命とは何か(2)
犬のジョンが車に轢かれてから
数日が経ち
おいらは、近くの住宅を回りながら
ジョンの飼い主を探した
現場を目撃した友人達には
やめとけと言われた
きっと飼い主に怒られるから
やめとけと言ったんだろう
おいらも正直、怒られるのは嫌だし
飼い主に何かされるんではないかと
怖かったのは事実です
だが、それ以上に何か
おいらの中に謝罪したい気持ちが
あったんだと思う
自分の心の中で葛藤しながら
一軒一軒周り、ジョンの飼い主さんを
見つける事が出来た
玄関先で、チャイムを鳴らすまで
時間が掛かった
今ならまだ逃げられる、いやだめだ
そんな事を考えていたと思う
目をふと横に向けた時
玄関先に、ジョンの犬小屋を見つけた
それを見た瞬間おいらの目には
大きな涙がこぼれ落ちていた
玄関先でまだ大人とはいえない
少年が泣きつくしていれば
通り掛かりの人も何だろうと思うだろう
その時、玄関が開いて中から
優しそうなおばさんが出てきた
おばさんはおいらに優しく声を掛け
どうなさったの、何かあったんですか
そうおいらに聞いてきた
それでもおいらは答えられず
目先をジョンの小屋に向けた
おばさんはそれを察知したのか
おいらにこう言い掛けてきた
ジョンが帰って来ないけど
貴方はそれを知っているのね
何でも知っている事を話してね
そう言って、おばさんはおいらに
優しくハンカチを渡してくれた
おいらは、ジョンの事を全て話し
その場で土下座をした
ごめんなさい、僕が全部悪いんです
追い掛けたりしなければ、ジョンは死なずに済んだのに
実は、ジョンの飼い主さんである
優しそうなおばさんは、全てを知っていたんです
事故があった翌日、ジョンを連れて行った
獣医師さんから連絡があったそうです
(ジョンの首輪には連絡先が書いてあったので)
それで、獣医師さんが、ジョンの飼い主さんに
近い内に、ジョンの事を話してくれる子が
伺うと思うから、話を聞いてくれと
言ってくれてたそうです
事実を知っていながら、おいらに
文句一つ言わず、最後にこう言ってくれました
よく来てくれましたね
貴方が来てくれるのを
信じてました
貴方を責めるつもりはありません
飼い主である私に責任がありますから
でも、私に事実を話すのは勇気が必要だったでしょう
今回の事が、貴方にとって大きな財産に
なってくれれば、ジョンも報われる事でしょう
何事にも、真剣に向き合う事のなかった
おいらだが、この事があってから
自分の行動に責任を持つ事が出来たと思う
これをしたら、どうなるのか
これをしたら、こうなるのか
自分が得た事によりまた一つ
大切な何かを失ってしまった
事実だけが、心に残っている
人は罪を犯す生き物である
だが反省し、悔い改めれば、罪を許す事が
出来るのも人なんだと言う事を
おいらは知った
だが・・・神と言う存在があるとするなら
おいらはまだ、許される訳ではなかったらしい
この後おいらは、もっと苦しむ事になったのです。




