時影、近代魔術を語る 61 西条八十11
「そうね…銀座の常識なんて、考えもしなかったわ。
ドンペリ
ナポレオン
レミーマルタン!!
名前だけならなんだか知ってるお酒、これを銀座で飲む事を考えたら、五万円なんて…たいした金額ではないんだわね(T-T)」
作者は遥か昔の景気の良い銀座を思ってため息をついた。
「盛者必衰…現在は静寂に包まれているのでしょうけれどね。」
私は緊急事態宣言が発令された東京を思って月を見る。
これから一ヶ月、不要不急の外出を控えないと行けません。
「そうね…、こんな漫画みたいな事になるなんて…
石垣先生もMMRで2020年の滅亡ネタを書いていらしたときには思いもしなかったと思うわ。
コミックDAYSと言うサイトで前編を無料で見せて貰ったの。
凄いわね、初めてWebコミックを立ち読みしたわ(*''*)
MMRって、絶版だと思ってたから、続きがあることやら何やら、驚いたわよ。
後編は登録しないと読めないんだけど…
手続きが面倒に感じるのが歳ね(-"-;)
でも、よくネタが被るし、記事に書かせてもらっているから、登録してみようとは考えているわ。」
作者は本当に面倒くさそうに言った。
この『なろう』でさえ、ログインに七転八倒しているのです。
その上、こちらの作品を投稿するほうが先です。
他にも色々忙しいので、
ログインに時間をとられている場合ではないので、仕方がないのです。
「ともかく、その話は別の機会にしましょう。良い感じにウイスキーでアイルランドとハイランドに関係を見いだしたのですし、
1995年、北条がもつ25年ものが樽につめられたのが1970年。
奇しくも、それは西条八十の没年です。」
「確かに、そうね。つい、脱線したくなるのよね。
八十…今日は八十の話を、『トミノの地獄』の私の解釈を披露するんだった。
ちょっと、東洋医学を調べていて、この詩の解釈がうまくまとまったので、話をしたかったのよ。」
作者はそう言って、一度本を床に置くと、グレンフィディックの水割りを手に話を始めた。
「記憶が正しければ、著作権は、作者の死語50年。
1970年に亡くなったのなら、近く西条八十の版権も切れる?切れた?かもしれないけど、
『なろう』ルールもよくわからないし、
八十の作品に興味を持った人がいたら、ぜひ、『砂金』を読んでほしいわ。
だから、原文は各自で探してもらうとして、
パンデミックを軸にした、この詩の物語を話したいわ。」
作者はそう言って、YouTubeから『蘇州夜話』のピアノ曲をかける。
「コロナで…こんなになっちゃって、音楽家の人も大変らしいわ。
YouTubeでお金を稼ぐのは大変みたいだけど、
興味をもって、ピアノや他の演奏を聞いてくれる人が増える事を願うわ。
本当なら、曲の時間に合わせて記事を作れたら良いのだけど、
私のスキルでは無理だから、この曲をバックに語ろうと思うわ。
西条八十先生はね、19世紀末からの激動の時代に、沢山の歌詞を残してくださった方なの。
八十先生の曲は、スペイン風邪に太平洋戦争なんて、辛い時代を生き抜く人たちに、寄り添うように励まし続けたのかもしれないわ。
そして、現在、私も先生の歌に励まされているわ。
そんな、先生の処女作『砂金』を怪しげな都市伝説として使わせて貰ったりして、なんだか申し訳ないんだけど…
でも、それでも、先生をよく知る機会が作れたことは、私には良かったわ。
『トミノの地獄』の都市伝説は昔から知っていたの。
こんな事しなきゃ、忘れていた話なのだけれどね。
この詩、全体からは大正時代の和洋折衷な美しく残酷で、抽象的な世界なの。
ネットで、この詩の解説をしている方がいるけれど、十人十色の思い思いの解説が花開いているわ。
西条八十自身の解説がどうもないらしいのよ。
まあ、私も好きに語らせてもらうわ。(^-^)/」
作者はそう言うと、一度身震いして、マグカップにコーヒーを注ぎ始めた。
砂糖を二杯。グレンフィディックを気持ちいれて、高く上る満月と共に肌寒さを感じたのか、マグカップで両手を温めた。
「ごめん。ちょっと、一杯飲ませてくれない?」
作者は月の光の中で、淡く微笑んだ。
春先の…静かな夜更けに彼女の声が優しく辺りに流れていった。