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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 90 黒ユリ伝説

「そう。あの香り高いカサブランカですら、嫌いな人からすれば、すぐに袋に入れてゴミ箱に放りたい衝動にかられるのよ?


黒ユリは、川端康成が『嫌な女の生臭い匂い』なんて表現したらしいもの。


一輪でも、物凄い匂いがしたと思うのよ?


それを大量に部屋に持ち込んだら、さすがにねねだって、部屋に行く前に気がつくし、多分、臭くてそんなところに居られないわ。

淀君だって、ねねに恥をかかせる前に、『嫌な女の生臭い匂い』が充満していると、ねねに逆手をとられて笑われるに違いないもの。やらないでしょ?」

作者は、匂いに顔をしかめるねねと、そんな生臭い部屋で必死に我慢する淀君と側使いの娘を想像して笑いだした。


「しかし、染め粉として使えば、珍しくも美しい翡翠のような晴れやかな緑の布になるのですからね。


確かに、アイヌの伝説では、愛しい人に思いを伝える花と言われているようですが、やはり、匂いのせいか、バラのように差し出すのではなく、

好きな相手のそっと側に置いて気がついてもらうみたいですからね。


成政だって、なかなか生花を渡すのは、勇気がいたに違いありません。」

私の言葉に、作者も頷く。

「翡翠色ねぇ…。確かに、糸魚川は翡翠の産地ですもの。

信州に人脈のある成政がねねに囁くには、素敵なキャッチコピーだわ。


でも、wikipediaだと、奈良時代から日本では翡翠の人気は無くなったのですって。

糸魚川が翡翠の産地として再び注目されるのは、1938年。東北帝国大学の先生が見つけるまで待たなくてはいけないらしいわ。


まあ、翡翠と書いてカワセミと読むし、東西どの国でも、緑色の宝石は人気があったみたいだし、

コロナで観光業も大変みたいだから、

ここは、翡翠と糸魚川で、ばーんと盛りましょうか。て、私の作品じゃ、イマイチ影響力は無いんだけどね。」

作者は舌を出して笑い、私もつられて笑った。


「10人は黒ユリ染めを知りましたよ。

まあ、ゼロよりはヨシとしましょう。」

私はいい気持ちでコーヒーを飲む。


穏やかな気持ちの中で、珍しい反物を取り寄せられて喜ぶ成政を想像した。


「領地を無くして、お伽衆になった成政。

黒ユリ伝説もあって、左遷されたのかと思ったわ。」

作者はタブレットを見つめながらぼやく。

「領地を没収されたのだから、左遷でいいのではありませんか?」

「うん…もうね、この記事事態は脱線ネタだし、早く終わらせたいんだけど、

成政って、秀吉の側仕えになるときに、『羽柴』の姓を貰ったらしいのよ(-"-;)

この頃、秀吉は『豊臣』を名乗るんだけれどね、

羽柴は、昔、取り立ててくれた上司から貰った名前で、

天下を手中にした出世姓でしょ?

名前を大切にしていた戦国武将が、嫌なやつに自分の姓をあげたりしないと思うのよ。」

そう言って、作者は『羽柴』を検索し始める。


そして、本の紹介の画面を出した。


『羽柴を名乗った人々』KADOKAWAの出版で黒田基樹著の本である。


「この、作者の黒田先生、とにかく、秀吉から羽柴の姓を貰った人たちを淡々と調べて、そのデーターから、何かを導き出したらしいわ。

私は、本は読んでいないけど、サイトの説明書きで、色々教えて貰ったわ。


まあ、その説明によると、『羽柴』の姓を貰った人達は、それなりに秀吉に好かれた人か、豊臣政権に必要な人であって、

成政は、黒ユリ伝説で語られるように、落ちていったとも言えないと思うのよ。


ここで、秀吉に子供がいなかった理由が、なんだか分かった気がしたわ。」

作者はため息をつく。


「あなたは、物語を複雑にする天才ですよね?」

私は呆れる。


黒ユリ伝説の記事は、予定3000文字だった。


まあ、それを言ったら『無人駅』もそうだったのだが…、ここに来て、成政の立場を変えたら、話が複雑になってしまうし、終わらない。


「天才かぁ…、小学生以来だわ。そんな風にいわれたの。ま、誉め言葉と受けとるわよ(T-T)


私だって、面倒くさいわよ。

でも、ここで、成政と秀吉を比べるとね、

秀吉は

子供を作れなかったのではなく

あえて、子供を作らなかったのでは無いかと思ったわ。

そうする事で、黒ユリ伝説のような、女の戦いを防げるし、政治に能力の無い家族と言う不純物が混ざらなくなるし、

姓を貰った人物は、自分が秀吉の跡継ぎのチャンスが出てくるじゃない?

ある意味、民主国家のように流れていたのかもしれないわ。


成政も『羽柴』の姓を貰って、まだ、出世街道を諦めてはいなかった、とも言えるわけよ。


ああっ。面倒くさいわ。

まあ、さ、黒ユリ伝説なんて、伝説だし、

江戸時代に色々着色されてそうだしね。

『なろう』のヒストリー見たいに、自分の夢を乗っけてさ、江戸の歴史作家も自由に創作してさ、なんか、それが流行っちゃったり、信じられたりしてるのかもしれないけどね、


今、私が考える事では無い気がするわ。

ストーリーラインがずれちゃうもん。」

作者の文句を聞きながら、私は楽しくなる。さて、この話、どうやって、もとの流れに乗せましょうか?


「その設定なら、逆転を狙って、命がけで黒ユリの秘密をばらしてもねねに取り入ろうと成政が考えてもいけるのではありませんか?


美しい翡翠色の反物を手に。成政がねねを訪ねるのです。


きっと、ねねは、その色みの美しさに見惚れてくれるでしょうね。」


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