時影、近代魔術を語る 80
月の美しい夜…、2階の作者の自室の窓を開けて美しい月を二人で眺めています。
手には旨い酒。
遠くからは夏を待ち焦がれるカエルの恋の歌が聞こえてきます。
少し酔ったのか、何度か作者はあくびをして目を擦ると場の空気を変えるためにスマホを取り出して動画を再生し始めした。
柏原芳枝さんの『A・r・i・e・s』
この曲は、1987年放送の『アリエスの乙女たち』と言うドラマの主題歌でもあった。
異母姉妹の牡羊座の姉妹の激しく情熱的な少女達の恋愛ドラマである。
作者の作った動画には、この曲のイントロに合わせてブランデンブルグ門が朝日を背にそびえ立ち、
その門から髭を蓄えたヴィルヘイム1世とビスマルクが黒の王子さまが着るような軍服…チェニック姿で手をつないで登場し、
でかでかと現れた手書きのタイトルに
『アリエスの親父たち』
と書かれていた。
全く…。
こう言う言葉遊びを『おやじギャグ』と言いますが、オバサンでも好きなのでしょうか?
かつて城壁で囲まれた城郭都市だったベルリンは、1734年にその役目を終えて交易都市としてリニューアルをする。
城壁の代わりに作られたのは関税門。
14から18の門が作られたそうです。
なかでもブランデンブルグ門は、ベルリンがブランデンブルグ辺境伯国だった頃の首都、ブランデンブルグへの道として名付けられ、王の通る門としての役割があった。
この門は『平和門』として作成されたそうだが、後にナポレオンが、派手な凱旋をここを舞台に繰り広げ、それを真似たヒトラーと共に、何だか独裁者の凱旋舞台のようなイメージがついてしまう。
しかし…ヴィルヘイム1世とビスマルクには、この門は王宮への入り口であり、これから帝都として栄える都市への希望の門に違いない。
門の屋根の上には、かつてナポレオンに奪われた四頭だてのギリシアの馬車、クアトリガに乗って、勝利のオリーブに鉄十字を新装備した麗しき勝利の女神、ビクトリアもフランスから凱旋を果たしている。
幸せそうな画像ではあるが…
いくらパロディでも、皇帝と宰相が手に手をとる姿はいただけない。
「なんですか、これはっ。」
私の言葉の意味など考えてもみない作者は嬉しそうに頷きながらこう言った。
「うんっ、ビックリだよね!この曲、なんか、ビスマルクの生涯にもなんかあってるんだよっヽ(≧▽≦)/
やっぱ、阿久悠先生って天才だよね!
この曲は、作詞は阿久悠先生でね、牡羊座の乙女についてうたっているんだけど、ヴィルヘイム1世とビスマルクも牡羊座。
アリエスの親父なんだよ。
で、なんか、曲にあってるって事は、この曲は牡羊座の性格を的確に言い当ててるって言えるんじゃないかしら?」
全く、派手な現実逃避を始めたものです。
「そうですか?では、私もひとつ、やってみますよ?」
そう言って、私は曲を再生し、美しい花の丘から二人の男性を歩かせてみた。
「(○_○)!!そうきたか…。」
作者は2000年前の二人の偉人にため息をつく。
花畑から歩いてきたのはイエスさまとお釈迦様
どちらも牡羊座。
アリエスの教祖たちなのです。
まあ、イエスさまの誕生日は諸説ありますが、
それを言われても、ゴッホにザビエル、五十六と、アリエスの男たちは、バリエーションが豊富です。
「………。確かに、漫画で見たようなカップルリングに、星占いの限界を見る気持ちになるわね(-"-;)」
作者は言葉を失い、しばらくして
「それにしても、こうしてみると、ヴィルヘイム1世とビスマルクって雰囲気がにているわ。
星座も同じなんて、運命を感じるわね。」
と、しれっと話を変えた。
「ああ、こんな馬鹿げたことはしてられないわ。
1888年、ドイツ皇帝が亡くなった事でヨーロッパと私の話が混乱するんだから(>_<。)
ヴィーナーオーパンバルは2月なんだけど、ヴィルヘイム1世が亡くなったのは3月。
次の皇帝は、わずか3ヶ月で亡くなるのだから、
こんな年のヴィーナーオーパンバルに事件があったとしたら、面倒くさくなるんだわっ!
ついでに、ヴィルヘイム1世の息子さん、即位して3ヶ月くらいで亡くなってるのよ!
私、これも暗殺だと思ってるのっ!!」
「えっ、それは盛りすぎでしょ?」
私はテンション高めの作者につられて叫んでしまう。