時影、近代魔術を語る 57
穏やかな春の夜、縁側から庭の桜を見つめながら、私達は二人だけの花見を楽しんでいます。
新型コロナの影響で、花見をするのも気を使う現在、それでも、なろうの作中なら平気です。
我々は、空想の満開の桜に酔いながらウイスキーを酌み交わしています。
ボルモアと言う少し癖のあるウイスキーです。
英国ウイスキーと言っても、日本酒のように産地によって個性的で、味わい深いもので、
ボルモアは、アイラ島で作られたウイスキーです。
ウイスキーの発祥の地と呼ばれるアイルランドと、後に、この地から製造方法がスコットランドへと伝わり、現在のスコッチウイスキーになるのですが、
アイラ島は、その通り道の海に浮かぶ島なのです。(スコットランドよりですが。)
潮風を思わせる独特の風味が、好き嫌いをわける酒ではありますが、
私は、この個性的な薫りが好きです。
物語のキャラクターに持たせる酒としても、独特の雰囲気を演出してくれるだろうこの酒は、覚えておいて損はないと思います。
爽快で男性的なお酒なのです。
「はぁ…もう、嫌だわ(T-T)
ここまで書いて、時間を去年の12月に巻き戻すなんて。」
作者はタンブラーにサイダーを入れ、その上に二ミリ程度のボルモアを浮かべた飲み物を手にぼやく。
「それなら、今しばらくこうして桜を見ていませんか?」
私は穏やかなを夜風を頬に受けながら、作者との静かな一時を思いながら聞いてみる。
しかし、作者は私の言葉に眉を寄せて首をふる。
「いいえっ!話を進めたいので続けます。
全く、連載の赤文字が増えるのは、嬉しくないんだもの。
一つでも使える形で終わらせたいわっ(T-T)
ホント、他の人って、どんな風に話を作るのかしら?
私のように一度に複数を相手にする人って、どのくらい、いるのかしらね。
私は現在、『パラサイト』の改編をしてるけど、
同時に、近代魔術の話の構成もしているわ。
ずーっと、頭の中でウイルスと戦いながら、
同じベースで、アーネンエルベを…ヒムラーをだまくらかして金をせしめる事を考えていたの。」
作者はそう言ってクシャミを一つし、なんだか悔しそうにマシンガントークを続ける。
ひとしきり演説が終わると、喉が乾いたのか、手にしたグラスを口の近くへと両手で運び、飲む前に思い付いたように満月にグラスをかかげ、つきの光をグラスに集める。
「この飲み物、サイダーにウイスキーをちょっぴり入れただけなんだけど、
それでも、カクテルとして名前があるのよ…
ウイスキー・フロートって言うの。」
作者は宝石でも見るように目をほそめ、ホットミルクの表面に張った膜程度のウイスキーにうっとりとした。
「ウイスキー・フロート。正式には、ミネラルウォーターで作るのですが、ね。」
「あら、別にいいじゃない。家庭のカクテルなんだから、オリジナルで。
私は、あんまり飲める方ではないけど、お酒は好きなのよ。
この方法だと、少ない分量でもしっかりウイスキーが味わえるし、
それでいて、気分が悪くなるほどのアルコールは無いから、誰かと飲むにはいいカクテルなのよ…。」
作者はそう言って、軽くボルモア本来のパンチのある個性的な風味を味わった。
私は横に座って、同じウイスキーを一口含む。
月の光に包まれながら、七分咲きの桜が、春の夜風につま弾かれ、穏やかな波の音のように歌っています。
幻想的な静かな世界で、少し酔ったように作者は目を細めた。
「このお酒は、海を渡ってスコットランドへと伝わのだけど…
同じく、単独飛行をしてまでドイツからイギリスへと向かったヘスは、何を伝えたのかしらね?
12月に見つけた本のお陰で、いままで積んできた物語の種がつかえなくなったわ。」
作者は眠そうな顔で私を見た。
「で、なんで、私がまた登場するのかな?」
「仕方ないでしょ?興奮すると、貴女が記事に乱入して、誰が話しているのか、読者が混乱しますから。」
私は困り顔で作者を見た。
「ごめん…だってー、って、言い訳しても仕方ないか。
とにかく、頭の中の混乱を吐き出さないと(T-T)
12月、私は、『東欧革命』を読みながら、ルドルフ・ヘスの死の謎を考えなおす必要にかられたわ。
だって、1989年ベルリンの壁が崩壊し、社会主義の国が混乱していたとしたら、その少し前に変死したヘスの死因も、オカルト風味がふかくなるのですからね。」
作者はそう言って月を見つめた。