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異界にはためく旭日旗  作者: お猿プロダクション
序章 終わりの始まり
53/54

第肆拾伍話 列島震憾

お待たせしました


これで序章は終わりです



 2022年 1/1 AM.00:30 帝都 東京 総理大臣官邸内

 地下 危機管理センター


(何が起こっている・・・⁉︎)


 阿毎野 幅切内閣総理大臣は、現下の状況、そして一向に入ってこない(・・・・・・・・)情報に苛立っていた。

 ことの始まりは、日付が変わった直後―――2022年に新年開けた直後にあった。

 突然、なんの前触れもなく発生した震度4の地震。緊急地震速報が仕事をせず、まさか首都直下地震の余震が、今になって再び発生したのかと最初は思った。だがどうやら違うようで、情報が集まるにつれ、日本全国(・・・・)においてこの規模の地震が同時に観測された様だった。


 異常だ。


 彼は地質学者でも専門家でもないが、地震の発生メカニズムぐらい当然分かっている。

 普通、超広範囲で一定の震度で地震が発生するなどあり得ない。必ず、何処か強く揺れるところ―――震源やその付近―――があるべきなのだ。

 今回はそれがない・・・震源が特定できていな(・・・・・・・・・・)()。こんな現象は未だかつて経験したことがなかった。

 そして、それに前後するように生じた全国規模での通信障害。

 異変は、多くの組織が、ほぼ同時に感知した。内閣情報集約センターの第一報を待たずして、この事態は官邸危機管理センターの知るところとなっていた。

 遠距離通信を行う場所、衛生測位システムを利用する所、軍事施設、地上局、etc・・・それだけではない。通信インフラの主要なものの一つたる海底ケーブル。それすら国外とつ通信が全く寸断されており、八方塞がりもいいところであった。

「繋がるところに片っ端から通信を試すんだ。」

 阿毎野総理が危機管理センターに上がった頃にはすでに、官邸対策室の室長、大村(おおむら)内閣危機管理官が指示を飛ばしていた。警視総監時代から培っていた冷静さは、この様な緊急時には頼りになる。

 しかしそれでも、国内の一部分としか連絡はつかず、回復には程遠い。

 まず、何にも増して優先すべきなのは、情報収集であった。


 ◆◇◆◇◆


 16分後


 同5階 総理執務室


 速やかに関係閣僚会議が開かれたが、余りにも想定外な事態であるが為に招集できる閣僚は片っ端から集めた結果、ほぼ全員の官僚が閣議室に詰め掛けていた。ここに居ないのは未だ軍の現状把握に奔走している倭田 健国防大臣くらいであった。

「では、緊急閣僚会議を始めます。」

 諏佐野すさや 誓伊せつい内閣官房長官が会議の開始を告げる。進行は内閣官房長官が務めるものだ。議題は《日本全土(台湾及び朝鮮半島を除く)における大規模通信障害等複合事案》。

「集まりになられた閣僚の皆さまには手間をお掛けしますが今回は緊急も緊急の為、急遽作成したお手元の資料の方をお取りください。」

 日本政府では2010年に入ってから、タブレットやPCなどの軽量電子端末の導入を逐次進めていた。情報伝達の高速化や大容量化の為だったが、それは衛星通信技術や海底ケーブルといった高速通信・情報伝達技術があるからこそだ。今次緊急事態の様にあらゆる通信インフラが吹っ飛び、迅速なる情報通信のやり取りができなくなると、途端にそのメリットの多くを失う。

 よって今回は、緊急で刷った紙の資料のみとなっている。古参の官僚などは「懐かしいな。」などと気の抜けたことを言う者もいた。あるいは、自分の緊張を解そうとしたちょっとした冗談のつもりだったのかもしれない。

「国防相・・・倭田さんは、遅刻か?」

「倭田国防相は市ヶ谷で軍の統制の最中なので、遅参するとの連絡がありました。」

 日本で最も、海空合わせて外部への直接的な探索を行うことが出来るのは、無限大に近い行動力を有する原子力潜水艦や、数千キロもの航続距離を持つ哨戒機、偵察機を多数保有する日本海空軍なのだ。

 市ヶ谷(国防府)はそれら長距離探索力を持つ艦艇航空機を繰り出し、国外の状況把握に邁進していた。それら探索艦艇、航空機より続々と入ってくる報告、そしてその照会に追われ、倭田国防相は我が本拠とでも言うべき国防府庁舎から出られないでいた。

「まずは最初のページ・・・各観測施設からFAXで送られてきた写真です。」

 FAXは国内限定では生き残っており、限定的だが写真や文面のやり取りは可能だった。


「「「・・・!」」」

 資料を開いた各々の顔が強張る。

 カラーで写された複数の写真・・・(とは言え、暗視カメラや赤外線カメラの画像で、カラー感はあまりなかった)それらが映しているのは、何も水平線だった。だが彼らが顔を強張らせた理由はただ水平線が写っているからと言うわけでは無い。

 何の視線も、写真の下に記された文字に留まる。

 “北海道 稚内市 宗谷岬”

 “北海道 宗谷総合振興局 礼文郡 礼文町 礼文島スコトン岬”

