旅立ちます
行替えなどの文章チェックに、最近買ったアンドロイドタブレット
ネクサス2013を使い始めました。
i-phone4Sと一行あたりの表示文字数が違って、パソコンと
同じような感じになってます。
いや、アンドロイド欲しかったんですよ。
ただインコ電卓がやりたかっただけなんですけど、
コミックとか読むのに文字までちゃんと読めて重宝しております。
この冷徹な漢は、山本君を気絶させてしまった。普段からウジウジしていて全く
漢らしくない、正直、嫌いどころか興味を引かれない彼ではあるが、少々扱いが酷い
ような気がする。ただひとりだけ地球に帰れるとあってクラスメートの誰しもが恨め
しく思ってもいるが、この世界では、生きられないと言い切られたら我慢もできよう。
自分たちは、地球では死んだ身なのだ。運悪くこのような身体にされてしまったが、
異世界とは言え、まだ生きていられるというのだ。どれだけ生きていられるかは
わからない身の上ではあるが。
「工藤さん、山本君の扱いが酷いような気がするのですが?」
「だって、自分ができないんだから他人がするべきだって思考のヤツ、ムカつかね?」
「それはムカつきもしますが......」
「このまま放っておくと、連れて帰る気が失せるところだったから黙らせたんだが、
問題ないよな?」
「正しい判断だと思います」
「話を最初に戻すが、遺品として何かわかるものを預かりたい。ご両親の話だと、
肌身離さず、先祖伝来の御護刀をもっているとのことだが...銃刀法違反になる
んだが、本当に持ってるのか?」
「ここに」
私は、胸元から御護刀を取り出し、彼に見せた。
「預かっていってもいいか?」
「よろしいですが、お願いがあります」
「一応、聴こうか」
「このような形で召喚されたとはいえ、私たちはこの世界で生きていくための窓口と
なるここの王族を失いました。この国にも、もういられないでしょう。いつまで
生きられるかはわからないとは言え、わたしたちがここで生きていくための手段を
与えて戴きたいのです」
「どいつも、素手で熊すら殺せるし、病気にはかからんし、歳は取らんし、魔力供給
さえされれば正直、水も食事もいらんような気がするが、なんとかしてやろう」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
私たち、一体どんだけ化け物にされたんだろう?
「では、これを。あと遺髪もお渡ししたいのですが」
私は、御護刀で自分の腰まで伸びた黒髪を切ろうとした。正直、この髪は内心自慢
ではあったのだが、まあいい。髪はまた、伸びるだろう。多分。
「いや、髪はいい。無駄だ。さっきも言ったが、お前らの細胞は、魔力なしでは維持
できない。それは、切り離された髪でも爪でも同じことだ。生体状態を維持でき
ないのではどころなく、構造そのものを維持できないんだ。預かって帰っても地球
についた途端、塵と化すだけだ。それに、そんなに綺麗な黒髪切るのも勿体ない
だろう。この世界でならまだ生きていけるんだ。切ることもない」
キ、キレイだなんて、そんな私!顔が熱くなってくる。
『はいはーーい。何、女の子口説いてんですか、ゴウ!』
「口説いとらんわ、この駄女神!ちょっと大草原の普通の家にまで成長したからって、
調子こいてんじゃねえぞ!」
『誰が駄女神ですか!それにまだまだ大きく育てるんです!
私の野望はまだ終わってません!』
工藤さんが頭上に現れた不思議な飛行機?UFO?相手に言い争いを始めた。
「工藤さん、アレなんです?それに彼女は?」
「あれは、俺が移動に使っている万能時空航行艦、コックテイル号だ。
あの駄目女で元女神はフィオナ、俺の相棒だ」
「オカメインコ号?駄女神?」
『誰が駄女神ですか?撃ち殺しますよ?』
「いいから、降ろせ。全員回収する」
コックテイル号とやらは、上空から音もなく、垂直着陸してきた。オカメインコを
模した細長い尾翼に、巨大な可変主翼。この構造でどうして垂直着陸なんてできの
だろう。ここが魔法の存在する異世界とは言え、なんか違う。どちらかといって
UFOじゃないのこれ?
「おーい。皆さっさと乗ってくれ。
お前らの面倒みてくれそうなヤツのところに連れてくから」
この船?、全長30メートルはあるが、胴体部はその半分の長さしかない。
機首部分も除くと、乗れるスペースは10メートル程度。燃料タンクがあるかは
あやしいが、機関部とかはあるだろうから、総勢30名近くも乗れるのだろうか?
中に入ってびっくりして立ち止まった。出入口付近は、予想通り大して広くなか
ったが、予想外に広い。いや、YS-11程度の外観の癖に国内線の豪華フェリー並みに
広いのはおかしいだろう。
「ここはリビングみたいなものだから自由にしてくれ。1時間ぐらいで到着する予定
だから、この世界について聞きたい話があるなら質問も受付よう」
「この船といい、工藤さん、あなた一体何者なんです?
私たちをどうするつもりなんですか?」
「時間もあるし、お前らの今の状況、この世界の今の状況、今後のことなんか教えて
やろう。この異世界の名前はパンゲア。この世界の名前って考え方は、ここには
ないが、これもパンゲアだ。折しも地球の古代大陸と同じだな。まあ、名付け親が
そこから拝借したんだろう。名前から想像できるように、この世界唯一の陸地だ。
名付け親は、この世界の創造神エリス。俺の今の雇い主の一人だ。このパンゲア
大陸、その名の通り地球の全陸地面積と同じぐらい広い。なぜこんな形なのかと
いうと造った本人曰く、効率的な形なんだそうだ。で、でっかい大陸がひとつしか
なくて多くの国家が存在すると複数の国々が隣接しあって戦争に発展するという
事態が起こる。今は、魔法は存在していてもお約束通りなのか中世ヨーロッパを
想像してもらっていい。ここまでいいか?」
「工藤先生、質問です。そんなにでかい大陸ならなんで国家が集中してるんですか?
離れて作ればいいでしょうに」
「委員長、いい質問だが、君はテストでいい点は取れても頭は回っていないみたい
だな。地球の近代国家じゃないんだ、国家は創るものばかりじゃない。人が住み
やすい環境に集まって人口が増えて自然発生するもんだ。だから、狭い範囲に集中
もする。このパンゲアはでかすぎるために中央部は砂漠化してて、人が住めない
環境だ。人が住んでいるのは沿岸部のみ。やはり、河川のあるところに集中する
わけだ。そして、隣接しあった国家軍は衝突もするといったわけだ。さながら、
今は、戦国時代だな。それでも、近年ある事態が発生するまではここまででは
なかった。そのある事態がというのが近年の勇者大量召喚、つまり、お前たち
みたいなやつらのことだ」