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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 69

美しい田園風景を見ながら私達はゆっくりとベルサイユ宮殿へと向かっています。


ベルサイユまでは、わりと遠いので、観光ガイドなどではミニ電車での移動を勧めているようですが、 我々は、二人だけの空想のベルサイユを歩いて楽しむことにしました。


「フランスの庭文化に影響を与えたのは、アンリ2世の奥さん…カトリーヌと愛人のディアヌだって聞いた気がするわ。

どちらもイタリアと縁があって、ベルサイユの庭にもそんな影響があると思うわ。

でも、マリー・アントワネットは、当時の流行を追って英国式にしたらしいわ。

庭といっても、この規模なら、一大アトラクションですもの。

色々と利権が(うごめ)いたことでしょうね。」

作者はそう呟いてポプラの道を先へと向かいます。


ベルサイユの庭は、このプチ・トリアノンとは比べ物になりません。

美しく整えられた様々な樹木が、四季をテーマに配置され、意図的な死角を作り出しているのです。


それは、社交界のアバンチュールの為か、

それとも、代わり行く社会情勢の陰謀のためか…



しばらく歩いていると、足元に枯れ葉が増えてきました。

空も心なしか鉛色に代わり始め、作者が面倒くさそうに私を見てマフラーをかけてくれました。


次の瞬間、私達は冬服をまとい、辺りは雪におおわれて行きました。


私が驚いていると、作者は面倒くさそうにふて腐れてこう言いました。


「ルドルフ・ヘスの話の前に、ベルサイユのお話をしなくてはいけないの。


オスカル様が、革命のバラと散っても

アントワネットが断頭台のつゆと消えても


人は生き、そして、ベルサイユ宮殿は人を見つめ続けたわ。


ルイ16世が消えて、

1871年。

近代史が始まろうとしていた時よ。


民衆の夢と悪夢の中で、永遠に消えたと思われたこの美しい王宮に、

長いときを経て、シャルル・マーシュの血族がこの場所で皇帝として即位しようとしていたの。


1871年1月18日。

ベルサイユ宮殿の鏡の間で行われたそうよ。


一度はナポレオンに分割された神聖ローマ帝国。


この時から、南北ドイツが集まり、現在のドイツを作り始めるきっかけになるのね…


プロセイン王国のビスマルクってオッサンのせいで、もう、私、大変なんだから(●`ε´●)


大阪万博の100年年前って、区切りがいいからフランクの誕生年にしようとしたら、普仏戦争って°・(ノД`)・°・


おかげで、『魔法の呪文』の登場人物、フランクとメアリーのお父さんもどこかでヴィルヘイム1世の即位を祝っているはずだわ(;_;)


ああっ。面倒くさいわ…

童話の…少女小説を書きたいだけなのに…

なんで、話がでかくなるんだろう?」

作者はボヤきながらもサクサク歩き、やがて我々は噴水庭園などがある大通りに到着しました。


現在、即位式の当日なので沢山の人が世話しなく動いていました。


19世紀の華麗な服装の人達を見つめながら、作者は遠い目をしながら呟きました。


「なんか…ドイツ人って感じだよね(T-T)


黒いし、きびきびしていて、ベルバラじゃないね…。」


まあ…仕方ありません。

戦争が終わり、外国のことなので、軍関係の人物が大半なのでしょうから。


ベルサイユの冬の空を見つめながら、私は作者が、少女時代の甘い夢から必死で覚めようとしているように見えました。


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