 “長崎県 対馬総合振興局 対馬市 上津島町 鰐浦”

 “沖縄県 八重山郡 与那国町 与那国島西崎”

 その他、日本のEEZ(排他的経済水域)の端所に置かれた観測所などの写真・・・これらは、この視点から他の島や国―――具体的には台湾と朝鮮半島、ロシア―――が肉眼で見えるはずの場所であった。

 無論、天候に左右されることもあるが、撮影日時の他にもその時の天候状態も記されていた―――何も、“快晴”。

「これは―――何か?突然、台湾は愚か朝鮮やロシアのユーラシア大陸も消えた、とでも言いたいのか。」

 鳥野井外相が資料の端を握り締めながら、諏佐野官房長の顔も見ずに言う。

「それは、何とも。次のページを・・・国土交通省で把握している、現時点で全国各港湾に入港している我が国近海を航行していた艦船と、同じく全国各空港に緊急着陸、又は着陸許可を求めてきた機体の“数”です。」

 これに矢銘やめい 鷹翔しゅうが国土交通大臣が補足を入れる。

「一応、閣議開始に間に合うギリギリまで情報を集めていましたが、これが全てではありません。今後さらに増えると思われます。特に船舶は。」


 それなりに広い筈の総理執務室の空気が一変し、押し潰す様な静寂が充満した。静寂の中に、ペラ、と紙を捲る。

 “全国空港総着陸数 国内線1103便 国際線202便 その他22機”

 “全国総入港数 252隻 その他14隻”

「これら緊急入港、着陸した船舶及び航空機に凡そ共通しているのは“自座標を見失った”事と“超水平線通信が不可能になった”事でした。」

「ちょっと待って下さい。それではまるで―――」

 顔を痙攣らせながらも紡ごうとした鳥野井外相の言葉は、前触れなく訪れたノックの音で中断を余儀なくされた。

「―――会議中失礼する・・・!遅参申し訳無い・・・倭田 健只今参上した。」

 ノックの直後に現れた、スーツに肉達磨を隠したガタイの良い男―――倭田 健国防相は2、3名の秘書を後ろに従えていた。

「倭田さん。・・・

「陸海空軍で集約していた情報の整理がようやくついた・・・先ずはこの資料を見てほしい。」

 倭田国防相が合図すると、後ろに控えていた数名が抱えていた資料を各々の大臣達に手渡し始めた。

「国防相、これは・・・?」

「その資料に書いてある事は、私自身、大変に信じ難いが、私の信頼する日本陸海空軍人が“事実だ”として上げてきたものだ・・・よって、私はこの資料を現実だと信じている。」

 資料を繞り最初に大々的に掲載されている写真・・・対馬の上空から撮った物である事が誰の目にも明らかだったが、誰もが目を疑う。


 朝鮮半島が無い・・・!


 次ページ。


 北海道の、おそらく礼文島と思われる小島・・・見えるはずの樺太は無く、唯々広がる水平線・・・!

「馬鹿な・・・これは・・・!」


「・・・文科省、経産省、総務省もおそらく把握しているだろうが、国防府でも|JAXA

 《ジャクサ》の情報提供を受けた。」

「「「!」」」

 名を挙げられた、文科相、経産相、総務相ら各大臣は一斉に倭田国防相を見た。その反応を見るにつけ、彼らが一致して何かを隠していたのは明らかだった。

「・・・何を隠している?」

 阿毎野総理は鋒鋩(ほうぼう)もかくやとも思うほどの切れ上がった視線を3大臣に向ける。少なくとも日本の同じ重役を任されている、ある意味で同僚と言えなくも無い相手に向ける目では無い。

 ややもせず、帆陽ほび 天野てんや経済産業大臣が観念したような大きなため息を一つついた。

「倭田国防相の言う通り、我々もJAXAを始め、航空宇宙分野の各方面よりある一つの報告を受けていました。」

「何故、それを隠した・・・いや、隠蔽を図った?」

「・・・情報があまりに信じ難かったから、としか・・・。」

「どういう情報だ?」

「それは、此方の資料を見れば分かります。」

 倭田国防相が資料を指差す。各々はページを繞り、答えを求めた。

 そこには、1ページ丸々使って夜空の写真が使われていた。

「・・・これが?」

「日時を、よく。」

 倭田国防相が「よく。」と言ったのは、「良く見ろ。」という意味であるのは全員が分かっていた。

「これは・・・!」「まさか・・・。」「馬鹿な!」「信じられん・・・。」

 左ページ“2021年 12月31日”

 右ページ“2022年 1月1日”

 映る星空は、“全く異なっていた”。それどころか月の形すら違う(・・・・・・・)・・・!

「こんなことは、空そのものが変わらなければ有り得ない。」

「つまり、この世界が―――我々以外の世界が消えてしまったと⁉︎」

 倭田国防相は冷や汗を滝の様に浮かべながらも、自身の持つ結論を言葉短に言い放つ。


「いや逆だろう(・・・・)。日本は、我々は―――



 ―――世界から、物理的に切り離された・・・・・・‼︎‼︎」

今更思ったけどこの距離を暗視装置やら夜間カメラで見えるんだろうか


見えるって事にしとこう

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