魔法の呪文東欧考察9
蘇州…上海に続く古の都。
「東洋のヴェニス」と言われ、かつては絹織物の産地として栄えた…
蘇州夜曲は、愛しい男性の胸にいだかれて、
美しい蘇州の話を聞く
恋と、蘇州へのときめきを胸に、
一夜の儚いロマンに揺れる女心の歌だ。
私はワンコーラスの後から
間奏をワルツ調にして、再び『蘇州夜曲』を奏でる。
蘇州から、一気に、ウィーン、ドナウ川にイメージを変えて行きます。
どちらにしても、
蘇州夜曲も
帝国華撃団も
私たちの話には必要ない。
この物語を10万文字で終わらせるのです。
その為に、これ以上のエピソードは読者と作者おも混乱させるだけなので不必要です。
『魔法の呪文』は、恋を知らない少女だけに許された三つの願いの物語。
音楽と淡い恋物語なのですから。
私は、覚悟を決めて一気に華やかなワルツで部屋を…
作者の心を埋めて行きます。
これは、美しい西洋の恋の物語。
10万文字のただそれだけの物語。
混乱を食い止めないと。
物語が止まってしまったら…
今度こそ、作者は、やめてしまうかもしれない。
この間、私の作者は編み物の道具を探していました。
三年目にして、100円にもならない物語。
丸2年、放られていた手芸の道具が懐かしくなるのは仕方ありません。
そうしたら…物語は、
私は…
どうなってしまうのでしょう?
この作者の側にいるためには、10万文字、出来るだけ早めに作り上げるしかありません。
アレンジを入れた少し長い曲を弾き終わって、私は我にかえりました。
いつの間にか、作者は椅子に座って大人しくコーヒーを飲んでいました。
演奏の終わりに気がついて、作者が呆れたようにゆっくりとした拍手を私に投げ掛けます。
私は、夢から覚めたように呆然として作者を見つめました。
「あっはっはぁ…」
作者は椅子から落ちそうな勢いで笑い転げています。
私は、作者が入れてくれたコーヒーを飲みながら、不機嫌に作者を見つめました。
「そろそろ、笑うのにも疲れたのではありませんか?」
私は、冷たい視線を作者に向ける。
作者は私の声に反応して一度笑うのを止めて私を見た。
で、次の瞬間、スイッチが入ったように笑い出す。
「どうぞ、お好きに笑ってください。」
私は、もう、諦めてコーヒーを飲んで知らない顔を決め込んだ。
それを見て、さすがにマズイと思ったのか、作者も必死で笑うのをやめて、私の機嫌をとりはじめた。
「ごめん、でもっ。て、帝国華撃団を話に……ぶっ、ごめん。
童話に人形戦闘機は出さないわよ…。
さすがに、それは設定的に無理がありすぎるし…。」
作者は、必死で笑うのをやめようとして、唇を震わせていた。
「ロボ………。」
私は、意外な展開に頭を混乱させた。
「そうよ。あの話はロボットが出てくる話だよ。
まあ、あなたは、美少女戦隊みたいなイメージを考えたんだろうけれど…。
リリアとその他四人も新たなキャラいれて美少女戦隊をつくり、
フェネジとメアリー
フランクと仲間たち。
これらでよってたかって、赤毛の錬金術師一人に襲いかかる話は…
シュール(T_T)」
「シュール…。」
おうむ返しに私は作者を見て、一つため息をついた。
「それなら、なんで、『檄!帝国華撃団』をリクエストしたのです?」
私は、恨み言をいう。
「なんとなく…よ。
最近、クラッシックばかり聴いていたから、たまにはアニソンとか聞きたくなったのよ…。」
作者も、止まった物語を思い出して渋い顔をした。
「それだけ…ですか。」
私は、力が抜けるのを感じた。
「それだけ…よ。
でも、あなたの曲を聴いていて、ちょっぴり、オーストリアも帝国だ、とは思ったけどね。」
と、作者は苦笑する。
「ほら、同じことを考えるじゃないですか。」
私は、少し負け惜しみのように作者を責める。
「ふふっ。そうね。
でも、私、リリアの前にトラウゴッドが頭を回っていたから、美少女戦隊は考えなかったわ。」
作者は深くため息をつく。
「トラウゴッド、ですか。」
私は、登場間もなく消された隠れキャラを思い出す。
「うん。ほら、再登場のために、色々設定を考えていたから…、ドラゴン騎士団とか、色々。
だから、トランシルバニアとバイオリンの起源のはなしが絡んできて、頭が混乱したのよ。」
作者は渋い顔で、窓の外に目を向けた。