時影、近代魔術を語る 106
「なんかさ、色々引っ掛かってきたじゃない?
で、バイオリンのルーツとかに当たったでしょ?」
「中国の馬頭琴でしたか。」
私は、作者とバイオリンについて調べた事を思い出す。
「うん。トランシルバニアのジプシーの物語にもバイオリンの起源があったね。
リリアがプラハの人設定だから、プラハを調べたら、結構、プラハではメジャーな楽器で、路上で演奏する『ジプシーバイオリン』なんてワードまで見つけたわ。
日本のイメージだと、バイオリンは高額で、金持ちの扱う楽器だと思うんだけど、それじゃあダメだと思うのよ。」
作者はそう言って私を見た。
「何を思いついたのですか?」
私は、ラウドネスからの流れを思って苦笑する。
さて、どうやってヘヴィメタルに接続してくれるのでしょう?
「ギターよ。クラッシックギター。
戦後、まだ、ラジオもお高い時代、なんだか普及したのがギターなのよ。
家にもあったんだから( ̄〜 ̄;)
レコードも高いし、郊外に持ち出せなかったから、
若者の音楽シーンを担ったのは、歌本とギター。
『おお牧場はみどり』とか、『アルプス一万尺』とかを歌って山に海にと楽しんだ時代があるのよ〜
書いていて、ちょっぴり恥ずかしい気がするけど。」
作者はそう言って苦笑する。
「イメージとしては、映画『サウンドオブミュージック』の方が、おもいうかべやすいでしょうか。」
「外国の物語だけど…まあ、そっちのが、格好はいいか。
まあ、日本でもアコーステックギターが流行っていて、貧乏人でも持っていたのよ。
それが、ラジオ・テレビの普及で、人は、演奏する側から、視聴する側にかわり、グループサウンズの人気で、ギターもテレビのスターの持ち物になってゆくわ。
宮廷演奏用に作られたストラヴィバリウスから、より音の響くものにバイオリンが改良されたように、
交通網の発達で、人をより集められるようになった開場に響くように、ギターにはアンプが取り付けられるようになるわ。
エレキギターの時代が始まるのよ。
ベンチャーズと若大将にはギリついてこられた人達も、80年代日本に現れたヘヴィメタルの音には、さすがにドン引きする人も現れたわ。
悪魔のような出で立ちで、重低音を響かせて、とんでもないほど早い動きで弦をかき鳴らすんだもの。
普通の大人はついてこれなかったのよ。
パガニーニの似顔絵を見ると、モーニングでバイオリンを弾いてるから、なんか、上品なイメージに思えるんだけど、
口から火を吹いたりはしなかったけど、バイオリンの弦を演奏しながら切ったり、パフォーマーだったパガニーニは、寧ろ、ラウドネスをはじめて見た時の衝撃の方が、当時の人の印象に近かったと思うのよ。
で、家財を売り払ってパガニーニのコンサートを聴きに行ったとwikipediaに記させるシューベルトなんかは、二宮金次郎のような学術的な動機というより、
前回の哲也のような、もっとミーハーな気持ちだったと思うわけよ。
本当かどうかは分からないけど、私は、なろうの作家だもん。
読者が着いて来てくれそうな方向で話を作るわ。
ラウドネスは、偉大だったのよ( ̄〜 ̄;)
ヘヴィメタルは、語れるほどは知らないけど、
小学時代に音楽の成績なんて私より悪くて、
縦笛なんて、チャンバラの道具位にしか思っていなかった男子を
いきなり楽譜を読んで、コードを知り、ギターが弾ける…
学園祭で演奏できるまでに仕立てちゃったんだから。
すごい人たちだったのよ
秀夫と哲也は、きっと、学園祭で音楽生活を終わらせちゃうけど、
ショパンとリストは、100年語られる音楽家になるんだわ。
でも、はじめから古典なんて人は居ないんだわ。
ショパンやリストだって、若いときは哲也や秀夫見たいな、青臭い時代があったのよ。」
作者はそう言って、代わり始めた自分の19世紀に思いを馳せるように目を閉じた。
「でも…秀夫や哲也の音楽生活も、終わってないかもしれませんよ?
ほら、貴女がフリマをするときにやって来る、ヘヴィメタバンドの人のように、恐らく、地元のイベントで元気に演奏しているんじゃ、ないでしょうか?」
私は、ちょい役として消えて行く哲也と秀夫が楽しそうにバンドを再編成するエンディングを思い浮かべた。
すると、作者は渋いかおで私を見る。
「あれ…演奏されると客が消えるんだよね(T-T)
年寄りと子供が客層だった私たちには、天敵だったわ。」
作者は渋いかおで昔を思い出していた。
「ホント、あの人たちがギターをかき鳴らした瞬間、ジジババが一斉に大移動するのよ(T-T)
そこからの絶叫でしょ(;O;)
ホント、地獄の歌だって、当時はステージを睨んで思ったものよ。
でも、イベントは減ってるけど、ネット動画とかで頑張って欲しいわ。」
作者は、そう言って寂しそうに笑った。