作者、近代魔術を語る 34 通り魔
この物語には、いつ筋もの物語が交差している。
これは、精神を病んだ人の視点で書いた話なので、語りの人間が、真実を語る必要はない。
主人公のアンドレがどう思うかが書かれているだけなので、アンドレが思い違いをしている可能性もある。
とは言え、作者の私は、少しは筋道を考えなくては行けない。
これについては、色々考えていた。
で、ジルの話なのだが、こちらで考察して行くと、はじめとは違う、面白い見解を見つけてしまう。
ジルの話は、精神病と催眠の物語だ。
ネットを検索すると、催眠のはじめては、18世紀フランツ・マントン・メスメルと言うお医者さんが発見した、らしい。
まあ、この辺りは、正確な催眠とは少し違うが、そこから催眠術が発展して行くようだ。
19世紀に入る頃には、催眠は大きく二つの分野に別れて行く。
医療を目的としたヒプノセラピー
娯楽を目的としたショー催眠だ。
で、ここから面白いのは、日本の催眠術についてだ。
日本の催眠術研究を先駆けたのが、
福来友吉
田中守来
と、言う二人の学者だ。
ふふっ( ̄ー ̄)
この名前を聞いてときめいたあなたは、やはり、オカルト好きですね。
福来友吉。
いいえ、オカルトに詳しくなくても、映画「リング」のモデルの話の学者さんと言うことで知っている方もいるだろう。
彼は、日本の超能力研究に携わった人物でもあるのだ。
どうりで、私が催眠と聞くと、おかしな実験やら、怪しい怪奇小説を思い出すわけだ。
とにかく、福来博士と共に広まる千里眼やら、催眠の知識は、その時代の作家にも影響を及ぼしていたのだと思う。
福来博士の研究は、インチキ認定をされ、
催眠術については、それを悪用する人間が現れたのか、1908年に法律でみだりに使うことを処罰されることとなり、下火になる。
が、法律を掻い潜り、名前を変えて催眠は生き延びて行く。
霊術、心理治療、精神治療などとよばれて。
霊術なんてカテゴリーがあるように、催眠はまだまだオカルトの領域の代物だったのだろう。
イギリスでは、交霊術などが流行し、催眠もまた、ショーとして楽しまれたり、悪用もされた事だろう。
フランスでは、留学中のフロイトが、催眠術を心理治療に使っている。
そんな時代にジルは生きていた。
「通り魔」の物語では、ジルとアンドレとカルロが知り合いのように描かれている。
が、多分、カルロはアンドレだけが見えていた幻かもしれない。
ジルは、このとき、幼い妹を連れてイギリスに留学したのだと思う。
それを許し、奨学金を彼に渡したのは、本当にイギリス軍かは分からない。
ただ、ジルはそう聞いて、そう信じたのだと思う。
福来博士は、超能力と催眠を研究していたが、
ジルは、フロイトの影響を受けて、古代宗教や、ストレス、魔術と関連付けて考えていたのかもしれない。
この時代、中東やエジプトでの発掘と発見が連発する。
キリスト教に疑問をもつ者が現れて、それ以外の、太古の神々にスポットライトが辺り出すのだ。