時影、近代魔術を語る 67
ジャズアレンジのきいた『蘇州夜話』が流れるなか、作者の肩の温もりを感じながら聞く物語。
成長し、私たちの手から離れて行くキャラクターを見送りながら、ときめく夜は、ふけて行くのです。
私は浮かれた気持ちでグレンフィディックをグラスに注ぎます。
児童小説を書く予定ですから、お酒の描写はあまりなく、私も、酒を飲む機会など無いと思っていました。でも、終わらない物語の話ばかりをしていたのですから、
今夜くらい、我々のトミノの門出を祝って杯を重ねるのを許していただきたい。
作者は私の隣でサイダーをコップに注いでグレンフィディックを軽く注いだ。
作者は一口含んで鼻からこのウイスキーを楽しむように深くため息をつく。
「うーん( 〃▽〃)うまい。」
作者はそう独り言のように呟いて笑い始める。
この作者、うまいと笑いだすのか?
私は見て見ぬふりをする。月は既に傾き始め、夜もとっぷりと更けてきました。
そろそろ、おひらきにしませんか?
声をかけようとしたときに作者が口いっぱいのグレンフィディックの余韻に良いながら、すこししびれたような嬉しそうな顔で私に話しかけてきた。
「とっかげちゃーん。うふふっ。やっぱり、うまい酒はいいねぇ…。
ほんと、笑いが止まらないわ。
ついでに、『トミノの地獄』もいい感じにまとめられたしね。
ああっ。最高!ハートマーク…ふふ。」
作者はご機嫌に手を上に広げて叫ぶ。
私はグラスを床に置いて立ち上がった。
そろそろ寝かせた方が良さそうです。
そんな私を避難がましく睨みながら、
「トイレ行くの?私、これからグレンフィディックについて語ろうと思ったのに。」
と、言った。私はその自分勝手な感じに少しムッとしながらも、肩をすくめて許してしまうのです。
物語を考える事は、作者と一緒にいられると言う事なのですから。
「いいえ。眠くなったのかと思ったものですから、片付けを始めようかと考えただけです。」
私は作者の横に座り直した。
「う、うん。確かに寝る時間ね。
でも、ここまで来たら、夜空でも眺めてからにするわ。
それより、グレンフィディック、調べてみたら、なかなか興味深いわよ。」
作者はニヤリと笑い、
知識ゼロからのシングル・モルト&ウイスキー入門
古谷先生の著書を手にした。
「そうですね。でも、長くなりそうだから、それはまた、明日にしましょう。」
私はそう言って自分のグラスのウイスキーを空けた。
「うーっ。まあ、仕方ないか。長くなるからね(T-T)
要領よくかけないって辛いわ。」
作者は困っていますが、ウイスキーの歴史、長いようで現在の姿になるのは19世紀の事なのです。
意外でしたが、シングルモルトのグレンフィディックが市販されるようになるのは、なんと1960年代の事のようなのです。
つまり、近代魔術…で右往左往しているこの時代の話なのです。