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全て、私でお贈りいたします

作者: アリエ
掲載日:2015/03/29

はじめまして、王宮筆頭魔術師のノア・ボナパルトと申します。

現在、王命にて勇者を召還したところなんですが……。

えぇ……、ちょっと、混乱しています。

何せ、前世の記憶を思い出したのですから。

記憶が蘇った原因は召喚の際の魔力波の影響だと思いますが、もう少し早く蘇ってほしかったですね。

勇者として召喚された少年、加崎太郎。

王宮騎士第一師団長、ギルバット・ケネス。

この国随一の癒術師、ミリア・マーガレット。

私を含めたこの4人が現在、信託よって決まっている勇者パーティです。

そして、全員が私の前世です。

複数人の莫大な記憶が蘇ったのと、直視したくない現実から目を逸らすために気を失いました。

そういえば、私、倒れてましたね。

起きた時には召喚の影響ということになりました。

それにしても、この前世の自分を見させられるのは、何の嫌がらせなのでしょうか……。

異世界召喚すげー!っと調子に乗ってる勇者、自分が一番強いと思い、剣に心酔している騎士、血を見るのが苦手なのに強制的に参加させられて乗り気じゃない癒術師……。

黒歴史ノートを音読されてる気分をずっと、味わってます。

基本、無口だったので会話しなくても不自然ではありませんでしたのは助かりました。

名前で呼ばれた時、うっかり返事しないように気を付けなければ……。

たしか、旅で魔術師は全員をサポートしたり、アドバイスしてましたね……。

過去の自分のダメな所を指摘するだけなので、割と楽でしょう。

もう、さっさと魔王を倒して、この地獄(羞恥プレイ)から抜け出しましょう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ただいま、ちょうど中間地点にある町に着きました。

ここまで、本当に大変でした。

えぇ、モンスターは問題ありませんでした。むしろ、ストレス解消になりましたし。

改めて、思いました……。

こいつらは、自由すぎる!

いや、全員、前世の自分って分かっているけども、ダメだ、こいつら。

勇者はハーレム要員を確保しようとする。(町に着くたびにフラグを立てまくり、延々とパーティを増やそうとする)

騎士はモンスターを見るとイノシシになる。(モンスターの群れに突っ込み、大量の群れを引き連れ帰ってくる)

癒術師は敵味方関係なく回復魔法をかける。(血を見るのが嫌だと言って、倒す寸前のボスクラスの悪魔に回復魔法をかけた時は敵味方固まった)

ハーレムを解散させるたびに勇者や女の子から睨まれ、モンスターの大群に突っ込む前に騎士を拘束、敵に出会ったら、血を出さずに瞬殺しなければならない。

邪魔なやつとか酷いやつとか思ってすいませんでした!

最近はハーレム作るたびも勇者を爆……、説教していたのが効いたのか、大人しくなりました。

騎士は調き……、教育の成果で飛び出すことも無くなりました。

癒術師は洗の……、話し合いのおかげで血を見るのも平気になってきました。

まぁ、ここまで来るのに苦労しました。

とりあえず、この町ではやることがあるのですが……。

とにかく、動くことにしますか。


……。


はい、無事用事は終わりました。

用事というのは最後のパーティメンバーですね。

盗賊見習いの少女、ラーシャです。

……はい、この子も私の前世ですよ、はい。

酒場前でわざとスキを見せたら、簡単に釣れました。

単純すぎるよ、前世の自分!

まぁ、この時は何日も食事が取れず、注意力散漫だったし仕方ないのだが。

とりあえず、餌付けしたら、簡単に懐いてついてくることになりました。

それにしても、チョロイよ、前世の自分……。

ゲームでいえば中盤になる場所で盗賊、しかも、見習いをパーティに参加させるのかというと、ちゃんと理由があります。

実はこの子、昔、誘拐されて行方不明になった聖女なんですよ……。

この子がいないと魔王とまともに戦えません。

餌付けのおかげか、絶大な信頼を得られましたし、これから光の魔法を教えていきましょう。

大丈夫、魔王城まではまだ距離があります。

それまでには上級の光魔法が使えるようにしますよ。

フフフ……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


現在、魔王の前で無駄な演説を聞いております。

いまなら、許してやるから、魔王軍に入らないかというテンプレですね。

もちろん、断りますよ、はい。

というか、さっさと魔王をこの世から消し去らなければ……!

