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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
244/499

時影、近代魔術を語る 121

交響曲 第25番


それは、1984年に作成された『アマデウス』と言う映画を彩るモーツァルトの曲です。


ホムンクルスの少女は軽く会釈をしてバイオリンを構えると、演奏を始めた。

バイオリンのソロのそれは、シャープで孤高な雰囲気を醸しながら部屋を突き抜けるように響いて行く。

「さて、プラハの話を始めないと。

もう、一年たったし、なんとか解決しなきゃ。


でもっ、調べる度に色んな話を拾って…面倒になるのよ(T-T)


まあね、去年、扱いが面倒くさくなった『赤毛の錬金術師』とフランクを一気に片付けようと、『魔法の呪文』の『鐘』のマドンナ役をプラハの少女リリアにしたのは良いけど、

ここで、プラハを調べて…自分の頭の中で、数百年前の姿のまま、プラハが時を止めていたことに気がついたのよ。


東西冷戦時代の術師の効果で、近代のプラハの姿は私が知る事は無かったから。」

作者はそう言って、軽く渋い顔をした。


私は、暖炉の近くに座った作者に毛布をかけながら隣に座る。


作者は笑顔で私に礼をして、話を続ける。


「いいえ…意識しなかった、の方が正しいわね。

壁の向こうは、知ってはいけない恐ろしい闇。

社会主義国の残酷で、無惨な世界が広がっている。

と、無意識に思い込んでいたのよ。

テレビの旅番組とか、昔はプラハなんて無かったし、

社会主義国の撮影は命懸け…って、テレビは伝えていたんだもの。

でも…インターネットの時代になり、小説のために検索した世界は…


『プラハ』の言葉で飛び出した世界は……オーストリアとプラハの夢の東欧の旅プラン。


ビックリするような、美しい街並みと、灰色がかった青空の、アンニュイな世界。

いやぁ、川にかかるカレル橋とプラハ城を見たとき、始めに驚いたわ。

ソビエトの人が、あの美しい光景を壊さずに保持させていたことに!


私、自分の社会主義国とソビエトのイメージが、随分、歪んでるって思ったわ。

ソビエト人を無意識に、悪魔のように考えていたのね…

自分のあまりの考え違いに、プラハを守り続けたチェコの人達に頭が行くまで時間がかかったわ…。」

作者はそう言って顔を歪ませた。

私は、どう答えて良いのか、少し迷う。

「まあ…あの時代、物語においてのソ連の扱いは、酷かったですし、

007などのスパイものが流行りましたからね。

より派手に大袈裟に、悪者アピールがされたのでしょう。」

私は、今年10月に他界されたショーン・コネリーのボンドを思い出してしんみりする。


時が…時代が音もなく変わって行くのを、感じたからかもしれません。

(噂では、次の007は女性?とか。)


「そうね、80年代は、洗脳とかサブリミナルなんて言葉が流行って、自分は、関係ないとか考えていたけれど、

わりと、テレビや映画のフィクションのイメージで、勝手に作り上げた世界にいたのね、私(-_-)」

作者はそう言って深々とため息をついた。

それから、軽く身震いをして、自分の肩にかかった毛布を私にもかけて、微笑んでから続きを話はじめた。

「まあ…頭はこんがらかるけれど、この混乱こそが、四次元の感覚に違いないと、少し興味深くも感じているわ。」

「四次元…ですか。」

「そう、四次元。時間の歪んだ世界。


1984年公開された映画『アマデウス』の舞台は、1823年。

サリエリと言う老人の殺人の告白から始まるの。


それは、200年前の世界であり、1984年のプラハの街並みでもあるのよ。


私に認識がないから、それは200年前の中欧にしか見えないけれど、

でも、私が知らないだけで、社会主義共和国の…5年後にビロード革命で崩壊する前のプラハを見ていたのよね(ーー;)


私が映画を見ていた時代背景を考えると、量子パラドックスの世界に迷い混んだ気持ちになるのよ。」

作者がぼやくのを私は楽しく聞いていた。


量子パラドックスなんて、よく知りもしないで使うのだから。


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