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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る 45 西條八十9

混乱する物語。

この記事を書くために探す資料ですら、新しい展開を連れてきて、どうしてよいのかわかりません。


とは言え、ダメ出しばかりで自己嫌悪の作者を何とかしなければ、物語はここでおしまいになります。


一桁とはいえ、いまだにブックマークを外さない読者とアクセスがあるかぎり、私も引くわけにはいかないのです。


私は、居もしない空想の天才スコッパーにギャフンと言わされている作者の、茶色いノートを開いた。


そこには、気の向くままに雑然とどこからか調べてきた事が書いてあります。

私は、真ん中辺りに書いてある文章を見て、思わず笑ってしまいました。


私の笑い声に作者は反応してこちらを見ました。


「なんか、面白い事でも書いてある?」

作者は、少し嫌みを含ませて聞いてきました。

「ええ…。書いてありますよ。

間違いだらけと落ち込むことはないですよ。」

私は、茶色いノートを開いて見せた。


『スコットランドの歴史』リチャード・キレーン 彩流社の本を中心に、スコットランドについて調べた内容が書いてある。


「ブリテンとは、ローマ人が現在のイギリスに住んでいた古代ケルト人、ブリトン人の事をそう呼んだからで、

後にスコット人やノルマン人が国の形をかえようと、イギリスの妖精の話は、基本、同じキャラクターが登場します。

クローリーやメイガースが、スコットランドが好きで、その妖精の話を調べるとしたら、アイルランドの伝説にも興味をもつと言うのは、あながち間違いではないのですよ。」

私の言葉に、作者は苦笑した。

「はぁ(´ヘ`;)そうだったか…。

なるほど、間違いにも、色々あるわけだ。」

作者は、少し穏やかな顔になり、紅茶の香りに目を細めた。


「そうですよ。

たとえば、アイルランドの間違いに笑った読者がいたとしても、

その後ろで、努力賞をくれる読者もいるかもしれませんよ?」

私の言葉に、作者は、何かを感じて目を見開いてボールペンを握ると、茶色いノートを私からひったくり、何やら書き始めた。


「どうしたのですか?」

「いや、これ、使えるエピソードだって思ってさ、

音無の話とか…

アイルランドとスコットランドを間違えた奈美を音無がかばうとか…。

ホント、頭のよさげな切り返しのエピソードなんて、作れないもん。

貴重だわ。」

作者は、そう言って何やらメモをしてから、私を見た。


「ありがとう。元気付けてくれたのね。

さて、色々あるけど、進めなきゃ。

まあ、そんなこんなで、私の八十は1919年、フランスへと留学した設定で頭を回っていたわ。

だから、スペイン風邪の話と『トミノの地獄』が私の頭で重なったのよ。


あの不思議な詩に登場する

姉の吐く火は、怪獣のような火炎ではなく、発熱のことで、

妹は吐血。

トミノが吐いた玉は、ヌクレオチド…ウイルスの事ではないかと、そう思ったの。


日本の春告鳥鶯と、

西洋の春分を司る白羊宮の象徴の黄金の羊は、

春、つまり萌える季節。啓蟄…(ウイルス)が活動を始めた。そんな象徴にも見えるわ。


八十がそんな事を考えたかは知らないけど、

1918年から徐々に広まり始めたスペイン風邪に不安を感じる世相が、この詩に無意識に入り込んだと考えるのは、

あながち間違いではないと思うのよ。


で、よ、


ここから、あの不気味な都市伝説の話なんだけれど」

「音読すると不幸になるってやつですか?」

「うん。あれね、出所は『心は転がる石のように』と言う本だと、ネットでは噂されているわ。

その本が出版されたのが、2004年らしいのだけど、

この辺り、遺伝子治療の研究が活発になっていたらしいのよ…

悪いけど、うろ覚えだわ。

で、この頃、遺伝子治療について、中国が先端を走っていたらしいのよ。

うろ覚えだけど。

2003年にSARSが中国で流行したりして、

八十の都市伝説が流行るのと、微妙に重なるのよ。

まあ、その時は、考えなかったけど、

今、思うと、八十の『トミノの地獄』に、当時のパンデミックへの恐怖がにじんでいて、

それを、無意識に聞いた人が感じるのかもしれないわね。

音読…つまり、口から息、及び何かを放つ行為が、不安を煽る、

そんな風に感じるのかもしれないわ。


しかし…この考えが、『パラサイト』に中国とウイルスのイメージをもたらせて、私が、先をかけなくなるんだわ(;_;)」

作者は、そう言って乱暴に紅茶を飲み干した。


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