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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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作者、近代魔術を語る3

一年前、蘭子はダ・ヴィンチの作品を追いかけていた。


ノストラダムスの話なのに?


と、疑問がわく方もいるだろう。

が、ノストラダムスとダ・ヴィンチは、同じ時代を生きていた人物である(それから、ルターも)。


因みに、今から500年前、

ダ・ヴィンチは亡くなり、

ノストラダムスはアヴィニオンで大学生。


ルターは、教会との言い合いが深刻化して、破門の危機を感じていたかもしれない。




蘭子は、混乱する物語を整理する役割を持った登場人物だった。


主人公の奈美の叔母で、

銀座の夜の花でもあった。


今、考えると色々と突っ込みたくもなるが、

突っ込んでいる場合ではない(;_;)


お話は広げなければ(T-T)


まあ、広げ過ぎて、自らの首を締めている気もするが、ともかく、だ。


蘭子はバブル時代の銀座の夜の女だった。


が、昭和風味の怪人を入れた為に、彼女は男性とつき合った事がない。


最近、別の話でも、似たような設定の人物を作った気もするが(/-\*)


もう、なんだ、


あれだ。


これが、私の作風なんだろう(;_;)


いい感じのラブシーンとか難しいのだ。


だから、怪人でごまかしてるんだろう…。


とりあえず、それでいいや。


ついでに、銀座のバーなんて、行った事はない( ̄^ ̄)


