第拾参話 67年目の一致
ホンットに遅くなってしまいました。
そしてやはり無茶なところが・・・。
少し昔の話をしよう。
ーーー今から67年前。
時に西暦1954年11月3日、時の日本海軍はある重大事件に見舞われた。
『山口事件』とも『11.3海軍事件』とも言われるこの事件は、端的に言ってしまえば山口多聞中将率いる第2航空艦隊、計27隻が小笠原諸島近海で突如として消滅したのだ。
その原因は全くもって不明。一時期ソ連やその他イギリスやフランス、アメリカ等の仕業では無いかと言われたが、当時のソ連海軍には北極海から太平洋まで出る事の出来る強艦隊は日ソ戦争に置いてその多くが撃沈破され、その数は少なく、その上現場は日本近海である。
戦中、シーレーン及びその他海域の確保の重要性を認知した海軍の目をすり抜けるとは考えにくい。
また、アメリカもその通りである。
イギリスは日本がインド洋で戦中に大規模通商破壊を行なったせいで干上がった為に最初に”論外”とされていた。
当時の事件の捜査官らはそもそも、事件の内容そのものが可笑しいと言っていた。
あまつさえ装甲空母2隻を配する艦隊がいきなり消息を断つ、と言うのは確かにいささか可笑しいと言える。
もし、何らかの攻撃なり襲撃なりを受けたのならば、緊急電の1本でも寄越すはずである。もし、そんな暇の無い攻撃・・・例えば”核攻撃”であるならば今度はデカいキノコ雲なり何なり見つかるはずである。
場所は小笠原諸島近海。島が点在する所で核爆弾なんぞブッ波すれば絶対に気付かれるはず。しかし、そんな情報は入っていない。
だいたい、そんな事をするメリットが見当たらない。この時代、冷戦に突入しつつある時期ではあったが、同時に西側各国では国際協調へ舵を取りつつある時代でもあった。そんな時に攻撃を仕掛けるのはメリットが全く無く、説明がつかない。
台風では無いか、とも言われたが駆逐艦や軽巡洋艦ならばともかく、排水量1万tを超える艦艇が台風の1発2発で遭難、沈没すると言うのは考えにくい。
因みに、消滅した艦隊の構成は以下の通りである。
第2航空艦隊 山口 多聞中将直率
航空母艦『信濃』以下
航空母艦『大鳳』『白龍』
中戦艦『薩摩』『伊予』
重巡洋艦『高雄』
軽巡洋艦『石狩』『天塩』
第29駆逐隊 第30駆逐隊
第16駆逐隊 第20駆逐隊
油槽船『国洋丸』
工作艦『明石』
以上の様に、非常に強力な艦隊であったことが分かる。
これらの艦が、たったの一夜のうちに影も形も残さず消えてしまったのである。
(尚、ここに在る『中戦艦』とは、史実で『超甲巡』という計画で建造予定だった艦である。似たスペックの艦でアメリカ海軍の『アラスカ』級と『シャルンホルスト』級があるが、これらは前者が『大型巡洋艦』、後者は『戦艦』である。)
500kg対艦(徹甲)爆弾の直撃にも耐え得る装甲を持つ空母『大鳳』『信濃』、戦艦に準ずる攻防性能を有する『薩摩』『伊予』。そして、対空能力に優れた改『阿賀野』型とも呼ばれる『石狩』型軽巡洋艦。
もう言わなくても分かるだろう、この艦隊は極めて強力な艦隊である。もう一度言おう、これらの艦隊がたったの一夜で行方が分からなくなったのだ。
この事件は、半月に渡る懸命な捜査を行っても痕跡1つ見つからなかった。乗組員、艦の積荷、はたまた艦そのもの、沈んだとしたなら油、木材、残骸。それら一切、この半月見つからなかったのだ。
しかし、この事件は発生から16日後、あり得ない新展開を迎えた。
この日、山口機動部隊が消息を絶ったとされる小笠原諸島近海の捜査中、突然天候が崩れ巨大な雲がみるみる形成されて行き、大雨がふり始めた。次第に風も強くなり、波も大きく立ち始めた(この時のこの海域の天気予報は、”快晴”である)。捜査隊は捜査を一時中断、近隣の島へ退避した。
その時、島へ退避する途中の捜査船が、海霧の中に幾多の船影を確認した。この時、捜査船の船員は別の捜査船の船隊だろうと思っていた様である。
