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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
240/499

時影、近代魔術を語る 117

「ごめん、ちょっと『魔法の呪文』のフランクについて話したいわ。」

作者は私に暖かいココアを入れて、隣に座るとそう言った。


「フランク…。確かに、彼が話を面倒にしたキャラですからね。」

私は貰ったココアを手に、脇役のフランクについて思い返した。


「そう。でも、彼が悪いとも言えないのよね(T-T)


私が、物語について慣れていなくて、初めの設定で、少女小説のタブーについて、考えが及ばなかったのがあるのよ。」

作者は遠い目で一年前を思い返していた。


「少女小説のタブー。

幼馴染みの恋人…ですよね。確かに、七転八倒していましたね。」

私は、その時の作者を思い出して笑った。


作者は私の笑い顔を不機嫌そうににらんで、

「笑い事じゃないわよっ。

大体、この話は、音無作のシュールな物語になるはずだったのよ。

トトは、魔法の呪文にとりつかれて、物欲に飲まれて潰れるはずだったんだもん。

メアリーだって、悪者の魔女…みたいな役だったのにさっ。


気がついたら、なんだか、ほのぼのエンドになるし…


私は、初めの年、ブックマークが剥がれない作品には、何か、アンコールを書こうと考えていたわ。


短編なんだから、読み終わったら、ブックマークを外していいと思っていたし、

その為の設定としてね、消してもいいって言いたかったのよ。


だから、一話目の『魔法の呪文』には、アンコール用の別のエンディングを用意していたの。」

作者は、少し懐かしそうに目を細めた。


「そのエンディングなら、私も知っていますよ。


数年後、トトが恋する乙女に変わる頃、

大好きなロマン作家から手紙がくるのですよね?」

「うん。トトは彼女にファンレターを送り、

作家はトトを屋敷に招待するの。」

作者は、そのエンディングを思い出して嬉しそうに目を細めた。

「招待されて訪れたスイスの屋敷で、トトが見た女流作家はメアリーなのでしたね。」

私も物語に軽く酔う。


この筋は、昭和によくあったパターン…テンプレと呼ばれるものでしょうか。

何度も使われた終わりかたではありますが、

最近のラノベでは、あまり見かけなくなったので、

昭和の少女漫画を愛する…少女戻りをしたかった作者には、懐かしさと共に刺激的な終わり方だったのです。


メアリーは、カールと結婚し、世界を旅して物語を書いて有名な作家になっていたのでした。


「そうね…(T-T)

確かに、そんな感じだったわね(T^T)

もう…使えないけどねっ。」

作者は悔しそうにぼやいた。

「カール……他の女性と婚約しましたからね。」

私は、物語を思い出してため息をつく。

「仕方ないでしょ…

あのエンディングは使えなかったんだもの。


フランク…彼を無視してこのエンディングで話を詳しく作るとなると、後味が悪くなるんだもの。」

作者は渋い顔をした。


「幼馴染みの恋人は特別…の法則ですね?

まあ、令和の少年少女には、あまり関係なさそうですが、我々は親に買ってもらう感じで考えていましたからね、

幼馴染みの恋人を丸無視するのは、あまり、よろしくないですからね。」

私の台詞に、作者は口を真一文字につぐんで奥歯を噛み締める。


「ええ。書いているときはフランクなんて名前だけしか無かったのよ。


書き終わってから、後読感とか、倫理について考えたのよ。


そう、夢見る少女の恋愛の世界で、子供の頃から主人公を純粋に愛し続けた少年を、名前だけで丸無視なんて、やっては行けないことなんだわっ。」

作者は、深くため息をつく。

それは、この一年の迷走の物語でもあるのだ。


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