ケとばされて助かる
僕たち全員が無理矢理、説明もなく連れて行かれたのは、王宮の
謁見の間だった。正面の高いところに偉そうな髭のおじさんが
座っている。
「よくぞ参った異世界よりの勇者たちよ。何卒、我が国を危機より
救って欲しい。まずは、神官長、説明いたせ」
「この世界は、パンゲアと我々は呼んでおり、あなたたちの住んで
いた世界とは異なる世界です。パンゲアには大きな大陸がひとつ
のみ存在しており、その中に数多くの国々が存在しており、我が
エルメア王国もその中のひとつであります。今、我が王国は、
魔物などにより国外からの脅威にさらされて続けており、王国は
疲弊しております。そこで、この世界に伝わる勇者召喚の儀に
よりあなたたち勇者をお呼びした次第であります。どうか我が国
を危機からお救いください」
「わかりました王様、僕たち一同お力をお貸しします!」
イケメン春日が勝手に代表して答えちゃったよ!おいおい、たっ
たこれだけの説明でなんで、そんな回答がでてくるんだろう?
この状況に狂喜していた委員長はともかく、冷静な判断をしてくれ
そうな久遠さんや、なにより優しい千佳までうんうん頷いている。
何かがおかしい。でも、そう感じているのは僕だけのようだ。
普段からクラスメートに芋虫扱いされている僕には言い出せない。
「では、勇者たちよ、早速、天啓の儀を受けてもらおう」
天啓の儀とは、勇者としての能力確認である。専用の魔道具で、
勇者としての能力やステータスやレベルがわかるらしい。そう、
この世界には魔法やスキルやレベルの概念が存在するのだ。
さすがに、乗り気ではなかった僕も興奮する。
「はいはーーい!僕からやらせてください!」
やはり委員長の内田君が最初に動いた。彼が魔道具である巨大な
水晶に両手を当てて目を閉じると、水晶は強く輝いた。
レベル:1
クラス:錬金術士
魔法属性:火・地
魔力値:4400
スキル:薬学錬金上級
「説明いたします」神官長が説明を始めた。
「あなたたちのレベルは当然1からとなります。
クラスとは適正のある職業ということです。
魔法属性は、火・水・地・風・雷・光・闇の7属性があり、大概
の者は1属性のみであり、2属性あるのは数百人にひとり、
3属性ともなると数万人にひとりとなります。
魔力値は一般のものなら100前後が限界、王宮魔術師でも
1000前後が限界となります。さすが異世界よりの勇者であり
ますな凄い数値です。スキルはクラスに応じた特殊能力です。
内田殿は、回復薬の錬成に秀でておるわけです」
内田君は狂喜して踊っている。
「次は、俺達が行こうぜ」
イケメンコンビがそれに続く。どうせお前ら勇者そのまんまだろ?
予想通り、
春日
レベル:1
クラス:雷の勇者
魔法属性:火・風・雷
魔力値:14200
スキル:高速回復・雷化
照田
レベル:1
クラス:光の勇者
魔法属性:火・風・光
魔力値:15800
スキル:高速回復・光撃
おまけに久遠さんまで、
レベル:1
クラス:魔法剣士
魔法属性:火・水・地・風
魔力値:11600
スキル:高速剣戟・高速魔力回復
となっていた。どうももともとの才能も影響してそうだ。
無能の僕は、やっぱり無能ってことはないよね?
「わたし、先にいくね」
残りは千佳と僕だけとなった。
クラスメートどころか、米倉先生を含めても全員、高い能力ばかり
である。
千佳
レベル:1
クラス:癒しの巫女
魔法属性:水・風
魔力値:13800
スキル:広域回復加護・高速魔力回復
「すごいね、千佳。癒しの巫女だなんて」
「最後は直樹君だよ。みんな高い能力なんだから、直樹君も心配
しなくていいからね!」
最後まで受けに行かない理由は、見抜かれていたようだ。覚悟を
決めて、水晶に手を当てる。
でも、変化がない。水晶が輝かない。電池切れ?
「こんなこと有り得ない!どういうことだ!」
神官長が呻いている。その表情は険しい。
山本直樹
レベル:無し
クラス:無し
魔法属性:無し
魔力値:0
スキル:無し
王様が問う。
「神官長、どういうことだ」
「多数の勇者召喚による弊害かもしれません。勇者召喚の失敗作
ですな」
どゆこと?
「すいません、どういうことですか?僕の能力は?」
「そなたは、クラスやスキルがないどころか、この世界の誰しもが
僅かですら持つ魔力すらもっておらん。レベルすらない。
そなたは勇者ではない。勇者召喚に失敗した迷い込んだただの
異世界人だ。いくら鍛えようとも強くはならん」
「なんで?なんでなの?ねえ、千佳。どおいうこと?」
「寄らないで、この芋虫!」
あの優しい千佳に蹴り飛ばされて床に転げる。この世界の人々、
王様・騎士・神官どころかクラスメートたちまでも蔑んだ目で僕を
見ている。まるで芋虫を見ているような目だ。
「僕は、このあとどうなるんですか?」
王様に問いかけると、
「虫ケラの分際で余に口を訊こうとするか。この場で斬り捨てても
よいが、この場が汚れる。この王宮より早々に消えよ!」
悔しい。勝手に巻き込んどいて、こんな目に合わされるなんて
酷すぎる。神様!なんとかしてよ!僕を助けてよ!!
「ぱんぱかぱーーーん!お呼びによりお迎えに参上いたしました!
神様本人ではないですけど、その代理人です。
おい、クソ王族とその配下!地獄に堕ちる準備はできてるか?」
「無礼者!貴様何者だ!」
「俺は工藤 剛。世界の創造神の依頼で働くなんでも屋だよ!」
今作は、ヒャッはーで、サクサクやります。
ええ、殺りますとも。