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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 96

「時影…あんた、わざとでしょ?」

作者は不機嫌そうに、私が選曲した都はるみさんの曲を止めました。


「わざとって…昭和のセーターを編む歌と言ったら、この曲を思い浮かべる方が多いと思いますよ?」

私は困ったように作者を見た。

実際、作者も同じ曲しか思い浮かばなかったのだ。

「違うわよぅ(;_;)

あの曲って、もっと大人で、悲恋で重い感じじゃない?

でも、少女小説なんだから、もっと、キャッキャうふふな軽い感じで…


何て言うのかな?

めぐみちゃんって感じのロングヘアーの女の子が、近所の年上の『お兄ちゃん』に、

初めてのバレンタインのプレゼントをする…みたいな。


何にしても、演歌じゃないわ、情念の演歌なんかじゃ(;O;)」


作者は叫び出しましたが、私は()に落ちません。


「アラン模様…つまり、フィッシャーマンズ・セーターの話ですよね?」

私は作者に確認する。

「そうよ。もうっ、これ、歴史のカテゴリーなんだから、変な前置きはみじかくしようよ…。

昭和の少女の夢と一途な想いを…、

好きな気持ちを図案にひそませて、編み上げるセーターの、

そんな話を書きたかったって、それだけの話なんだから。」

作者はもどかしそうに眉を寄せて私を睨む。


「でも、歴史のカテゴリーだからこそ、ここは譲れませんよ。


フィッシャーマンズ・セーターは、

アイルランドのアラン諸島を発祥とする、漁業を行う男性の仕事着として発達したはずです。

防寒着としてはもとより、その独特の模様で、冬の海で遭難したときも、

個人の識別を目的とした…

つまり、これは海の男の作業服であり、

当時、『兄弟船』『北の漁場』など、海の男の、心意気を歌い、支持されてきた演歌こそ、フィッシャーマンズ・セーターにふさわしいと言えるのではありませんか?」


私は、『魔法の呪文』のチョイ役のジョージを思った。

脇役を語るストーリーテラの役もある私からすれば、正月の短い話のキャラと言っても、

19世紀のアイルランドに生を受け、

荒れ野に咲くヒースの花のように、強く誠実に生き抜いたジョージの数少ない出番なのですから、

ちゃんと見てあげて欲しいのです。


確かに、ジョージは少女漫画に登場するような優男ではありませんが、


でも、貧しい家計を助け、兄弟たちやフランク一家に誠実に接した優しい男性です。


女性と付き合うのは苦手で、結婚は出来ませんでしたが、沢山の人達に愛された存在です。


「きっ………、『北の漁場』って(-_-;)

もう、私、山本譲二さんの歌しか思い浮かばないわ(T-T)」

作者はそう言って、タブレットで検索した

山本譲二さんの歌う『北の漁場』を聞き入っていた。


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