全校集会
4時間目の古典の授業は他の教科でもそうだったようにオリエンテーションだった。
古典では、教科書の他に古典文法書、古文単語帳、参考書、漢文文法書、問題集など、教材が沢山あった。
先生は男の先生で、この先生はプロレスが好きらしい。
プロレス好きか・・・初めて見た・・・
5時間目。
服装、身なりについて体育館で全校集会だ。
青城先生によると、生活指導係りから身なりについての厳しいチェックがあるそうだ。
全校でやるので体育館に移動する。
「なんかめんどくさいなぁ・・・」(たけち)
「ねぇ」(なっちゃん)
「でもさ、そこでこのスカーフの巻き方について説明してもらえるんでしょ?」(芹菜)
「そういえばね」(祷)
芹菜の言うスカーフというのは、黒い三角の布のことだ。
この学校の制服はセーラー服で、胸のところにはリボンではなくスカーフを巻いている。
先輩方は、それをカッコよくつけているが、慣れていない新入生にはどう結べばいいのかさっぱりわからないのだ。
「あとスカート丈のチェックとかもやるらしいね。なんか中学のときとおんなじだー」(亜紀)
「そんなこともするんだっけ~?」(ユッコ)
6人で話しながら、昨日と同じように混雑して動かない廊下を移動する。
なんか、またきっと全員が移動しきるまでにチャイムが・・・・・・
キーンコーンカーンコーン
・・・・・鳴っちゃった。
そして、私たちがいるのは昨日と同じように体育研究室のまえだ。
もしかして・・・
ガチャ
「おい、お前ら私語は謹んで早く移動しなさい!」
案の定、体育研究室のドアが開き、先生が怒鳴る。
「はぁ。またかよ」
あ、まずい。
つい口が滑って・・・
恐る恐る顔を上げると、その先生は聞こえて無かったらしく「ほら、タラタラするな!若いんだからしっかり歩け!」と、どこぞのおじいさんのようにチャラチャラした男子の先輩を説教をしている。
「・・・聞こえてなくて良かったな」(たけち)
「あ、聞こえた?」(祷)
隣にいたたけちにはばっちり聞こえてたらしい。
「まあ、そんなに大きい声じゃなかったし大丈夫だろ」(たけち)
「ホント!?」(祷)
体育館に入る。
「これってやっぱり並ぶのかな?」(なっちゃん)
「そうでしょ。でも、どんな風かな?名簿?」(芹菜?)
「どうだろ?」(祷)
たまたまそこを青城先生が通りかかる。すかさず芹菜が声をかけた。
「あ、先生どんな並び順ですか?」
「えっ・・・・うーんとね、名簿順かな」(青城)
「ありがとうございます。―――みんな、名簿順だって!はい、並ぶ!」(芹菜)
芹菜とは前から付き合いがあるが、やっぱり鈍感・・・というか天然なんだと思う。
だってこの距離だもんみんな聞こえてるよ?
ま、でも芹菜のそんなお母さんみたいなところが私は好きなんだけど。
「えー、ヤダー!あたしみんなと一緒のとこがいいー!」(たけち)
そうなのだ。名簿順となると、なっちゃん、ユッコ、芹菜は前の方にかたまり、祷、亜紀は後ろの方、だからたけちだけみんなと離れてしまうのだ。
「いーじゃん。こっちにおいでよ」(なっちゃん)
「だーめ!ちゃんと自分のところに並びなさい」(芹菜)
「じゃあこっちにおいでよ」(祷)
「こら、祷も誘惑しないの!」(芹菜)
「「えー」」(祷・たけち)
「まあいいじゃん、いいじゃん。どうせまだ2日目だよ?誰も順番なんて覚えて無いだろうし」(亜紀)
「そうそう!」
亜紀が提案すると、たけちが目を輝かせて芹菜の見た。
「まあ、いっか。今回だけだよ!?」(芹菜)
「「「はーい!」」」
芹菜が言うと、後ろの3人組(たけち、亜紀、祷)が元気よく返事をした。
隣で会話を聞いていたなっちゃんとユッコが、
「・・・なんか芹菜ってお母さんみたい・・・」(ユッコ)
「あたしも思った!」(なっちゃん)
「あ、それあたしよく言われるんだよね~。中学のときもそうだった」(芹菜)
「まじか~」(ユッコ)
「私もいっつも思ってる!」(祷)
「確かにそうかも!よし、お母さん」(亜紀)
「わー、お母さんだー」(たけち)
「芹菜のあだ名お母さんでいいんじゃない?」(なっちゃん)
「そうだね~。芹菜どぉ~?」(ユッコ)
「お、お母さんか・・・なんか、あんまし嬉しくない。っていうか、あたしって老けて見えるのかな?」(芹菜)
芹菜はそう言いながら私に話しを振る。
「いや、そうじゃないんだよ。あのね―――」
言いかけたところで、スピーカーから「各クラスは名簿順に並んで、並んだら前の方の人から座ってください」という声が聞こえた。
そういえば、今はまだ6時間目なんだったけ?