このままだと、羞恥心で憤死する自信がありますよ!

まぁ、ここまでくれば察すると思いますが、……えぇ、魔王も私の前世です。

この全力の魔王(中二病)のセリフを聞いてると精神的ダメージが大きすぎます。

散々仕込んだ魔王殲滅フォーメーションで勝負を仕掛けます。

元自分ですから、この時の考えはわかってます。

脆弱な人間ごときの攻撃では何も出来まいと油断してますからね。

こちらには魔王を弱体化させる聖女と、最終兵器の勇者がいるのですから。

戦闘開始1分で、油断した魔王は無防備にこちらの攻撃を全部受けて沈みましたよ。

形態変化?もちろんしますので、する前に倒しますよ。

ここから、私の仕事ですね。

魔王が消滅するまで殲滅魔法を放ち続けますよ。

あのチート並の結界さえなければ、私の攻撃も通りますからね。

そういえば、説明忘れてましたけど、チート能力はちゃんと持ってますよ。

勇者はまぁ、勇者の力です。騎士は剣の才能、癒術師は異常な回復魔法、聖女は歴代最強の聖女能力、魔王は複数の命と防御能力。

そして、私は無限に近い魔力ですね。

たびたびうめき声や泣き声が聞こえてきますが、気にせず放ち続けます。

ドン引きした視線を感じますが気にしません。

完全に消滅したのを感じて魔法を止めます。

魔王城が半壊していますが、無事に魔王をこの世から消せたので問題は無いでしょう。

さっさと帰りたいところですが、まだ仕事が残っています。

にっこりと笑顔で振り返り、口止めをします。

私が魔王を倒したとか広まると後々面倒ですからね……。

怯えるみなさんが勇者がとどめを刺したという事を事実と思うまで話し合いをして、無事魔王退治が完了しました。

あとは王都に帰って王に報告するだけですね。

これでやっと、平穏な生活に戻れます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


無事、王都に帰った私たちのその後です。

勇者は元の世界に帰らず、王女と結婚したようです。(フラグ折ってなかったので、捕まっただけです)

騎士は騎士団に戻りましたが、世直しの旅に出たようです。(物足りなさから、強者を求めて彷徨っていただけです)

癒術師は田舎で小さな診療所をやるそうです。(羨望の目で見られるのを恐怖して逃げ出したのが事実です)

聖女は教会預かりとなり、平和暮らしているそうです。(捕まる前に癒術師と逃げようとしたが捕まってしまっただけです)

そして、私は……。


現在、逃亡生活をしております。

どこから漏れたのかわかりませんが、魔王にとどめを刺したのが私という事がばれました。

おかげで王女と教会が私を捕獲するために刺客を放ってきます。

たまに勇者や聖女が刺客として送られてきますが、捕まえる気がないのか世間話という名の情報のリークをしていきます。

大半が愚痴なので、ストレスが貯まっているのでしょう。

騎士にも旅途中で会うことがありますが、完全なバトルジャンキーになっていたので、後できちんと教育しなおさないといけないですね。

癒術師の診療所にお茶を飲みに行くのですが、引きつった笑みで迎えるのやめていただきたい。

今後の予定だが、西の大陸の果てを目指そうと思っている。

調べるのに手間取って時間がかかったが一つやらなきゃいけないことがある。

まぁ、私の前世の事なんですけどね。

もう一つの前世、幼い時に死んでしまって親を悲しませてしまった記憶しかない。

それがその前世での心残り。

間に合うかもわからないし、どんな影響を受けるかわからないが一つの命を救おうと思う。

これで今が変わってしまうかもしれないけど、それが私のしたい事なので。


では、ちょっと、行ってきます。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えーっと、誤字です。 『信託』→『神託』かなw
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