時影、近代魔術を語る番外グッバイベン
『大予言』の著者の五島勉先生が6月にこの世を去りました。
慎んでご冥福をお祈りしますm(__)m
「と、言うわけで、番外で五島先生の話をしようと思うのよ。
ここは、歴史のカテゴリーだけど、こんな、三十万字の設定文を晒すはめになったのは、ノストラダムスなんかに手を出したからだし、突き詰めれば、これだって、五島先生の影響なんですもの。」
作者は朝日を浴びながら、少し、不機嫌そうに私に話した。
まあ、仕方ない。
政府はGO Toと言うけれど、各家庭はコロナの感染者が増えて、緊急事態宣言が発動だ。
少なくとも、作者はステイホームと言われてしまった。
とにかく、お盆が終わるまでは大人しくしていろ、と、言うわけだ。
コロナがあるから、お盆前に休みを取ったというのに……。
ステイホームじゃ、仕方ない。
ガッカリしていると、ネットニュースで、訃報を知ったのだ。
五島 勉先生の訃報を。
「付き合いますよ。」
私は、作者のとなりについて川沿いの遊歩道を歩く。
ひとの居ない午前の川岸から、涼しげな風が清流と戯れながら流れてくる。
「ありがとう。
私にとって、五島先生は、子供の頃に遊んでくれた素敵なセンセイであり、
その文章で翻弄したインチキオヤジでもあるわ。
亡くなった事は悲しいけれど、少し、辛辣になっても許してほしいわ。」
作者は、複雑な表情でこう言った。
「まあ…しかたありませんね。
これで、ルシフェロンについても、
ニーベルンゲン復讐騎士団についても、謎のままですからね。」
私は肩をすくめた。
この近代魔術……にしても、一年をかけ、五島先生に教えて貰ったヒトラーの謎の答えを探しているのですが、見つからないのです。
「そうよね…、これでもう、ニーベルンゲン復讐騎士団が、史実なのか、創作なのか、分からなくなったもの(-"-;)
でも、ビジネス本のカテゴリーで書かれていたのだから、参考資料に載せておけば、使えるのかしら?
ニーベルンゲン復讐騎士団。
まあ、さすがに、身内の人も、書いたところで著作権で訴えたりしないだろうけど……。」
作者は苦いかおをした。
「それ、ドイツ帝国の話で、ヒムラーが憧れたなら、ドイツ騎士団の方が正しいと、言ってませんでしたか?」
私は呆れながら言う。
「そうよ、プロセイン帝国の話を考えたら、そうなるわよ?
でも、それじゃあ、私のニーベルンゲン復讐騎士団に翻弄された歳月が、全くの無駄みたいじゃない。
少ないこずかいで、あんな大人の本を買ってさ、大人の素晴らしい知識を身に付けたと喜んでいたのに、よ?
『うっそぴょーん』
なんて言われても、納得できないわよっ。
こうなったら、私も、子供達をだまくらかしたいわよぅ。」
作者は嬉しそうに駄々をこねる。
「……子供を騙しちゃ…ダメでしょうに。」
「あら、ファンタジーなんて、騙されてナンボ、でしょ?
私だって、色々騙されて大人になったわ。
冷蔵庫の卵を温めたらひよこが生まれるとか。
満月の夜に呪文を唱えて髪をとかすと妖精の王子さまにあえるとか、ね。
今考えると、妖精の王子に会ってどうしたかったのか、よく分からないけど、
こうやって、騙されながら大人になって行くんだもの。
確かに、五島先生はニーベルンゲン復讐騎士団なんて、嘘を書いたのかもしれないわ。
でも、ね、
五島先生の本が一番、ジークフリートの物語を理解させてもくれたのよ?
アーサー王伝説とならぶ、騎士道ファンタジーの基本のお話のドアを私に下さったのだわ。」
作者は遊歩道の端で、風に揺られて挨拶するヨメナの花に挨拶を返しながら言った。
つい、この間まで、グレンダイザーの主人公の名前をアーサー王系列と間違えていたのに。
なんて、無粋なことは申しますまい。
「そうですね。私たちには、素敵な出会いをもたらす本ですからね。」
私も薄紫のヨメナの花に挨拶をしながら返事を返した。
実際、はじめの時点で、ノストラダムスで引っ掛からなければ、
私が再び、この人の横でこうして花を愛でる事はなかったでしょう。
確かに、私にも、五島先生の著作は、素敵な出会いをもたらしてくださったのです。
慎んでご冥福をお祈りします。