時影、近代魔術を語る 79
人が消えた鏡の間で作者は鏡を見つめていました。
ベルサイユ宮殿の鏡の間は、国王の居間と王妃の居間を結ぶ回廊として作られたそうですが、シャルル・ルブランの天井画と壁一面の鏡、豪華なシャンデリアがバロック風と言った感じです。
つまり、ゴージャス…ド派手…
そんな場所で場にそぐわないちんちくりんの東洋人の作者。
作者はしばらく無言で何やら考えていましたが、思いついたようにまた、あの曲を再生したのでした…
『バラは美しく散る』
もう…なんと言うか、私も少し呆れてしまいました。
が、私の気持ちなど気にする風もなく、壁一面の鏡をディスプレーに変えて、作者は昭和の少女漫画風味の動画を流し始めました。
伯林乃薔薇
略してベルバラ…
何となく上手く出来た感じのタイトルが、身内には赤面するほど恥ずかしく感じるのです。
そのタイトルが終わり、金髪の美少年が登場しました。
ヴィルヘルム一世は、1797年3月に生まれました。
なかなかの美青年でいらしたようで、社交界では恋の浮き名を流したとか。
この美しき王子がオスカルの代わりならば、
アンドレの代わりはビスマルク…
彼が生まれたのは1815年4月生まれです。
この1年前、ヴィルヘイム1世は、ナポレオン解放戦争に従軍しています。
この辺り、ドイツ方面は大変な時期でした。
史実を探れば扮装にあたるのです(T-T)
東欧考察枠で少し書きましたが、ナポレオンに大陸を封鎖された北欧の人達はコーヒーが飲めなくなってぶちきれたのでした。
ビスマルクの生まれた1815年は、ナポレオン解放戦争の最終段階、ワーテルローの戦いで、北欧は勝利に終わるのですから、希望があった年とも言えなくはありません。
いたずらっ子のような、すこし小賢しい感じの聡明な顔立ちのビスマルクがお母さんのお腹ですくすくと育っていた頃、
ヴィルヘイム1世は、ナポレオンの解放戦争の功績で鉄十字の勲章を受けるのでした。
この戦いで、ナポレオンと言う独裁者を排したヴィルヘイム1世。
彼の胸を飾る勲章が、後に、ドイツ革命を経て登場する独裁者のシンボルとして語られるのは、なんとも皮肉な巡り合わせに思えます。
レ・ミゼラブルで有名な1848年革命では、自由主義派に憎まれてイギリスに亡命するヴィルヘイム1世。
この辺りでビスマルクは、代議士として政界にいました。
彼もまた、自由主義によるドイツ統一には反対だったようです。
こう聞くと、なんだか、ビスマルクが中央支配の悪い人物のように聞こえますが、
1919年のドイツ革命から、ナチス政権の発足の流れを見ていると、なんだか、ビスマルクの不安も分かるような気がします。
そんなビスマルク、嫌われたりもしたらしく、後に、ロシアに左遷されたりします。
が、それらも自分の追い風に変え、
ヴィルヘイム1世の治世になり、プロセイン首相に任命されるのです。
それから、この二人は反発しながらもプロセインと北欧社会を安定に導いて行きます。
19世紀末に戦争が発生しなかったのはビスマルクの裁量によるところが大きいと思います。
暗殺未遂など、戦争が無くてもヴィルヘイム1世には、心配事が無くなるわけでは無かったようです。
そして、ピーフケが亡くなった一年後、1885年から病床に付し、
そして、1888年誕生日を目前に亡くなるのです。
ビスマルクは、とても悲しんだようです。
なんともミスマッチな少女漫画美麗風味のビスマルクが嘆くシーンで音楽が終わり、ビスマルクの寂しげな背中がフェイドアウトして動画が終わりました。
少し、おふざけが過ぎる気もしますが、
それを差し引いても、短いドイツ帝国時代を駆け抜けた偉人の人生に胸が熱くなります。
そんな余韻に酔う私のところへ作者が寂しげな皮肉顔をしながらやって来ました。
「はぁ…終わったわ(T-T)
なんか、色々ありすぎて大変だったけど、面白かったわね。」
作者は寂しそうに笑って私を見た。
「そうですね。まさか、ベルバラで、こうまとめるとは、読者の方々も驚かれた事でしょうね。」
私は作者に笑顔と、皮肉に感じないくらいの賛辞の言葉をかけた。
が、作者は困った顔を崩さずにこうつづけた。
「ふふふっ(;_;)
もうね、ここまで書いているときも七転八倒だったわ…。
この記事を読んでいた読者の中にも、既に気がついたか、
違和感を感じた人がいたとは思うのよ。」
作者は負けを認めたような、ぶっきらぼうでなげやりにこう言ってため息をついた。
「どうでしょうか…。」
私は言葉少なに相槌をうつ。
「ヴィルヘイム1世が亡くなったのは1888年。
この年号。もう…やだぁ(T-T)
あとわずか8千字で10万字に到達するのに止めている『魔法の呪文』に関わってくるのよ…(T-T)
金儲けがしたいのに、こんな一銭にもならない設定記事を延々書いていた理由。
いやぁ…今回は、歴史部門の奥深さを思い知らされたわ。
現在の設定では『魔法の呪文』は、春先からつんでいて続きがかけない状態だったのよ(´ヘ`;)
歴史って、既におこった出来事が関わってくるから、将棋のように史実につまされる事があるのね。
まあ、答えあわせは次回。
私は最後は高校生天才スコッパーの話を書こうと考えているから、なかなか興味深かったわ。
でも、今日は、もう、休みましょう。」
作者はそう言って笑った。
「それでは、おやすみ前にコーヒーでもいかがですか?ご馳走しますよ。」
私の誘いに作者は明るく頷いた。