しかし、この船員は直ぐに「あれは捜査船隊などでは無い。」と悟った。
それが余りにも大きく、その数が多いのだ。そして船員は感じたと言う・・・圧倒的な鉄のニオイを。
雨が降りしきるなか、霧の中から現われ出でたそれは、やはり捜査船隊などでは無かった。
そこには、正に巨大で重厚な鋼鉄の城があった。
その数は総勢27。
それは、行方不明になった筈である山口機動部隊の姿だった。
この事は直ちに東京の捜査当局へ伝えられた。
当然、この報告を受けた東京の捜査当局は、正に蜂の巣を小突いた様な騒ぎとなった。16日間も躍起になって探していたところに、その捜索対象が消息を絶った直ぐ近くの海域で発見されたのだから、当然と言うものであった。
その後無事に(?)16日間行方が分からなくなっていた山口機動部隊は、その発見から2日後、東京湾へ進入、祖国への帰還を果たした。
そして不思議な事に、山口機動部隊の発見直前から降りしきっていた雷雨は、いつの間にやらその鳴りを潜め、天候は回復していたという・・・。
その後、原因究明の為に様々な調査を行ったが、結局何の確証も掴めず、この事件は迷宮入りとなるのだった。
◆◇◆◇◆
西暦2021年 9/3 PM.22:05 帝都 東京 総理大臣官邸内
先ほど、鵜家餅陸軍相の言ったように、今回の事件と67年前の『11.3事件』には共通点が幾つかの共通点があった。例えば・・・
* 突如、艦隊との一切の連絡手段が断絶。それと同時に艦隊の行方が分からなくなる。
* 消息を絶ったとされる海域が日本近海。
* 消えたのは有力な軍艦を有する艦隊。
* 何方のケースでも、消息を絶ったとされる海域の天候が一時的に崩れる。
などが挙げられる。
が・・・。
「う〜ん、やっぱりさっぱり分かりませんねぇ。」
そう阿毎野総理は呻いた。
尤も、それは当然であると言えた。
共通点が見つかっただけで、その原因などの肝心な事は何一つ分かっていないからだ。此れでは最初の時と何も変わらない。
と、ここで阿毎野総理があることに気付いた。
「そう言えば、この機動部隊の人員から話は聞けなかったのですか?しっかり戻って来たのでしょう?」
阿毎野総理の指摘は尤もだった。機動部隊が消えてしまっても、その機動部隊が戻って来てたのならその人員に事情を聞き出せばだけの話なのだ。それなのに、何故原因究明が成されなかったのか?
その問いに、高丘農水相の教育(洗脳?)を受け、若干顔がイッてる様に見えなくもない倭田国防相が答えた。
「それが当時の記録によりますと、全員が『覚えていない。』の一点張りだったそうで。」
「はぁ?」
顔を顰めながら声を上げた阿毎野総理を筆頭に、倭田国防相の出した答えに軍関係者以外の人間もその顔を顰めた。
顔を顰めている1人、鳥野井外相は言葉を呈した。
「その調書取った人、寝てたんじゃないんですか?」
「計328人が調書を取っていますが、彼ら全員が寝ていると考えるのはどうかと。」
「何人の人員から調書を取ったんですか?」
「山口司令をはじめ、1万人以上です。」
「それら全員が『覚えていない。』と?些か都合が良すぎやしませんか。」
「そう言われましても、事実ですから。」
やいのやいの。
鳥野井外相が厳しい目付きと口調で倭田国防相を追及するが、既に元の状態に戻った彼は鳥野井外相の言葉をのらりくらりと躱している。
その光景が数分続いたが、いい加減面倒臭くなったのか痺れを切らした岩津海軍相が、新たな話を切り出した。
「あ〜、の・・・この11.3事件に関して他に少し不可解な点がもう幾つかあるんですが。」
その言葉に、阿毎野総理が食いついた。
「他に?あるんですか?」
「実は、死亡したり行方不明になった人員は居ませんでしたが、何人か火傷などの負傷者が居ました。ですが・・・。」
その続きを喋ろうとした岩津海軍相の言葉が鈍った。
「?」
