時影、近代魔術を語る 71
颯爽としたドラム隊が横に並んで軽快にステックをさばきます。
190cmを越えた長身の金髪碧眼の好男子の楽団を私は複雑な気持ちで見送りました。
「いくらなんでも、乙女ゲー並みに揃えすぎじゃありませんか?」
思わず不機嫌になる私に、作者も眉を寄せながら憮然と答える。
「私じゃないわよ。私のビスマルクが考え付いたのよ。
恐怖と畏怖の念をフランス人に植え付けるには…
外国人を強調しようって。
北欧人の特徴である長身と金髪碧眼。
かつて、ヨーロッパ全土を震撼させたバイキングを思わせる逞しい胸板と、太い腕。
それらが、一糸乱れず行動する様は、100年たらずの寄せ集めの市民軍には驚異に映るのではないかしら?
なにしろ、プロセイン…中東欧の人達は、千年以上異教徒と戦い続けた騎士団がいるのですからね。
兵士として戦うと言うこと、政治と国防としての兵士の心構えや信念が違うと思うのよ?
そう言うのって、一挙一動ににじみ出るから、フランス人をビビらせるのに使えるって考えたのよ。」
作者はあり得ないほど整えられたイケメン楽団にため息をつく。
「そうですか…。」
私は正確なリズムを刻み行進する兵士を見つめる。
この2年。色々ありました。
ドラゴン騎士団やら十字軍に泣かされた事、
ノストラダムスとアヴィニョンで混乱し、イケメンを作ろうと調べた人間の特徴。
小さくてどうでも良さそうな、そんな積み重なった知識が、現在の物語に印象的な陰影を付け加える役割を持っている事に気がついて、私は言葉もなくこの風景を見つめた。
「この考えに、私はヒトラーの金髪碧眼に、アーリア人へのこだわりの原点を探す手がかりを見つけたつもりだったわ…
ナチスの理想の原点は、プロセイン…ビスマルクのドイツ帝国だって。
でも、ピーフケの『プロセインの栄光』だけで、説明が足りてしまったわ。」
作者は冷たくなる鼻をさする。
私は作者がかけてくれた毛織りのマフラーで作者にかける。
「いいえ…。今までの設定考察があってこそ。
『プロセインの栄光』だけでは、ナポレオンに分割された屈辱や
フランスの二月革命の流れで混乱する東欧、ウィーンの混乱をビスマルクに描くことは出来なかったでしょうからね。
長くかかって、物語を止めてしまいましたが、
それでも、きっと、
読者の皆さんも努力賞をくださいますよ。」
私の言葉に、作者は隠しきれない笑みを滲ませた不機嫌顔をマフラーでそれとなく隠した。
「そんな、自分で誉めるような事、恥ずかしいから言わないでよ。(*'-')
二月革命(T-T)
1848年のこの大騒ぎにプラハも影響を受けるのよね?
ああっ…童話の…
小さな悲恋を書くだけだったのに…
パガニーニとカノン砲について、子供のミニ知識に書くだけの簡単な物語のはずがぁ(;_;)
なんか、すごーく複雑になるわ。」
作者は『薔薇は美しく散る』を口ずさみながら、激動の19世紀の中東欧で右往左往するキャラクターに思いをはせていた。