刹那
胸が張り裂けんばかりの悲しみの中、私は声にならない叫びをあげていた。
どうしてこんなことになってしまったのか。
そう思いながら、唯一の親友の血で手を赤く染めていた。
私は中学生になるまで友達といえる存在がいなかった。
学校ではいつも教室の隅で本を読んで、時間を潰していた。
中学校に入学して、初めて友達といえる存在と知り合った。
刹那は明るくて、優しい人だった。
刹那は、椅子に座って一人ぼっちだった私に声をかけてくれた。
それ以来、私は刹那と共に行動し、"友達"といえるほどになった。
中学3年の卒業式の日、私はすでに高校に合格していたので、気分が高揚していた。
式が終わり、私は刹那の姿を探した。
しかし、彼女の姿は見当たらなかった。
どこに行ったのだろうかと思い、携帯電話を開いた。
刹那はどこかへ行くとき必ず私に連絡していたのだ。
携帯には一通のメールが届いていた。
私は悪寒を感じ、すぐにメールに目を通した。
『大事な話があるの。体育館まできてくれないかしら?』と書かれていた。
文章的にはおかしなところは一つもなかったが、私の悪寒は消えるどころか一層深まっていた。
私は『すぐにいく』とメールを送り、体育館へ駆け出した。
体育館に着いたときには、メールを確認してから10分近くたっていた。
わたしはドアを開き、中に入った。
見渡してみると、誰の姿も見当たらなかった。
代わりに、体育倉庫が少し開いているのが見えた。
私は近づいてはいけないという拒否感に襲われた。
でも、刹那があそこで待っているかもしれない。
そう思うといてもたってもいられずに体育倉庫に近づいていた。
倉庫の前に来ると、私の中の何かが危険を察知していた。
その扉を開けると、一生後悔することになる。
そういう思考が頭を遮った。
私はその思いをとどめて、一気に扉を開けた。
倉庫の中は真っ暗で中がうまく見えない。
私は仕方なくそのまま中に入った。
コツコツ、と足音が響く。
コツコツピチャ、足音は液体を踏んだような音に変わった。
足元を触ってみると、何故か液体が広がっていた。
時間がたち、目が暗闇に慣れてきたとき、液体の正体に気がついた。
血だ。
背筋に冷たいものが走った。
血の出所を探すと、そこには人が倒れていた。
顔をよく見ると、それが刹那であることがわかり、何が起こっているのかを理解した。。
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ...」
私はありったけの力で叫んだ。
張り裂けんばかりの悲しみの中、声にならない叫びをあげていた。
どうしてこんなことになってしまったのか。
そう思いながら、唯一の親友の血で手を赤く染めていた。
その時に私は動かなくなった刹那に誓った。
もう、友達は作らないと...。