とりあえず、さっき話したように2つに分かれて並んだ。私はたけちと亜紀と一緒だ。
しばらくして、全校集会が始まった。
最初に校長先生が出てきて色々話している。たびたび目がチカチカするのはなんでだろう。
「・・・話長いね。足がしびれた」(たけち)
「・・・あたしも」(亜紀)
「・・・・・・」(祷)
「祷りどうしたの?」(亜紀)
・・・・分かった。
「校長先生の頭・・・」(祷)
「ぶっ、ちょっ・・・それいうなよ!我慢してたんだから!」(たけち)
たけちが吹いた。結構笑いのツボが浅いのかな?
「頭って?・・・あ、あれは!」(亜紀)
煌々と窓から差し込む午後の暖かな日の光を、見事なまでの光沢と美しさで反射している校長先生の頭。
「磨いてるのかな?」(祷)
「おまっ、マジでやめろ!わ、笑いが・・・」(たけち)
「き、きっとそうに違いない!・・・ってそんなわけあるかい!」(亜紀)
・・・・・・けっこう真面目に聞いたんだけどな。
楽しく会話をしていると、周囲が騒がしくなった。周りの人たちは急に立ち上がっている。
「・・・ん?なんだろ?」(祷)
「「さぁ・・・」」(たけち・亜紀)
先生の話なんかさっぱり聞いていなかった私たちは、皆がこれから何をしようとしているのか分からなかった。が、直後に先生から指示が出された。
「では、男子生徒は学ランを脱ぎ、女子生徒は膝立ちになってください。これから、各クラスの担任が見回るので、ワイシャツをきちんと着ているか、スカート丈は正しいかを確認します。終わった生徒から着席してください。」
ヤベっ!スカート丈って・・・
「・・・ねぇ、スカート丈ってどのくらいなら大丈夫なの?」(亜紀)
「だよね。あたしも思った。『膝立ちして』っていうことは膝までないとダメってことなんじゃないの?」(たけち)
「やばい・・・私足りんわ・・・」(祷)
「あたしもそこまでない。だって、制服買いに行ったときに膝上くらいでいいって言われたもん、店員さんに。」(たけち)
「・・・う~ん。あたしはぎりぎり大丈夫かな・・・」
膝立ちしてスカート丈を測りながら言った亜紀のスカート丈を見ると、体育館の床にかすっている。
きっと大丈夫だろう。
そんなこんなでアワアワしていると、青城先生が裁縫用の50センチ定規を持って私たちのところへもやって来た。
「あれ~、竹浦さん名簿でこんなところだったけ?俺もう少し前だと思ってた!」(青城)
と、笑いながら言う先生。
生徒の気持ちを分かってうるさく説教しない、いい先生だな。
と、改めて思った。
「じゃあ、膝立になって・・・はい、いいよ。次、中原さん・・・これは測らなくてもいいね。次林さん・・・はい、いいよ。えっと、竹浦さん〇、中原さん〇、林さん〇・・・と」
一人で会話しながら、名簿に印をつけると次の人のところへ行った。
「スカート丈って・・・?」(祷)
いまいちよく分からない。
私は自分がスタイルいいとか思ってないし、足なんか人前に出せるものじゃないと思っているからスカートが短いわけではないのだが、だからと言って中学の頃のように膝下まであるわけでもない。
普通に履いているときは膝上2,3センチというところだろう。
ちなみにたけちも同じくらいだ。
「・・・まぁ、短すぎなければいいってことなんじゃないの?」(亜紀)
「「そうなのかな?」」(祷・たけち)
制服チェックが終わり、次は女子生徒のためにスカーフのつけ方を副生徒会長(女子)
が手本になって手順を見せてくれた。
・・・が、ぶっちゃけよく分からなかった。
だって、パパッ!ときれいに巻いちゃうんだもん。
とりあえず、三角のスカーフを細長く折りたたんだら、首の形に合わせて折ってそこを安全ピンで止めて襟の下に通して止めればいいらしい。
・・・・やっぱり分からん。
大半の女子が私と同じように「分かんない」と言っているのが聞こえた。
他の学校みたいにリボンにすればよかったのに。
そんなこんなで全校集会は終わった。
ここまでは順調ですかね…?
もし誤字脱字なんかがあれば教えてください!