表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
162/499

時影、近代魔術を語る 44 西條八十4

「君江先生の描く妖精の世界はとても素敵だったわ。

私、冬の童話も考えていたから、妖精のお話を考えていたのよ。」

作者は、嬉しそうに目を細めて微笑んで、少し、心配そうに私を見た。


「その話、少しだけしていいかしら?」


作者は私を見て、大丈夫だと理解すると、今回、作品化しなかった小さな童話の話を始めた。


「私、童話も考えないといけないし、信州と武田信玄も何とかしなきゃいけないから、冬将軍…から、アラクネのカオリの登場する短編を考えていたの。

信州には山や森が沢山あるし、日本の魔女とカオリの話を考えていたわ。


で、君江先生の語るイギリスの妖精をそこに合わせてみたのよ。


イギリスの妖精のピクシーとブラウニーは、裸ん坊の妖精でね、

家事を手伝ってくれるのだけど、服を貰うと家出するらしいわ。


私、両親が亡くなって、実家を壊す事にした女性が、長年、家を守ってくれた小さなブラウニーとピクシーに服を作る話を考えていたわ。」

作者は、嬉しそうに語りますが、やはり、少し変です。

「信州…日本なら、日本の妖怪でいいのでは…、

垢なめとか、小豆洗いとか…」

と、聞いてみた。


作者は、そんな私を批難がましくちらりと見て、

「いいのよ…。これは、ジャンと中央フランク帝国の話の習作でもあるんだから(;_;)」

と、嫌な顔をした。


そうでした。


信州と武田信玄は、中央フランク王国を考えるためのものでした。


「そうでしたね。」

私は、話の腰を折ったことを反省した。

「はぁ…。そうなのよね…。

私、冬の童話を考えながら妖精の本を読んで、

別枠で、パラサイトの続きを考えてるんだから。

冬は、頭が痛かったわ…。あのときは、私の頭がおかしいとか考えたけれど、意外とみんなそんなものかもしれないわね。」

作者は、ため息をついて、話を続けた。


「とりあえず、本を読みながら、童話を考えていたんだけど、

君江先生の語るイギリスの妖精の話は、なかなか興味深いものだったわ。

イギリスの妖精の世界には、いくら食べても肉が再生するブタが登場するけど、

北欧神話のワルキューレにもそんな猪が登場するし、

妖精の世界の食べ物を摂取すると、もとの世界に帰れないと、言うのもギリシア神話のベルセフォーネとハデスの話を思い出すわ。

こんなところに、人の行き来を感じたりして読んで行くとね、

既視感をおぼえたのよ。」

「それが、『トミノの地獄』と、言うわけですね。」

私が言うと、作者は頷いた。



「うん。この詩については、是非、図書館で西條八十(さいじょうやそ)『砂金』と言う詩集をさがして見てほしいわ。

ネットでも手軽に調べられるけど、図書館は、貸し出しの履歴とかで本棚か書庫行きがが決まるから、ぜひ、借りてあげてほしいわ…

ともかく、『トミノの地獄』の詩の内容なんだけど、

ネットでは、トミノは富野ではないかと予想されているわ。

でも、それだと、姉と妹も登場するから不自然なのよ。

この詩が書かれたのは大正。子沢山な時代だわ。

五人兄弟が珍しくない時代に、主人公だけを名字で言うのはおかしいと思うのよ。」

作者は、眉をよせる。

「トミノは外国人、と、言うことですか?」

「うーん(-"-;)分からないけど、和洋折衷(わようせっちゅう)の異世界なんだと思うわ。

この詩は、鴬が登場するけど、ギリシア神話を思わせる金の羊が登場したり、西洋風味がするのよね。

少なくても、日本の地獄とは違う世界観だと感じるわ。」

作者はそう言って、一度言葉を区切る。


「君江先生の妖精の話を信じるなら、

イギリスの妖精は、異世界に住んでいて、それは人間の世界と地獄の間にあるらしいの。

やはり、地下にあって、地面の下へと進むらしいのよ…。

それを読んでいて、私、トミノの地獄の世界を思い出したわ。

地下の世界へと向かうトミノ。

不気味な世界だけど、日本の地獄の残酷さが無いのは、妖精の世界のイメージを八十が取り入れたのだからだ、と、考えたのよ。

で、そこから、調べ始めるとね、八十は、砂金を発表したあと、フランスに留学しているのよ。

留学したと言うことは、西洋の文学も学んでいたはずだから、

あながちトンチンカンな話でもないと考えたわ。」

作者はそう言ってため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