ダ・ヴィンチの偽コード 12
北欧系のイケメンの私ガブリエルは、銀貨を手に屋敷をでる。
すると、そこには、従者で、同級生のピノがいる。
ピノは、イタリア語でワインの事らしい。思い浮かばないので、仮の名前をつける。
ピノは、初めは渋めの中年にしようと考えたが、ガブリエルがイケメンなので、それなりにハンサムを配置することにした。
私、ガブリエルには、ちと劣るが、黒髪に明るいグリーンの瞳が印象的なラテン人だ。
日本のラテン系と言われる大阪の人間にも、穏やかで物静かな人間がいるように、ピノも外見にそぐわず無口な男だ。
「待っていてくれたのか?」
私は、屋敷の玄関先に門番のように姿勢良く立つ友人に声をかける。
「お疲れ様です。旦那様。いえ、今日は、いつもより長居をされてるようなので、この辺りを一回りしてきました。」
ピノは、少し恥ずかしそうに私に言った。
仕方あるまい。ピノは、ラテン人の特徴である、ほりの深い顔立ちで、長いまつげに縁取られた、翡翠のようにエキゾチックな緑の瞳は、世のご婦人方の視線を強く引き付ける。
挑戦的な厚めの唇は、セクシーな印象を与え、とかく誤解されやすい男なのだ。
「それは、すまなかったな。しかし、旦那様はやめておくれ。なにしろ、私とお前は学友ではないか。ガブでいい。」
私は、生真面目な友人の肩を叩いて歩き出した。
さあ、アヴィニョンを散策しよう。
インターネットを検索しても、ルネッサンス時代のアヴィニョンについては、手軽には調べられなかったので、ここは、21世紀の観光ガイドを参考に歩いてみよう。
この物語、現在12月設定で、作者の私はクリスマスソングを聞きながら、見たことのないアヴィニョンについて書いている。
ガブリエルの時代から、150年近く昔とはいえ、法王庁があったこの街のクリスマス・マーケットは盛大で品数も多い(多分)
今でも人気のサン・ベネゼ橋は、スペイン人とイタリア人の商人と巡礼者が行き交い、ローヌ川が北ヨーロッパと地中海を結ぶ唯一の川なんだそうだから、やはり、アヴィニョンには、諸外国から訪れる人間も多く、わりと重要な都市だったのではないか…
なんで、ノストラダムス研究者は、ノーマークだったのか…、こうして、設定を書いていると、極めて面白い歴史物が書けそうな素材だけに、不思議な気もするが、まあ、予言者ではないノストラダムスに、誰も興味を抱かなかったと、言うことなのだろう。
おっと、脱線した。
現在、私はイケメンの学生ガブリエルなんだっけな。
で、今は冬。地中海の近くと聞くと、温暖な気候が思い浮かぶだろうが、なかなかどうして、冬になるとアルプス山脈から川を渡って「ミストレル」と言う冷たい風が流れ込んでくる。
なんとなくだが…六甲おろしのような気象現象を思い浮かべれば良いんだと思う。群馬のほうなら、上州空っ風、と言うのか、まあ、寒いのだ。
ガブリエルもピノも厚手の羊毛のマントで身を包み、ついでに師走の忙しいご婦人方の足を止めないように美しい顔をフードで隠した。