魔法の呪文東欧考察7
穏やかなウィーンの昼下がり。
温かいコーヒーと親しい人とのゆったりとした時間。
本来は、それだけで幸せな気持ちになるのですが、
止まった連載を動かさなければいけない私たちは、ゆったりとは出来ません。
「ああっ…。どうしようo(T△T=T△T)o
もう12月だよ(T-T)
ふりまじんの忘年会の日が来るんだよぅ。」
作者は夏休みの宿題に悩む月末の小学生のように慌てていた。
「今さら、騒いでも仕方ないでしょう。
さあ、落ち着いて、コーヒーでも飲んだらどうです?
今日は、ブレンドコーヒーです。」
私は慌てる作者を呆れてみた。
作者は、渋々コーヒーのカップを手にして眉を寄せた。
「そうだけど…。そうだけど、なんとか再開したいのっ。
ふりまじんの忘年会までに、完結しなくても10万文字までなんとかしたい(;_;)
10万文字書きさえすれば…、つ、次がっ、
とりあえず、4月まで夢が繋げるっ。」
作者は両手でカップを持ち、コーヒーを鏡に自分に語る。
全く…。
私は作者を見つめた。
「それで必死に突き進んで、地雷原の真ん中まで来たのではないですか。
慌てて進んでも、完結前にドカーン。」
と、いった瞬間、作者が、少し驚いて私を見る。
「爆発したら、終わりですよ。
現在、不発弾が足元に埋まっているこの状態で、へたに騒ぐのは得策ではありせんよ。」
私の言葉に、作者は軽く視線に動揺を浮かべた。
「ふ、ふん。
どうせこのままでも、落選確実よ(;_;)
それに、これ以上エターナルの底無し沼にはまりたくは無いのよ。
これは、この『魔法の呪文』は、終わらせる。」
作者は右手のグーを突き上げるが、グーを作ろうと現実はどうにもならない。
「現在必要なのは、意味のわからない気合いではありません。
今必要なのは、冷静な分析による設定の変更です。」
私はキッパリと作者に言った。
作者は私を見てしばらく絶句していたが、やがて、静かに手にしたコーヒーを口に運んだ。
それから、しばらくの無言の時間がながれる。
しかし、それは嫌な間ではなく、
お互いに、落ち着いて、何かを考える為の静かな間だった。
どこからか、ピアノの音がする。
それはリストの『愛の夢』
この曲は、歌のために作られたものを後にリストがピアノ曲に直したもので、3章ある。
その中でも、有名なのが3章…
カロリーネという彼の恋人への想いを表現した、と、聞いた気がします。
リストのワイマールでの活動時期に作られたと聞いて、少しだけワイマールについてのイメージを甘く修正した。
「1848年!そうだ、リストがワイマールの宮廷楽長に就任した年だわ。
表に出せない、秘密の恋をカロリーネとするんだわ。リスト。
彼の恋は…
なんだか、温かい涙のような音色なのね。」
作者は、突然、リストのプロフィールを思い出して呟いた。
「温かい涙のような恋の音色、ですか。」
私は、なぜかそのフレーズが切なく感じました。
それは、美しくても…
幸せなものであっても、
なんだか、片恋のようで、
少し寂しく聞こえたのです。
後に、一人になったリストは晩年の…終の住みかをワイマールに決めるのです。
晩年…リストが流す温かい涙は、
幸せなものだったのか、
不幸せなものだったのか、
それは誰にもわかりません。
「うん。なんか、生きてて嬉しいって、そう感じる涙みたいな、雪解けの川の水のような、澄んだ音色よね。
でも、この年、中欧は、1848年革命で荒れているわけよね…。
そして、その二年後にパガニーニが亡くなるの。
ほんと、こんな激動の時代、なんで選んじゃったかな(;_;)
でも、なんとか頑張ってみるよ。
その時代を生きたリストがこんな綺麗な曲で愛をかたるんだもん。
私のメアリーだって、時代に文句なんて言わないで、ちゃんと真実の愛にたどり着くわよね?」
作者は、私にすがり付くような視線を向ける。
「ええ。どんな運命が待っていても、きっと。」
私は、自分の先行きもわからないままに、他のキャラクターの未来を語る滑稽な自分を感じました。
それでも、今回は、ちゃんと、完結につれて行くつもりです。
メアリーと、この困った作者をつれて。