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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 118

「私ね、はじめはフランクの事をしつこいなって思っていたの。」

作者は激しく窓を揺らすプラハの冬の風を聞きながら私の肩にもたれ掛かる。

「ひどい人ですね…。」

私は二人で毛布にくるまりながら呟いた。


小さな頃から愛した少女。

相手の成長を慈しみながら、二人で暮らす、そんな夢を長く夢見た青年にその言葉はないと思いました。

「だって、私は、メアリーの方に感情移入するんだもの。

女子だし

熟女だし…

私だって、色々、やり直したいことはあるわよ。

でも、今から17才なんて恋愛なんて面倒くさいわ。」

「また…面倒くさいとか言う。

その言葉は心を老化させるそうですよ。」

私は口を尖らせる作者を軽く睨んだ。

「だって、はぁ…。まあ、ね、最初はそうだったわ。

確かに、気持ちもオバチャンになってたから、


嫌われたんだろうから、さっさと諦めて次の恋でもしなさいよ。


なんて思ったわ。でも…色々調べてフランクの気持ちがわかってきたわよ。


ひい祖父(じい)さんは、ナポレオンを追い出すために戦い

祖父(じい)さんは48年革命に駆り出されてるだろうし、

お父さんは、普仏戦争。

叔母さんの婚約者はその時亡くなってるのよね(-_-;)


そんな環境で、お母さんも子供の頃に亡くなってるんだもんね。


自分の人生だって、刹那なイメージで暮らしてるんだと思うの、フランクは。

だから、メアリーとの家庭だって何年一緒に暮らせるか、分からないんだもんね…


浮気とか、そんなこと考える余裕は無いわよね(T-T)」

作者はそう言ってため息をついた。



『魔法の呪文』のパドゥ ドゥと言う話は、メアリーの身勝手な行動の軌道修正から入る。


童話において、社交界にデビューする時にだけ身に付けられるティアラは、貞節の象徴になる。


メアリーを愛し、慈しんだ家族やフランクの事を軽んじて、赤毛の錬金術師にティアラを渡したメアリーが許される為には、

残された人達の悲しみを知ることから始まる。



なんて、面倒な法則が無意識に働いている事に作者は苦笑いを漏らしていた。

それは、多分、彼女が小さな頃、そんな風に読み聞かせをしてくれた誰がいた事を思わせるからだ。


「どんなに混乱する世界でも、浮気をする人はするし、平和でも浮気しない人はしませんよ。

フランクは、おじいさんやお父さんの時代より穏やかな時代を生きていましたが、メアリー以外の女性を愛したりしませんし、


諦めるとしたら…それは、戦などで自分の寿命が短く、彼女が守れなくなったと、彼が悟ったときだけですよ。」

「(>_<。)やめてよぅ……。もう、めんど…いや、不幸になんてしないわよぅ。」

作者は渋いかおになる。

そうです、少しは脇役たちの気持ちを知るべきなのです。

「未完も……不幸と動議ですからね。」

私は念を押す。


「もう、でも…童話のハッピーエンドは難しいかもね。

今、色々、頭の中を整理してるけどさ、先が本気でわからないんだもん。」

作者は困ったようにから笑いをする。


確かに、この話は面倒なのです。

「でも、それは我々だって同じことです。

先はわからないけれど、それでも、良いことが有ることを信じて前進するのですからね。」

私はこの一年の混乱を思い返した。


友人に会えなくなったり、

音信不通になって混乱したり、

コロナ感染に怯えたり。


でも、先はどうであれ、我々は書き始めた限り、終わりを目指すのです。


素敵なハッピーエンドの物語と、

目的額を稼いで名古屋へと作者が出掛ける未来を目指して。


「まあ…頑張るわよ…。赤毛の錬金術師って、なんなのか分からないんだけどさ。


一万字の童話の登場人物としては重宝した彼は、長編になると厄介者でしか無かったわ。


だから、早めに何とかしたかったのよ。


私、歴史を知らないときは、メアリーとフェネジの旅物語にして、一話完結の物語を続けながら、フランクに赤毛の錬金術師を追跡させようとか考えていたんだ。


で、たまにニアミスとかしながら、お父さんにメアリーが再開してうやむやにいい感じに終わりたかった。


でも…なんか、無理そうだよね(;_;)


ルドルフ殿下は、父のヨーゼフ一世と折り合いがあまりよくなくて、

ビスマルクも好きじゃなかったみたいだもん。


まあ、ね、普奥戦争もあったから、仕方ないけどさ、ロシアやフランスと仲良くしてたのがヨーゼフ一世にばれちゃって、ひと悶着あったみたいなんだよね…マイヤーリンク事件の前に。

もうさ、私の頭の中では、うたかたの恋なんてロマンスは消滅してるよ…


はははん……


まあさ、とりあえず次は、プラハとリリアの話をするわ。


この辺りをまとめておかないと、話をつづけられないしね。」

作者はそう言って、私に寄りかかって目を閉じる。


「少しだけ眠ってもいいかしら?

なんか、少し疲れたわ。」


作者の言葉を聞きながら、私は作者を毛布でくるむように抱き締める。


急な嵐に外は寒く、風は強いとしても、

この人には、そんな憂いが届かないように。


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