なんて
『まあ、がんばって。』程度でね。」
作者は、少しばかり自慢げに自虐ネタを私に言う。
「何を…『魔法の呪文』も『パラサイト』にも、ブックマークを外さずに待ってくれている読者がいるし、第一、お仲間のために小銭を稼ぐのでしょ?
あと、一万字で10万文字になるのですから、そう言うのは後にしてください。」
私は、深くため息をつく。
そんな私に作者は、眉間にシワを寄せて膨れっ面でにらむ。
「それ、わかるわよ…でも、基本、順番に話が出てくるわけでもないんだもん。
大体、この近代魔術…だって、一年は書いてるわ…
でも、この枠では、無駄文のままなんだもの。
そろそろ、ここで書いていたネタでお話も作りたいのよ…。」
「………。どんな話なのですか?」
私は、『魔法の呪文』に取り入れられるものなら、そちらに回せないかを考えながら聞いてみた。
すると、作者は少し穏やかな表情に戻る。
「題は決まっているの♪『ベルリン ソナタ』」
「ベルリン ソナタ…ですか?江戸川乱歩とどんな関係があるのですか?」
私は、同じ題名の佐藤隆さんの曲を思い出していた。 そんな私に恥ずかしそうに微笑しながら作者は答えた。
「うん、関係ないよ(^^ゞ
これは、ただの趣味で…
YouTubeの『ベルリンソナタ』のオフィシャルの視聴回数が5000くらいなんだよね( ̄〜 ̄;)
私、絶対、いい曲だと思うのに…って考えて、ふと、実験をしたくなったんだ。
『バタフライ エフェクト』の。」
作者は、照れ笑いを噛み殺しながら、媚を売るように私をみる。
「蝶翼作嵐……。」
「うん。私が『ベルリン ソナタ』で更新しても、対して影響はないでしょ?
普通はね。
でも、虫の羽ばたきのような小さな更新でも、人気サイトで名前が出た場合、向こうのサイトの視聴回数に変化が出るのか、出ないのか…。
これは、二次小説設定が必要だから、小銭稼ぎをしたい私は、あまりてを出したくない課題なんだけど、今年は、乱歩があるから、ついでに…ベルリンソナタも調べて見たくなってね(^^ゞ」
作者は平常心を装ってますが、赤面までは隠せていません。
全く…
「まあ、好きにすればいいですけど、ほどほどにお願いしますよ…(´ヘ`;)
完結しないで、企画を増やすと、未完が増えるのですからね。」
私の小言を明るく聞きながら、作者は嬉しそうに笑う。
「うん。週一くらいにするつもり。
ありがとう。おかげで、少し頭がスッキリしたわ(^-^)」
大丈夫でしょうか…
不安ではありますが、更新習慣が安定するなら、悪くはない申し出でもあるのですが……。
私は、少し不安になりながらも、やる気を見つけてきた作者に笑いかけました。