時影、近代魔術を語る 125
「ああ、もう…こっちも考えないとね。」
作者はため息をつく。
「まあ、あまり悩まずに、折角、『黄金の小路』を歩いているのですから、少しは散策を楽しみましょう。」
私は、カラフルな小さな家屋が建ち並ぶ、プラハ観光の人気スポットで作者の腕をとる。
「そうよね…。」
作者は、少しふさいだ顔をしていましたが、町並みに目を向けると、その可愛らしい情景に笑みを浮かべた。
「ええ、カフカの青い家を見に行きませんか?」
私は左腕を差し出して誘ってみる。
『変身』等で有名な作家、フランツ・カフカの住んでいた家がこの通りにあるのです。
「別に…いいわ(-"-;)
私、『なろう作家』しかも底辺だもん。
太宰治とか、カフカとか、固そうなのはやめておくよ(´ヘ`;)
まあ、去年の今頃は、X'masマーケットと一緒に色々調べて、楽しんだけどさ……。
思えば…この町並みから、話が泥沼化して行くのよね(T-T)
この『黄金の小路』は、職人やら狙撃兵なんかが住んでいた、日本の商店街のような、懐かしくも活気のある場所で、
プラハ出身のリリアの実家をこの辺りに設定したのよね。」
「はい。確か、お父さんがバイオリン職人でしたね。」
私は、『魔法の呪文』の『鐘』のマドンナ、リリアの物語を思い出す。
パガニーニの曲を選んだために、接点を持たせる必要上、バイオリン職人に決定したのでした。
プラハ、その近郊では、運の良いことにバイオリンが盛んで、職人も、演奏家も沢山いました。
「そう。ついでに、パガニーニの数奇な人生を使うことにしたから、パガニーニが生きている頃にエピソードを作らなきゃいけなくなっちゃって…
気がついたら、48年革命に巻き込まれたんだわ(T-T)」
作者は可愛らしい町並みを歩きながらため息をつく。
そうでした。
東欧、プラハの歴史は、繁栄と侵略の歴史でもあるのです。