表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
237/499

時影、近代魔術を語る 114

バイオリン弾きは演奏が終わるとテーブルの小銭をポケットにしまい、我々の席を離れた。


作者は、温かい紅茶の入ったカップで手を暖めている。

「どうしました?」

私が優しく聞くと、作者は夢から覚めたような気だるい表情で私をみた。


「ん?なんか、疲れちゃって……

ホント、面倒くさい時代に関わったわね(T-T)


このカフェの数話だけで話がめぐるめくる(;_;)」

作者は渋い顔をして、手にした紅茶を飲み干した。


「そうですね…。」

私は、作者がまた、へんな追加を思い付いたことを悟って呟いた。


作者は、紅茶の香りを無言で楽しみながら、しばらくして私に話しかけてきた。


「ふふっ。確かに、良い意味でも、悪い意味でも、考察は物語の世界を広げるわね。


去年は、ナポレオンの大陸封鎖だってチンプンカンプンだったのに、

二順目に読む臼井隆一郎先生本は、プロセインの色々が加わった世界観を楽しめたもの。」

作者は、疲れたように弱々しく笑う。


「プロセイン…。ヴィルヘイム一世やビスマルクの事ですね。」

私は、『薔薇は美しく散る』と言う名曲と共に繰り広げられたヴィルヘイム1世の物語を思い出す。


ナポレオンをしりぞけ、1814年鉄十字章をうけたヴィルヘイム1世は、

1848年革命でイギリスに亡命をするのです。


ショパンやリストの混乱に、『通り魔』に続くかもしれないプロセインの混乱の影が見えます。


本当に……一つ一つ片付ける事が出来ない作者のイライラを思ってため息が出ます。


「うん……まあ、そこまでは想定してた(T-T)


でもさ、エンガーディーンなんて人達の事なんて、考えもしてなかったわ…


二順目の臼井先生のお話で、なんでネスカフェはスイスの会社なのにドイツのイメージなのか、少し理解できた気がしたわ。


スイスの人達が、プロセインのでカフェを広めたからなのね。


なんて考えて、今、ネスレのサイトを確認してたらさ、そんなに単純でもないらしいね。」

作者は苦笑する。


どうも、ネスレの創業者アンリ・ネスレさんは、スイスのれん乳の会社から始めたそうで、1913年に横浜に日本支店を開設したのだそうです。


終戦後、コーヒーは日本でも高級品で、インスタントコーヒーでも、昭和40年代までは、手軽な飲み物とまではいきませんでした。

種類も現在のように豊富ではなく、

あの黒いキャップのネスカフェのインスタントコーヒーは手軽ななかにも、お洒落な飲み物だった時期があるのです。


「そうですね。調べてみないと分からないものです。」

「うん……。まあ、それは良いんだけどね、

プロセインで、スイスを一大保養地に変えるほど金儲けをスイスの人が出来たとすると、ここで、また一つ、面倒を拾うことになるんだわ(T_T)」

作者は、遠い目で天井を見つめる。


「面倒…と、言うと、『通り魔』関係の、ですか?」

私は、また増加しそうな未完を思って苦笑する。

なにか一つ、なんとか完結できれば良いのですが。

「かな…(-"-;)分からないわっ。


でもね、ネスレは違うみたいだけど、

エンガーディーンの菓子職人の人達は、ヴェネチアから、新しい市場を求めてプロセインで成功するのよね?


パガニーニがすんでいたジェノバは、この時代、フランス領だったのよね?


レクスを調べる時に、塩野七生先生にジェノバとヴェネチアは、中世には、ライバル関係だって教えてもらったんだけど、

イタリアに統一する前の混乱した世の中で、

ジェノバとヴェネチアの関係者が、ここでフランスとプロセインに別れて潜伏していた訳よね?」

作者は困ったような崩れた笑いを浮かべて私をみた。

「でも、ヴェネチアと言ってもエンガーディーンの菓子職人は、スイス人だって自分でも言ってますよね?

考えすぎでこじつけてる気がしますよ?」

私は、膨れる話と作者の話をクールダウンさせようとした。


そんな私に嫌そうな苦笑いを浮かべながら、

「でもね、思い出してみてよ、『魔法の呪文』」

と言う。

「パガニーニの物語『鐘』ですよね?」

「そう、パガニーニの『イル カノーネ』を内緒で借りて紛失したのを探してるのよね?

バイオリンを貸したのはジェノバね。

で、メアリーとフランクは何か分からないけど、陰謀に巻き込まれていて、


メアリーは、謎のヴェネチア人から仮面舞踏会用のマスクを購入していて……

確か、クグロフ家の探偵さんが因果関係を調べているわよね?」

作者は、目まぐるしく頭と視線を動かしながら、自分を説得するように話しかけてくる。

「確かに、あの物語の結末…まだ決まっていませんでしたね。」

私も嫌な予感が胸に込み上げてきた。

「ふふっ(T-T)

もうさ、あの話、マイヤーリンクの一年前にほぼ決定じゃん?

1888年…多分、ヴィナーオーパンバルって、1月か、2月でしょ?

ヴィルヘイム1世が崩御するのが3月よね……


1861年にサルディーニャ王がイタリア王国を樹立するんだけど、でも、色々とありそうよね…


1898年にイタリア人に暗殺されるエリーザベト。

彼女もイタリアの島とかに別荘作ったり、独立を応援しようとしてみたり、

なんか、きな臭いんだよね……。

ふふふっ(T-T)どうしよう?」

作者は、苦笑いをしながら私を見つめる。


冬の…大賞までに『パラサイト』を完成させたいのです。


冬には童話もあるでしょうし、

他にも未完が山積みです。




でも、やはり、

イタリア近代史…調べる事になるのでしょうね。


私は、もう一度バイオリン弾きを呼び戻し、

『ケセラセラ』でも陽気に弾いて欲しい衝動にかられながら、

三倍めのコーヒーを濃いめで頼んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