魔法の呪文東欧考察6
「それにしても…なんで私、少女小説が書けないのかしら?」
作者は、どこからともなく流れてくるショパンの『トルコ行進曲』を聴きながら呟いた。
「ふふっ。笑わせないでくださいよ。」
「笑わせたい訳じゃないわよ(T-T)
初めは『プロバンスの赤いしずく』
次が『ジャンヌダルク』
今回は、絶対本命の『魔法の呪文』
皆、どうして…。」
作者は、頭をかかえた。
しかし…。
確かに、この人、昭和の少女漫画のイメージで作りはじめてはいるのですが…。
ジャンヌダルクなんて、どう転んだら、ジャン一世と中央フランク王国を再建する運びになるのか、
訳がわかりません。
「ち、ちょっとぉ…笑いすぎよ(-_-#)
こっちは真剣なんですからねっ。
魔法の呪文は、公募作品だし、10万文字を踏んだら、落選しても次の公募だってあるんだから、なんとかしたいのよっ。」
作者は、膨れっ面で私をにらむ。
「すいません。つい、中央フランク王国が、つぼりまして。」
私は素直にあやまったが、それが逆に作者の気に触ったようだ。
「つぼらないでよっ(T-T)
私だって、ジャン一世なんて、こんな事が無きゃ、知らなかったんだから。
なんで、私、ジャンヌダルクを敵にまわして中央フランク王国……だからっ、爆笑することはないでしょっ?
もうっ…。ぷっ。」
そこから、我々はしばらく子供のように笑いあった。
真剣に昭和の少女漫画を念頭に必死で考えた事実を知ってるからの笑いのつぼなのだ。
が、笑ってばかりはいられません。
『魔法の呪文』、現在、7人の読者がいるようなのです。
思えば、3章から、読者数が一時減り、3人からの7人。増えたのですから、さっさと更新して、読者を逃したくはありません。
私は、姿勢を整えて温かいコーヒーをテーブルに用意しました。
「昔、『コーヒー・ルンバ』と言う歌謡曲が流行りましたが、そこで歌われたコーヒーの銘柄がモカ。
アラビアのコーヒーで、恋心を刺激するらしいですよ?
まずは、コーヒーの薫りに気持ちを落ち着けましょう。」
私は、明るく作者に声をかけた。
作者は、美味しそうにコーヒーを口にした。
「コーヒールンバ…かぁ。この歌詞って、コーヒーで恋心を思い出すって無いようよね?」
作者は、ぼんやりとカップを見ながら言う。
「ええ。昔、ヨーロッパではコーヒーは背徳の飲み物と、されていたようですからね。」
私は、からかうように作者に笑いかけ、そして挑発する。
「今日のモカは、有名店のひきたての豆を使いました。
どうです?忘れかけた恋心がよみがえりませんか?」
「はぁ…(´ヘ`;)
思い出すって言っても、少女時代の淡い恋心だよ?
黄昏た、オッサンとオバサン…いや、もう少し若くて、大人の恋でも、アウトッ!!
なんだから…。なかなかね、難しいのよ(-_-;)」
作者は、喉に小骨が引っ掛かったような渋い顔をした。
「確かに、コーヒーでは、大人の恋のイメージですからね。」
そうでした。私は、納得のため息をつきました。
そう、少女の…
年配の女性の心の引き出しに仕舞われた、昭和の少女の恋物語を作らなければいけないのです。
「さっきから聞こえてくるショパンの『トルコ行進曲』だけど、この曲も、実は、コーヒーに関係してるんだよ。」
作者は、気持ちを切り替えるように明るく話しかけてくる。
1683年オスマントルコの攻撃をなんとか退けたウィーン。
キリスト教の国ではありますが、戦いの後、トルコの商人によってウィーンにコーヒーが紹介されるのです。
そして、約100年。
ウィーンにおとずれたトルコブームにのっかって書かれた曲がこの『トルコ行進曲』と言われています。
宗教が違っても、わりと仲良くやってたのですね。
「そうですね。モーツァルトも、コーヒーに三日月のパン、キプファールでお茶をしたのでしょうか?」
私は、現在でもウィーンで人気のパン、キプファールを思い出した。
「キプファール…良いなぁ…。私も食べたいわ。
それにしても…、このお話、コーヒーネタが尽きないわね。」
作者はそう言って、ほろ苦いコーヒーを口にした。
「この話と言うよりも、ウィーンがコーヒーとスイーツの物語で出来上がっているのでしょうね。」
私は、トルコ行進曲を聴きながら、鉛色のウィーンの冬の空を見つめた。
と、それを聞いた作者が、叫び声をあげる。
「ああっ…そうか!!
スイーツだよ、スイーツで話を作ればよかったんだわ(T-T)
失敗したわ(>_<。)
ウィーンと聞いて、始めに思い出した食べ物、ウインナーだった(T0T)
スイーツで話をもって行けば…こんな事にはならなかったかも(>_<)」
作者は、今さら叫んでいますが…
多分、スイーツからはじめても、結果は変わらないと思います。
今回の混乱の根底には、我々の最初の連載『ノストラダムスを知ってるかい?』が関係しているのですから。
中欧の歴史と日本の戦後史が微妙に類似点があり、
眠っていたヒトラーとノストラダムスの物語が動き始めるのですから。
まさか、こんな事になるなんて…
考えもしませんでした。
これからの展開は、私にもわかりませんが、10万文字を書ききるために頑張ろうと思うのです。