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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 89 黒ユリ伝説

穏やかな午後が静かに流れて行きます。


作者はFiy me To the Moon のピアノ演奏をかけて音楽にあわせて言葉を紡ぎ出す。

「黒ユリについて調べてみたわ。

でも、弟切草のような薬効成分は検索できなかったわ。

でも、面白い情報を拾ったわ。

牛首紬と言う染め物に黒ユリは使われているらしいわ。

なんでも、緑の染色を単体で行える植物は、無い…と、言い切って良さそうなのよ。黒ユリ以外は、ね。

まあ、近年の牛首紬の職人さんが、現在の黒ユリ染めを確立したみたいなんだけど、言い伝えはあったようなので、まあ、ねね達のお話にもそんな感じで取り入れるわ。」

作者はそう言って、物語を整えるように軽く目を伏せた。


「牛首紬黒ユリ染め…現在では絶滅危惧種の黒ユリですから、とても希少…と、書かれていましたね。

栽培された黒ユリを使ったとしても、大量に黒ユリが必要なので、生産数が少ないとか。」

「うん。絹のなかでも、ヤママユ蛾の糸で作る天蚕糸(てぐすいと)は、高級品だと言われているわ。

淡いエメラルド色で、美しく丈夫なの。

金の価値があるとか、何かの本では誉めていたわ。

黒ユリの萌木色の糸も、人工染料なんて無い時代、同じくらいか、それ以上に希少だったと思うのよ?


そして、今回、とても勉強になったのは、資料の調べ方についてよ。」

作者は嬉しそうに笑う。


「なにか、すごい資料なんてありましたか?」

私は、ネットを検索する作者を思い浮かべた。


この人の場合、とりあえず、wikipediaを調べてから、脱線しまくるスタイルで、時には、別の話に飛んでしまうのです。


「凄い資料というか、黒ユリなんて、後付けだったじゃない?

夏の高山植物で検索して、たまたまヒットしたのよね?

だから、呪いの伝説の前に、園芸家のblogとかを見ていたから、黒ユリが臭いって分かったのよ。


これを知ってるか、知らないかで、ここからのねねと淀の物語の見方が変わるのよ。」


作者はいたずらっぽく私に笑いかけ、

私も、少し芝居がかった甘い声で、黒ユリ伝説を語ります。


早百合と成政の話は、前回しましたが、

これはその後の話です。

本能寺の変から、転がるようにツキから見放される成政。

とうとう、秀吉に領地を没収されてしまいます。


一国の領主として名を成した成政でしたが、秀吉を楽しませる芸人…お伽衆にまで落ち、

そんな成政は、恐妻家の秀吉の正妻ねねのご機嫌とりに、珍しい高山植物『黒ユリ』を渡すのです。


珍しい花を貰って喜んだねねが、淀君の所へそれをもって行くと、

事前にそれを知っていた淀君は、沢山の黒ユリを飾り、ねねに恥をかかせました。


ねねは、成政に恥をかかされたと怒り、成政は後に一揆を食い止められずに切腹するのです。




「よかったわよ(^-^)時影。

で、この話、ここまで読んだ人はおかしいと感じると思うのよ。」

作者はニヤリと笑う。


「さすがに、私にもわかります。

どうして、臭い黒ユリを淀君が沢山飾ったのか?と。

でも、淀君の話は、後に書き加えられたフィクションだとか。」

私は得意顔の作者に言いました。


「そうね、まあ、黒ユリ伝説自体も怪しいんだけど、でもね、例えフィクションだとしても、これを付け加えた人物は、なかなかセンスがあると…

この話を読んでくださっている日本史好きの読者の方も思ったに違いないわよ(^-^)v

確かに、匂いに気がつけなかったのはイタイけれど、これによって、このエピソードは改編することになるわ。」

「くさい生花の黒ユリの話から、現在でも希少価値のある高級布、萌木色の黒ユリ染めの反物に、ですね。」

私は、楽しくなってくる。

二人で歴史の物語を、誰も知らない物語をつまびらく…この楽しみは格別なのです。


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