松本清張のドラマで見るくらいなものだ。


が、設定の話だし、


なろうだから、ドンといく。


異世界ファンタジーを作るような気持ちで、怪しい設定と空想力で、


豪華なシャンデリアに、派手な金銀の置物。


華やかなビビット・カラーのスーツ姿の美しい女性たち。


ワンレン

ボディコン

真っ赤なルージュ。


これらが90年代の銀座の夜の私のイメージだ。


彼女達は、馴染みの客から貰ったブランドもののバッグを手に、


首には、その姿には少しばかり地味な感じの

オープン・ハートと言うデザインのネックレスを身に付ける。


銀製品の老舗。ティファニーの商品で、


あの清楚なティファニー・ブルーの小箱に、

当時の女性の夢と憧れを一緒に詰められて

男性から贈られた商品だった。


が、


あまりの人気のために、この銀の首飾りは極端な運命をたどることになる。


基本は、好きな女性に真実の愛を含んで記念日に贈られ、


愛を競う女達は、この小箱をライバルよりも多く積み上げることに熱狂した。


不誠実な女性達は、積み上げた小箱を質屋に流し、

一つ残したネックレスを身に付けて男の前に登場するのだ。


選ばれたただ一つの宝石は、童話なら、それは真実の愛を選んだ瞬間だが、


夜の街では、虚構の方便だ。


「あ、つけてくれたんだ。」

「勿論よ。だって、ターさんがくれたんだから。」


などと、甘い嘘の花がホールに咲き乱れるなか、


不動産屋やら、広告代理店の男達が、この時代の銀座の主人公として登場する。


甘い嘘のお返しに、誰かがドンペリを頼む頃、


カウンターで、それを蔑みながら、一人の貧相な男が

バカラのグラスに注がれたグレンフィディクを飲み干した。


「酒をオモチャにしやがって。」


男は不機嫌そうに独り言をいう。


「ご機嫌ななめですのね?北条さんが、こんな飲み方をするなんて。」

カウンターで蘭子が、おかわりのウイスキーを注いだ。

その優しい雰囲気に毒を抜かれて、北条は注がれた美しい琥珀色の液体を光にかざして見つめた。


グレンフィディク25年。

イギリスのシングルモルトの名品である。


グレンフィディクは、現在ではスーパーなどでも見かけるようにはなったが、25年ものとなると、バーでもなかなかお目にかかれない。


これは、出版社に勤める北条のイギリスの土産であり、


その価値を知るものなら、


オープン・ハートの山よりも、

バカラのグラスとこの酒を持つ蘭子の方が、ホステスとしては上だと感じるだろう。


「すまない。この酒は、こんな飲み方をするべきでは無かったね。」

北条はグラスに向かって謝罪の言葉を口にした。


「どうなさいましたの?」

蘭子の優しい声が、北条の尖る気持ちを丸くする。


「企画が一つ潰れてね。まあ、良くある話なんだが。数年前から温めていた話だから、つい、熱くなってしまった。」

北条は、今度は鼻孔からこの酒を丁寧に味わった。


このウイスキーの素直な甘い香りが、蘭子を連想させ、

口に含んだ酒の心地よさが、北条の口を軽くする。

「25年か…。この酒が生まれたのは1970年。万博の年なんだな。」

北条は頭の中で、大阪万博に浮かれる日本を思い浮かべていた。


ほんの少し前に、人類初の月面到着をアメリカが成し遂げ、科学と技術が明るい未来を作り出して行くだろうと、誰もが信じられた時代だった。


この年は海外から、沢山の外国人が日本にやって来て、大学生の北条にも貴重な経験となった年だった。

北条はある雑誌者のアルバイトの職にありついた。

大学の先輩の口利きで、夏休みの一ヶ月の契約だ


基本は弁当の手配やら、機材の持ち運びなどの雑用だったが、当時、新聞記者や、雑誌者の仕事は子供の憧れの仕事でもあり、

その場に居なければ、味わえないような雰囲気に身を置くことは、肉体的に疲れはしても精神的には充実した日々でもあった。


貴重だが短い期間の中に、彼の人生を変える出来事が訪れる。


三島由紀夫という文豪を深く知る機会を得たのだから。



三島由紀夫先生の説明を長々書く必要は無いと思う。

インターネットの時代、彼の名前を検索するだけで星の数ほどの情報が、端末を彩るからだ。


が、彼ほどの有名人ともなれば、デマや間違い、中傷や批判もまた増える。


特に、彼の鮮烈な死に様に衝撃を受けない者はいないだろう。


1970年11月、三島由紀夫と言う男は、自衛隊の駐屯地のバルコニーから演説をし、割腹自決を遂げるからだ。


11月、近所の銭湯のテレビに群がりながら、そのニュースを見た北条は、狂おしい蝉の鳴き声の中で聞いた男の話を思いだす。


彼は作家(ものかき)なのか、

それとも、武士(もののふ)なのか、


北条は、終わり行く70年を肌寒く感じながら、いまだに自問を続けていた。


1995年現在。


彼は、オカルトブームと共に再び語られ始めた三島由紀夫の予言とヒトラーについて、一つの作品を仕上げていた。


しかし、年始めに関西を襲った悲劇的な地震。


謎の地下鉄テロ事件を踏まえて、このての作品を出版することに、出版社は及び腰になっていた。


それが無くても…


北条は、その原稿の行く末を思案していた。


イギリスで見聞きした事が彼の心にブレーキをかけたからだ。


穏やかなスコッチの酔いに任せて、北条は蘭子の顔を見つめた。


緩やかにカールする、少し時代遅れの髪型が、蘭子の存在を、北条の特別の存在に引き上げていた。


それは、かつて彼の愛した女性を思い起こさせたからかもしれない。


ほんの少しだけ、悪戯心が胸に沸き上がる。


北条は鞄の中から、古い大学ノートを取り出した。

「これをあげるよ。」

北条の差し出すノートを蘭子は困惑ぎみに見つめた。

「なんですの?」

蘭子は少し不安げに北条を見つめた。


北条の贈り物は、いつも一流の品物ばかりだった。

出版関係の仕事をする彼が差し出すノートなら、その中身も貴重なものに違いない。


「ただのガラクタだよ。でも、君の創作の役にはたつと思う。」

北条は優しく微笑んだ。


蘭子はそれを美しい微笑みで受け取った。


ここで受け取らなければ角がたつし、


きっと、なにか、仕事で嫌なことがあって酔っているだけなのだ。


とりあえず預かり、中身は見ずに必要なら返せばよいのだ。


「ありがとう。」

北条はその笑顔に救われた気がした。


そうして、気分良く店を出て行く。



それから先の事は…作者の私も分からない。


これはただの戯れ言。


クラーメルの考察の副産物なのだ。


だが、しかしっ。


閲覧数もわりとよかったし、もう少し語ってみよう。


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