「その傷の治療痕が、当時の医療技術では不可能なレベルの物だったらしいのです。」
「「「⁉︎」」」
岩津海軍相の言葉に、倭田国防相と国野GF司令長官を除き、会議室内は絶句と言う表現こそ的確とも言える空気が支配した。
だがその中にあって、阿毎野総理だけは尚も岩津海軍相に聞き降った。
「具体的には・・・?」
「最近になって分かった事ですが、電気メスが使われた様な跡があったり、致命傷を受けたとみられる者がぺースメーカーを体内に植込はれていたりしていた様です・・・。」
此れには阿毎野総理も絶句した。
岩津海軍相の言うことが事実ならば、それは凄まじい事である。
1954年に電気メスなど存在しないし、植込み式のペースメーカーも登場するのはそれからまだ4年を待たなければならない。
「では、何ですか。11.3事件の真相は、UFOとか何かとの未知との遭遇で、彼らはその船ごと2週間以上に渡って軟禁され、様々な実験をされた後にその記憶を消されて、戻されて来た、と?そんなSFあってたまりますか。」
鳥野井外相は腕を組みながらそう吐き捨てた。
だが好奇心旺盛らしい阿毎野総理は、まだまだ聞き足りないらしく「他には何かあるんですか?」と聞き立てる。
「他に分かっている事と言ったら、武器弾薬がかなり消費されていた・・・という事くらいでしょうか。」
武器弾薬の消費?それは戦闘をと言うしたことではないのか?
と何人かの官僚は思った。
しかしそれを口にする前に、やはりと言うか何というか鳥野井外相が声を上げたが阿毎野総理がどうにかそれを宥めた。
そして数十分以上の時間を掛け、いよいよ会合は終局へ向かっていた。
「ーーしかし、今後の方針としてこのまま戻ってくるのを待つ、と言うのは些か消極的にすぎると思うのですが。」
「そうは言っても、11.3事件では機動部隊はそのまま帰ってきているでしょう。此処は待ち続けるのも一手と考えます。」
「いや、何で皆さん方そのSFありきで話しているんですか。もっと捜索範囲を広げれば良いだけの話でしょう?」
「そんな簡単にいきませんよ。我々(国防府)にも裂ける予算と人員には限界がある。これ以上捜索範囲を広げるのは難しいと申し上げておきたい。」
「11.3事件の話をしても、結局のところ議題の内容を複雑化させてしまったようですね・・・。」
各々の意見が混じり合い、今後の方針が見出せないでいると。
ガチャ
ドアを開ける音が室内に響いた。
室内全員の意識が一瞬、開けられたドアの方へ向く。
「会合中に失礼します。」
紺色の背広に体格の良い体を隠した男が、倭田国防相の座る椅子まで早足に進む。そして彼の後ろに控える官僚の1人にメモを渡し、そのままやはりと早足にドアまで行って、
「失礼しました。」
と言ってドアをガチャリと閉め、出ていった。
紺色の背広を着込んだ男にメモを渡された官僚は、そのメモを今度は倭田国防相に手渡しした。
「・・・・‼︎」
そのメモを手渡され、それを見通した倭田国防相が眼をカッ開き、その顔がに冷や汗のようなモノが噴き出たのを、彼の古い友人である阿毎野総理は見た。
「倭田・・・?」
余りの彼の変貌ぶりに、阿毎野総理は思わず普段から使う口調に戻っていた。
「おいおい嘘だろ・・・。」
だが倭田国防相の耳には阿毎野総理の声は入って来なかった。
それほどの事態が起きた事を、彼の持つ唯の白い紙切れは伝えていた。
そして倭田国防相は口を開く。
「・・・今。入った情報によると・・・台湾沖を航行中だった海軍の駆逐艦と補給艦の各一隻が突如、行方不明となったらしい・・・!」
「「「ーーー‼︎⁉︎」」」
倭田国防相の言葉は、文字どおりこの会議室内の官僚全員の顔を青く染め上げた。
この後は物語がトントン拍子で進みますが、私の文章力はトントン拍子で進みません・・・・(泣)
余談ですが、『信濃』『大鳳』はこの時点でアングルドデッキを改装によって得ています。




